第55☆自分の才能を信じること

 楽しい、面白いと思って書いているうちはまだ素人の、いや、半可通の熱狂である。いまわたくしはここにいるが、半可通なりにちょびっとは分析ができるようになってきた。


 童話作家の立原えりかさんは、自分の人生設計を考えるとき、誰かのお嫁さんになることよりも、華やかな世界に飛び込んで着飾ることよりも、手堅くかせぐよりも、童話作家の道を歩みたい、それしか考えなかったそうである。


 そして、何度賞の選考に落ちても、「選考員は見る目がない!」「次こそは!」と傾向と対策をとり、最終的には自費出版した童話を、あちこちの著名人に送って、賞を勝ち取った。そういう方法もアリだということだ。


 おおくの先生は「認められないからと言って、他の人間に見る目がないからだ、などと考えるのは成長を止めるもとである」と言って説き伏せようとする。


 しかし、執筆家になった人の中にはまだまだいるはずである、この自分が作り上げた物語を否定されるなど、選考員はおかしいのだ! と考えたことがある人が。

 説教するのは文筆業のプロの厳しさを知って、ひそかに内省したのではないかと思う。


 そんな年をとってから思ったことを、これからを目指す作家志望者に言いつけるのは卑怯であるし、いい加減目を覚ましてほしい。かれらに必要なのは、「自分の才能はまだまだだ……」としょんぼりさせることではないし、「どうせ才能がないから」と道を閉ざすように仕向けることではない。

 過去の未熟を許し、現在の努力を励まし、未来の夢を応援する。それで十分ではないか。


 ただ「自分を信じなさい」とメッセージすること。

 そして、全力で書いたものを、同じようにして作品を書いている人と見せ合い、話し合うこと。それだけでだいぶ才能は伸びる。


 例として、専門学校では、授業の後に生徒同士が集まって議論をしあっていた。

 その頻度が高かった期生の中からはデビュー者が多く出たそうだ。壁に名前が貼ってあった。


 口げんかもたまにはよろしい。知性と弁が立つようになる。これは作品に生かされる。


 どうか、信じることをやめないでください。自分を、夢を。

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