ストーカー
「朝、学校に出掛けようとしたらさ、
自転車のサドルがびっしょり濡れててさー」
「それきっと、ストーカーの仕業だよ! 気持ちわる~い!」
学校の非常階段にて、男子と女子のカップルが他愛もないお喋りを繰り広げていた。
そう、バカップルである。
男のほうは、階段の手摺りにもたれ掛かり、腕を組んでいかにもインテリ風を気取っている。
女のほうは、先ほどからやたらとオーバーなリアクションで、ぷりぷり、と愛嬌と小ぶりな尻とプリーツスカートのポケットから零れる変な顔色のキャラクターのストラップを振りながら、男に媚びていた。
「かーくん、カッコイイから、そういうの無意識に引き寄せちゃうんだよぅ!」
「あ、でもさ、それでね、俺思ったんだけどさ。
多分、
ほら、昨日の夜から今日にかけて随分と暖かくなったからさ」
「あさつゆ、って誰!?」
「んん? ……いや、朝露っていうのは、
ほら、冬の寒い日とかにさ、窓についてるアレだよ。
「え!? 冬の寒い日に、かーくんの家の窓にへばりついてるの!?
その……あさつゆけつろって女!」
「朝露は人じゃないから!」
「人じゃなきゃ何なのよぉ!?
もぉやだ! 怖い!
マナ、一人暮らしのかーくんが心配だよぅ!」
「……ええい! じゃぁもう今晩ウチに来い!
朝露見せてやるから!」
「あさつゆって、いったいかーくんの何なの!?
一緒に住んでるの!?
かーくん、マナという彼女がありながら……っ!」
休み時間が終わりそうだったので、男は女を無理やり教室まで引き摺るように連れて戻る。その間にも、女は我を忘れたかのように、長く伸びた爪を男のブレザーの襟元に立てながら喚き散らし続けていた。
翌朝。
寝床から這い出てきたパジャマ姿の二人は、窓に付いた水滴を眺めていた。
「これが、朝露だよ」
「なーんだ、これのことだったんだぁ、朝露って。
マナってば、とんだ勘違いしちゃってたよぉ、へへ」
「ホント、そそっかしいんだから、マナちゃんは」
「かーくんもいけないんだよぉ?
朝露なんて、変な言い回しするからぁ」
「変な気を回させてゴメンね。
じゃ、ここは両成敗ってことで」
すると、マナはふいに顔を赤らめて、腰をくねくねと動かしていた。
「どうしたの?」
「いや……その……、
……朝露ばかりに気がいっちゃってて、今の今まで忘れてたんだけど、
……これって、お泊り……だよね?」
あ、と、和人は、マナから目を逸らして、鼻の頭を指で掻いていた。
「実は、俺のほうも……、
柄に合わず、随分思い切ったことしたなぁ、って……。
たかが朝露の正体を説明をするだけだったのに……」
二人の間に初めて、早朝ならではの静寂が訪れる。
ちなみに、今日は土曜日。学校は休みである。
この後の展開を、勘のいい読者なら、お分かりだろう。
春先の、柔らかな朝の日差しが、窓辺の二人をじわりと包み込む。
和人は、朝日に照らし出されたマナのいつになくとろんと蕩け惚けた表情から、目を離さずにいられなかった。
寝起きでまだ上手く頭の働かないであろう無防備な彼女の姿に、ただ生唾を飲むばかりだった。
「……なんか、急に意識しちゃったから、
マナも……朝露、出てきちゃった……」
「……俺のも、もう先っちょから朝露がほとばしり出してきて……」
「じゃぁさ……、
お互いに、拭い合いっこ、しよっか」
この後、無茶苦茶セクロスした。
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