019.No Quarter
弱火で煮込んだ太陽の残光が部屋の四隅を照らしたとき、きみは窓の外にすずめが死んでいるのを見つけた。
ずっと部屋に閉じこもっていたきみは窓から手を出すだけでも新鮮な気分になり、危うくすずめの死骸に手を触れそうになった。
私が大声で叱ると鎖で繋がれている犬のようにピンと手が跳ね上がり、それから、恐る恐る手がしまい込まれていった。
きみはシというものが理解できず、私もシというものを説明できず、気まずい沈黙がやってきた。
外の世界を恐れるきみは、この部屋の中で慈悲というものを与えられるわけでもなく、ただ無慈悲な世界のあることだけを教えられた。
一度旅立てば帰る場所もなく、ただ次の部屋に至る道を歩かなければならない。
私はその覚悟ができずにここにいる。
永遠の牢獄の中に住まう私たちは、旅立つ意味さえも分からないままにこの宇宙に放り出された。
きみがここから出ていくとき、きっと私はまだ覚悟ができていないだろう。
だからきっと、きみがそれを見つけてほしい。
きっと、きっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます