第16話:「まささんねねさん、お寿司を食べる」の巻

(ねねさんを連れたまささんは、明るいうちから廻るお寿司屋さんを訪れたのでした)


「さすがにこの時間だとがらがらだな」


「ボックス席行きましょ、ボックス席」


 向かいあって席に着いたまささんねねさんのふたりは、早速コンベアに手を伸ばします。


「あなご~」


「いわし、美味いっす!」


「たまご~」


「かわはぎ、オススメっす!」


「サーモン~」


「バイ貝、イケるっす!」


 まささんの地元では廻るお寿司でも他県の廻らないお寿司に対抗できると評判です。特に冬のお魚、ぶりとかかわはぎとかは絶品ものです。かにや貝類も人気の品。まささんたちのテーブルにも、みるみるうちに色とりどりのお皿が積み重なっていきます。


「あれ? ねねさん、あんまり魚は食べないのね。せっかくお寿司屋に来たのに」


「わたし、お寿司は食べるけど、生の魚はあんまり好きくないです。かにとか貝とか、たまに臭いのありますから。あ、でもあなごは大好きです! うなぎも大好きです! 脂っこくない魚も大好きです! さきまささん食べてたいわしとかあじとか、とても美味しいですね! でもぶりは脂っこくて駄目です」


「あら、そう(心の声:じゃあ、なんで寿司屋に来たんだろ? 別にほかのところでも問題な……)って、ねねさん、その状況はいったい何?」


「え? なんですか?」


 まささんの指さした先では、真ん中で半分こにされたお寿司のシャリが、うずたかく山を成してました。


 口をあんぐり開けるまささんに、ねねさんは屈託のない笑顔で応えます。


「わたし、今日あんまりお腹すいてないんで(←それはきっと二日酔いのせいだ!:まささん感想)、ご飯の量半分にしてみました」


「……」


「もたいない思たら、まささんこれ食べてください」


「……」


 結局、ネタの乗ってないハーフのシャリで、無駄にお腹を膨らますことになったまささんなのでありました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る