第66☆嫌いにならない

 美大で教授が言っていた。


「絵ってものはね……」


 時折筆を休めて、青空を眺めて、時には寝転がって、描く物だよと。


 しがらみの多い世の中です。心くらいは自由な気持ちで、のびのびと、描きたいものを描きたいように描くと善い。そのくらいの意味だったと思います。

 もちろん美大なので、デッサンや基礎はできていてあたり前の特殊な場所です。けれど、だからこそそこに立ち止まっていてはいけない。


 青い峰の向こう側へ、心をはせて描きましょう。


 わたくしはプロにはなりませんが、絵を描く方が好きなのです。

 そして、絵を描けば描くほど、現実での言葉は少なくなります。


 描きたいものが描けたとき、欲しいものが手に入ったとき、おいしいものを食べたとき。わたくしの心は小躍りしたくなります。実際、言語より感性の方が確かな性分であります。


 心に思わないこと、考えもしないことは言葉にできませんが、わたくしはイメージで考えるので、結局なにも言葉にできないことがあります。

 そういうときは、言葉にすべきではなく、心が熟すまで寝かせておくのが良いと思います。


 無理におしゃべりをしようとして、吃音になった頃もありました。仕事では私語厳禁なのでかまわないのですが、文章のようにすらすらといかないのにはハートが縮む思いでした。


 それでも文章を嫌いにならない。なぜなら、そこには素敵な世界がある。自分の書いた世界にも、大切な想いがこめてある。傷つきながら書いたこともある。それでも克服したから今がある。


 言葉を、心を、大切にしてほしいですね。

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