第12☆葛藤と対立項

 ドラマは葛藤である。

 物語で最も盛り上がるのが恋愛シーンとバトルシーンである。


 と、言われてはいるが……わたくしはもう一つ興味深いシーンがあると思っている。


 キャラクターの葛藤とそれをどう、乗り越えていくか、である。

 もちろん、思い悩みながらも、なにもせずモンモンと過ごすのは現実だけでいいのであって、物語なのだから、なにかせねばならない。


 しかし、「To Be,Or Not To Be. That is The Question!」という有名なセリフ。

ワンピースではルフィがロビンにたたきつけるように問うている。

「生きたいのか、生きたくないのか、おまえの口からきいてねえ!」である。(ごめんなさい、意訳です)


 ハムレットは自分の中で自問自答したのだろう。

 ワンピースでは、友(後の同胞)に問いかける。

ロビン「生ぎだい!」

 炎のような回答である。

 そしてそれが力になる。

 ルフィという、キャラクターの人生が、表れる。

 ロビンはルフィについていく。

 これがドラマの根底である。


 一見、バトルでスカッと盛り上がったようではあるが、それ以前には「To Be, Or Not To Be…」という問題で葛藤して盛り上げているのである。


 だから、物語を創る側はこの葛藤を生む、「対立項」を用意しておく。


 対立項をわかりやすく擬人化すれば、それは性格が正反対の双子である。

「ツインズ」という映画で、外見も中身も正反対のデコボコ双子が現れるが、あれは対立項を絵に描いたようである。


 たえずぶつかり合う問題と、敵の敵は味方とばかりに協力しあったり、また喧嘩してみたり。

 そういう感性を己の身内で養うのも楽しい。


 中学生のとき、折原みとさんやティーンズハートをよく読む友人がいて、



「どうして、主人公はモテモテなの…?」


と、本気で聞いてきたが、わたくしは



「主人公が両想いになってるだけじゃん」


と、短く要約した。


 そう、結論だけ言ったら短いから、引きのばして話を盛り上げるために、主人公に当て馬をどんどんぶっつけていってるのである。


 そしてヒロインなりヒーローの中に生まれる葛藤。


 学園の王子様が好き! でも、幼馴染が最近かっこよくなって外国留学から帰ってきた! どうしよう! 昔結婚しようって約束憶えてるかな? 憶えてないよね? でも、十年も前のことなのに、あたしにだけ気があるそぶり……


と、なっちゃえば気になりだすのは読者も同じこと。


 Aになればいいのにな(願望1)⇔Bになればいいのにな(願望2)


 これが同時に起これば、葛藤は生まれる。最低なのは、


 Aになって、Bにもなればいいに決まってる。


 というふしだらな願望3である。これが誘惑である。


 結論がAとなるのが現実ならば、なおさら、願望2への誘惑を強くせねばならない。

 その誘惑に勝って、Aを選んだとき、ハッピーエンドその1、となる。


 時には願望1が満たされず、願望2の誘惑に負けてしまいそうになるかもしれない、実際負ける。Aは主人公から去っていこうとする、すると再び願望1がむくむくと頭をもたげ、やっぱり主人公はAしかいない! という結ばれかたもある。


 この葛藤はAとBという対立項が存在するためであり、一途な恋愛もので対立項を作ろうとすれば「ロミオとジュリエット」のように、または「こぎつねコンとこだぬきポン」(わたくしが大好きだった絵本である)のように、周囲の対立項に巻き込ませるのがうまいドラマの創り方である。


 Aになればいいのにな(願望1)⇔そんなことは許さない(障害1)

=ますます盛り上がる想い。(ハッピーエンド?⇔ アンハッピーエンド? きになる……そわそわ)


となる。主人公がそこであきらめるのか、あきらめないのかの選択を迫られる、ということも考えられるし、愛を貫いて決断を下したら悲劇1になる、という話もある。

「嵐の夜に」は誘惑も障害もはっきりしている。だから、ヒット作品なんではないかな?


 狼のガブと山羊のメイが嵐の夜に、互いの正体を知らずに出会う。(ボーイミーツガール)

 ガブ、山羊を食べたい。メイ、ガブだけは他の狼と違う、信じねば、と思う。(これは小説版にある)

 狼は山羊と仲良くするガブを許さない。山羊は狼と仲良くするメイを許さない。(ロミジュリ状態)

 二頭は川へ共に飛び込む。(新たな境地へ)

 雪山で死にそうになる。(ガブ、メイを食べるしかない!?)

 二頭の合言葉が窮地を救う。(「嵐の夜に」でガブ正気に戻る)

 二頭は群れから離れた森で暮らす。(ハッピーエンド♡)


 というわけです。

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