第1話 俺、何かに目覚めました…
つい、見とれてしまった。
身長は165センチほどだろうか。
腰ほどまで伸び、鮮やかなピンク色をした髪は、月明かりに照らしだされ美しい輝きを放っており、吸い込まれるかのような紅い瞳は真っ直ぐこちらを見つめている。
端正な顔立ちをした美少女を前に俺は絶句した。
「やっと…やっとみつけました!!」
キラキラと瞳を輝かせ、期待に満ちた表情で俺を見つめる。
なぜこんな展開を迎えたかというと、話は2時間ほど前に遡る。
「あー、あついなー…」
働きたがり屋の太陽を尻目に、
いつものように、下敷きをうちわ代わりにして風速50m程で扇ぐ。
ちなみに風速50mは、扇風機の弱風程である。
俺、園田 亮は自分で言うのもアレなのだが、実に冴えない高校生2年生である。『天は二物を与えず』とは、よく言ったものだ。現にここに、一物も与えられていない高校生がいるではないか。ルックスも中の中、考え方を変えると中性的な顔とでも言うのだろうか。だが、こんな俺にも取柄なら一つだけある。妙に博識なのだ。先ほど伝えた風速の話もそうだ。
別に机に座りガリガリと勉強しまくった訳ではないのだが、頭の中に、いつしかその情報が入ってきているのだ。幼少の頃から、知る由もない事が既に頭の中に存在している。記憶の根底に眠る情報…俺の前世は有名な学者だったのかもしれないな。
キーンコーン カーンコーン
6時限目終了のチャイムが鳴った。
みんな帰り支度をしている。俺も支度しようと通学カバンへ手を伸ばす、その刹那。
「痛ッ!」
頭が脈打つように痛んだ。幼い時から時々痛むのだ。
いつもの頭痛。だが、今回は違った。
頭の痛みが徐々に引いていく、おかしい。いつもなら暫く痛むはずであろう頭が段々と澄み渡り視界が鮮明になってゆく。いつもと違う感じに戸惑いながら、鞄を掴もうと机から半身乗り出すと、カバンの上にはふわふわと訳の分からない数字が浮かんでいる。
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
俺は叫んだ。クラス中がこちらを向く。考えてみるとこんなにクラスの注目を浴びるのは、入学初日の自己紹介以来かもしれない等と、冷静にこの場の状況を分析…なんかしている場合じゃない!
なんと、女子の上にも数字が浮かんでおり、しかもそれは未だ成長過程であろうjk共の3サイズなのだ。
『消しカスと虫を見間違えたみたいでーあはは』
顔を引きつらせながらも、俺のすました返答でクラスの注目は再び各々の興味のあるものへ向けられた。勿論、俺の視線はクラス中の女子に向けられた。心底、一番後ろの席であることに感謝した、感無量である。神はようやく俺に一物を授けたらしい。
下校中も例に漏れず、女子達を舐めまわすように、
だが、感付かれぬよう細心の注意を払い、振る舞いはあくまでも自然体を意識し、華麗に3サイズを見て回った。
こんな思考回路だからモテないのだろう。変な能力と引き換えに頭でもおかしくなったかもしれない。いや、至って平常運転だ、俺だって思春期の高校生なのだ。
こんなに寄り道をしている場合じゃなかった。今日は花火大会だった。
俺の家は11階建てマンションの最上階。夏場は、花火大会の打ち上げ花火がリビングから見られるので、結構気に入っていた。
時刻は既に6時をまわっており、いつもならもっと早く帰ってきているのだが、理由は言うまでもなく3サイズ可視化フィルターが、俺の目に取り付けられてしまったからだ。
7時30分
夕飯の定刻を知らせる、鳩時計が鳴り響いた。
「おかあさーん。夕飯なにー?」
亮の問いに答えるものはいない。
あ、そういえば今日飲み会だったっけ。
一人で花火でも見ながらカップ麺を食べようと、フタのシールを剥がし
お湯を入れる。
。。。。長い。この3分間が異様に長い。
そう思うのは、俺だけではないはず。
3分経過し、ベランダのドアを開けると、
そこには綺麗な花火……と、綺麗な満月を背景に
色鮮やかなピンク色の髪をした美少女がベランダの手すりに立っており
「やっと見つけました!」
意味不明である。
そして今に至るわけだ。
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