夕方の報道番組
レポーター:ここT市の新S地区ではHADを抱えた児童専門の学校建設に対する大規模な住民の反対運動が展開されています。デモ隊が道路に座り込み、工事車輌が建設現場に入れない様子です。横断幕には「学校建設断固反対、地域の安全を守れ」と書かれています。ああっと、危ないですね、いま女性が一名、工事車輌の車輪の下に座り込み、体で車輌を止めようとしています。
ナレーター:T市新S地区では中高一貫学が新設される計画ったが、その学校がHAD児童の専門の学校だということが判明してから事態は一転する。地元住民は一方的な政府の学校建設計画に反対し、市側と住民との数度の話し合いが設けられたが話し合いは平行線を辿り、そのまま地域住民の強い反対運動が展開されるようになったのである。
住民A:政府はHADの子供の社会適応のための学校と言ってますけど実際は違います。市が持て余してる土地を使って公共事業をやりたいだけでなんですよ。
住民B:怖いですよねぇ。パッと見で見分けがつかないわけじゃないですか、HADとそうじゃない人たちって。子供たちが知らずに一緒にいたら事故に巻き込まれたりするんじゃないかって思うとね……、やっぱり他でやってほしいですよね。
ナレーター:地元住民は署名運動や建設中の施設前での座り込みなどで反対運動を続けていくとのこと。
キャスター:どうなんでしょう、こういった学校を作らないなら、HADの子供たちをどこで教育するかという問題も出てきてしまいますが……。
コメンテーターA:やはり根底にはHADによる凶悪事件がここ数年増加しているということがありますよね。S県の大量殺人事件をはじめとして先日起きたA岡での事故など、HADに対する社会的な不安が解消されないままこういった学校が建設されるというのは、あまり好ましいこととは思いません。
コメンテーターB:HADにある程度の危険性があるのは万国共通なんですけど、不安の原因はその正体を正確に把握していないことにあると思います。それがナイフなのか爆弾なのか、そしてアメリカみたいに各家庭に銃があるのとテロリストが銃を持っているとでは社会的に脅かすものが違いますからね。S県のような事件ばかりを考えて、漠然と不安を持ち続けるのは事態が進展しませんね。
キャスター:この地元住民の声に対して文科省は、そもそもHADを抱えた児童の専門施設ではなくあくまで建設を予定しているのは一般の学校であり、HADの問題に対応しやすい環境を作っているというだけで、決して住民に隠していたわけではない、との声明を発表しています。
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