第47話『試合を終えて』

 82対80。

 月原高校と金崎高校は逆転に逆転を重ね、最後は2点という僅差で月原高校が勝利し、インターハイの優勝を掴み取った。凄いとしか言いようがないくらいの本当にいい試合だったと思う。

 優勝を喜ぶ月原高校の選手ももちろんだけれど、負けても笑みを浮かべている咲ちゃんを見て思わず涙が出てしまった。


「なおくん、いい試合だったね」

「……ああ、そうだな」


 なおくんの方を見ると、なおくんの眼からは涙がこぼれ落ちている。


「なおくん、泣いてる」

「……お前だって泣いてるじゃないか。本当に心が震えるいい試合だったよ。どっちが勝ってもおかしくないくらいの」

「うん。どっちも優勝に相応しいよね」


 僅か2点差。

 その結果に辿り着くまでには、両校に何度もの逆転劇があった。それは互いに知識や技術を惜しみなく出し、チームワークの良さが生み出した試合展開だったんだと思う。どちらが勝ってもおかしくなかった。


「渚さんも咲さんも凄かったね」

「ああ。そうだな、美月」

「もう、今から来年の決勝戦も月原高校と金崎高校が戦うんじゃないかって思うよ。美緒ちゃんと一緒にずっと試合を観てきてそう思う」

「私も同じだよ、美月ちゃん」


 渚ちゃんと咲ちゃんはまだ2年生。来年、3年生になった2人がそれぞれ率いる両校がインターハイに帰ってきて、再び熱戦を繰り広げてくれるんじゃないかと今から期待してしまう。


「月原はよりチームワークを強め、今までやっていそうであまりしていなかった、渚中心の攻撃プレーを見せた。そして、金崎は予選のときに欠けていたチームワークを強化してきた。今回の結果はその賜物だったんだ。どっちが勝ってもおかしくなかった。それだけ強いチームだったと思う」

「そうだね。みんなもそう思っていると思うよ」


 だからこそ、今でも歓声が止んでいないんだと思う。最高のチーム同士が最高の試合をしたから。

 インターハイの閉会式が行なわれ、優勝した月原高校、準優勝した金崎高校はそれぞれ表彰された。

 優勝した渚ちゃん達が嬉しそうな笑みを浮かべているのはもちろん分かるけれど、準優勝した咲ちゃんが清々しい笑みを浮かべていることがとても印象的だった。悔しいとは思うけれど、全力でやりきったって感じなのかな。


「……いつまでも、立ち止まっているわけにはいかないよな……」


 なおくんはコートの方を見ながらそう呟く。


「どういうこと?」

「このままじゃいけないってさ。この決勝戦を観て、何だかそう思えたんだ」

「……そっか」

 どうやら、決勝戦を観たことでなおくんの心が動いたみたい。みんなの頑張っている姿を見て、なおくんは一歩を踏み出す勇気を持つことができたのかもしれない。一緒に会場で観戦して正解だったようだ。


「閉会式が終わったら、みんなのところへ行って直接おめでとうって言わないとな」

「そうだね、なおくん」


 私も月原高校のみんなにおめでとうって伝えたい。そして、金崎高校のみんなにはお疲れ様と言いたい。

 大盛況の中、月原高校が優勝するという結果で、今年のインターハイが終わったのであった。

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