第45話『再決戦-3rd Quarter-』

 第2クォーター。月原高校とは8点のリードを許してしまった。

 第1クォーターから何か変化があると思ったけれど、まさかあの1年生コンビを中心に攻撃を仕掛けてくるなんて。しかも、予選のときと比べて精度も上がっている。特にすずちゃんと呼ばれている子は、予選では見られなかった攻撃的な動きを見せている。

 てっきり、第1クォーターと同じように桐明さん中心に攻めるか、吉岡さんがもっと攻撃の中心になると思ったのに。あれはきっと、ポイントガードとしてチームを纏めてきているんだわ。


「向こうも変化を付けてきたんだわ」


 うちはあたし中心で動いてきたプレースタイルから、チームで動くということを基本にしたプレースタイルに変えてきた。そのおかげで、第1クォーターではリードできたけれど、第2クォーターでは見事に月原の変化にやられてしまった。第1クォーターよりもボールが向こうに渡っていた。

 けれど、得点できた点数は第1クォーターよりも2点少ないだけ。つまり、安定して点数を重ねていけていることも事実。防御をしっかりしていきながら、これまでと同じスタイルで行くか、それとも大きく変えてみるか迷いどころだ。


「咲、私から提案があるんだけれど」

「何でしょうか、部長」

「……第3クォーターは予選のときのように、あなた中心のプレーでいきたいと考えているんだけど、どうかしら」

「予選のときと同じように、ですか……」


 つまり、自然とあたしにボールが集まってきて、あたしがガンガン攻撃していくスタイル。第2クォーターまでのプレーとの変化をつけるにはそれが一番いいかもしれない。


「けれど、それは月原高校も想定していることじゃないでしょうか」

「もちろん、あなた1人で攻めてとは言っていないわ。でも、あなた中心で攻めていきたいと考えているの。それはチームのみんながあなたを信頼しているからできることよ」


 部長の言っていることが本当なのかを確認する意味で、参加メンバーの顔を見ていくとみんな笑顔で頷いてくれる。その笑みは気遣いや嘘でない。本物の笑みだ。


「もちろん、あなたがダメだと思ったら、遠慮なくみんなにパスを出して。私達はそのつもりで咲をサポートしていく。これも、うちらしいチームプレーなんじゃないかしら?」


 ……なるほど。

 以前なら、どうしてもあたしにボールが集まりがちになってしまったプレーも、今なら立派なチームプレーの1つ。あたしを信頼してくれるからこそ、あたしにボールが集まってくる。それは一見同じに見えるかもしれないけれど、きっと前とは違ってくると思う。その違いが出せるかどうかで、第3クォーターで月原高校との差を縮めること、そして逆転できるかどうかが決まってくる。


「分かりました。じゃあ、みんな……お願いします」

「大丈夫だよ、私達に任せろ」

「咲先輩のことを私達が全力でサポートしますから!」


 以前と同じようなプレーをしていこうとしているのに、何だか安心感がある。それもみんながあたしを信頼してくれているからかな。

 そうしているうちに、ハーフタイムも残り僅かに。

 あたし達は円陣を組んで、


「第3クォーターでは絶対に月原を逆転しよう!」

『おー!』


 目標を定めて、気持ちを一つにする。

 みんなの力で、次の第3クォーターで月原高校を逆転していく。


「間もなく第3クォーターを始めます! 出場する選手のみなさんはコートに入ってきてください!」


 あたし達はコートに入り、それぞれのポジションにつく。

 月原高校の選手達は1人変わっただけで、吉岡さん、桐明さん、すずちゃん、部長と呼ばれていた選手も残ったままか。これなら行けそうな気がする。


「広瀬さん。そう簡単に逆転はさせないよ」

「……それはどうだろうね?」


 吉岡さんが笑って話しかけてきたから、こっちも笑って言い返してやった。

 そして、第3クォーターが始まる。


「さあ、みんなで逆転しに行くよ!」

『おー!』


 このクォーターもみんなで攻めるんだ!

 ハーフタイムで決めた作戦を早速決行する。うちのボールになったとき、あたしにパスされるのが基本的な流れだ。

「……おっと」

 ゴールに向かってドリブルすると、さっそく吉岡さんに阻まれる。


「簡単には通させないよ。特に広瀬さんは」

「……それは光栄だね。でも、今日のあたし達を観れば、あたしがどんな風にしていくか分かるでしょ?」


 わたしはゴール側にいる部長の方に視線を向け、


「あたしがガンガン得点しに行くことをね!」


 吉岡さんがパスブロックをする姿勢に入ろうとしたところを見計らって、再びドリブルをして彼女を切り抜ける。そのまま得点を決めることができた。


「……まだまだだな、私も。この前の決勝点と同じパターンだったのに」


 吉岡さん、笑みは見せているけれど、結構ショックかもね。まあ、それならそれでいいんだけれど。


「あたしはね、信頼しているの。金崎の仲間も、自分の力も。だから、何度でも同じプレーをやって、得点を決めてみせる」


 実際には今、吉岡さんに言われて初めて思い出したんだけどね。今のプレーが予選の最後にあたしが決めたプレーと同じ流れだったことを。


「咲、やったね!」

「ありがとうございます。でも、これからですよ、部長」

「このまま咲中心でガンガン攻めていきましょう」

「ええ。でも、相手は月原です。さっきは敢えて部長にパスを回さずに、そのままゴールに行きましたけど、これからは時々、部長達にパスを回していくことが増えると思います。そうすることで、月原にあたし達の行動を予測しにくくできるんじゃないかと」

「……なるほどね、分かったわ」


 あたしと部長は小声で話し合った。基本的にはハーフタイムのところでみんなに話したことと変わりはないので、おそらく対応はできると思う。

 その後もあたし中心の攻撃は上手く展開されていく。仲間に程良くパスしていくことで、月原の選手を惑わせながら。順調に点数を重ねる。おまけに、月原の選手は第1クォーターから出続けている選手が4人もいる。ハーフタイムもあったけれど、疲れが目立ち始めていて、こちらがボールを奪えるシーンも何度かあった。

 こちらにいい流れがきたところで、第3クォーターが終了。


 月原 56 – 60 金崎


 3点のロングシュートも決めることができ、見事にこの第3クォーターで月原高校を逆転することに成功した。月原との差は4点だけれど、この差を埋められないように頑張っていかないと。


「作戦、上手くいったわね、咲」

「はい。何とか逆転できましたね」

「でも、差は4点。逆転される可能性は十分にある。最終クォーターも気を抜かずにいかないと」

「そうですね」


 残るは最終クォーターのみ。月原に勝たずして優勝なしだと思っていたこのインターハイも、あと1クォーターで決着がつく。

 杏子、楓、美緒、美月ちゃん、そして……直人。あなた達の前で優勝を掴み取ってみせる。

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