女の子の日

幼馴染の陽一が、珍しく恋愛相談を持ち掛けてきた。


私は最初驚いたが、それでも、未だに自分のことを頼ってくれることに、心のうち嬉しく思っていた。


「今付き合ってる彼女が、最近なんだか不機嫌で……。

 僕、なにか悪いことしたのかなぁって思って」


「陽一、普段からどこか抜けてるところあるからね。

 それで、本人に聞いたの?」


「うん、聞いたよ。

 そしたら、『今日は女の子の日だ』って、言うばかりで……」


あぁ、そういうことか、と、私は納得してしまった。


「僕、彼氏として失格だよね。

 今まで女の子の日があるだなんて、知らなくて……」


「そりゃ、無理もないよ。

 あまり口にするようなことでもないし」


「だから、せめてプレゼントだけでも渡したいなぁ、って思ってさ」


「は? プレゼント?」


陽一が、何を言っているのか、私には理解できなかった。


「だって、女の子の日なんだよ?

 彼氏の僕が祝ってあげなきゃ、ダメだと思うんだ」


「……陽一さ、女の子の日、って、なんだか分かってる?」


私はまさか、と心配になり、陽一にそう尋ねた。

すると、やはり予想通りの回答が返ってきた。


「ひな祭りみたいなものじゃないの?

 といっても、毎月あるんだね、女の子の日。

 はぁ……、いくら彼女のためとはいえ、毎月プレゼントは流石に出費がかさむなぁ」


こめかみに指を押し当てて、私は、深いため息をつく。


陽一は、相変わらず、ピュア過ぎる。

よくもまぁ、こんなのと一緒になってくれる女がいたものだ。


「それで、お金を掛けないで彼女を喜ばせるようなプレゼントがしたいのだけど、

 なにがイイかな、って」


「…………じゃぁ、こういうのはどう?」


正直、もう面倒くさくなったので、陽一には悪いとは思うが、適当なことを耳打ちで伝える。


「…………えーっと、まぁ、確かに、

 それだとお金は一切かからないだろうけど、

 それで本当に彼女は喜ぶの?」


「あぁ。ちなみに、そのプレゼントを最後に、

 もう今後は、女の子の日は祝わなくて済むだろうから」

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