038.夢物語

「如何にかして掴みたい」

「何を?」

「あの空を」


 そう言った彼の横顔を私は飽きることなく見ていた。彼もまた私と同じようにあの空を飽きることなく見ていた。

 その瞳に映る空の色を見ていると、いつの日か、彼はあの空の向こうに行ってしまうのだということが分かった。そういう運命なのだと思った。

 ふと、彼は顔の向きを変えて真正面から私を見つめた。


「僕らもあの空のようにありたいよね」


 私はその意味を掴みかねて、曖昧に頷いた。聡い彼はそれに気付いて、


「あの空のようにどこまでもつながっていたいんだ」


 そう言った。

 私がそれが夢物語であると知りながら、いつまでもその夢に溺れていたかった。

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