Memories 5

 唯に突き落とされたような感じがした。



 自分が犯した罪をどうにか償いたくて、紅林さんと再会するまでその気持ちを隠し通してきた。

 母さんや美月、美緒や咲がいる中で、ようやくそのチャンスが巡ってきたのに。俺は今でも確かな呼吸をしている。薬の影響で意識が朦朧となり、紐で病床に縛り付けられていても呼吸をしていることだけは変わらない。


 どうして、誰も俺のことを死なせてくれないのか。


 唯が亡くなってから、幾度となく襲ってくる自殺願望。ただ、今までの場合は実行する前に気持ちが薄れていった。それも全て、唯が自殺を想い留めさせているように思えたのだ。最後に見た彼女が儚い笑みを浮かべていても。



 生きることが辛い。

 でも、死にたいのに、死ねない。


 唯が死んだことで、俺は迷子になったんだ。自分自身で迷子にさせている。どこに向かってこれから俺は歩んでいけばいいのか。分からないし、怖いんだ。

 俺をどこかへと誘っていく灯火は、いくつも存在している。その灯火の色は数多に存在している。それは分かっている。

 その中でも、美緒という灯火は俺に対して一番長く照らしてくれていて、どんなときでも変わらない。他の灯火もどうにかして、俺を底知れぬ冷たい沼から救い出そうとしてくれている。

 俺はどの灯火に向かっていけばいいんだろう。全てに背を向けてしまうこともありなのだろうか。



 教えてほしい。知らせてほしい。

 唯という灯火から、俺にこれからどうしていけばいいのかを。

 だけど、消えてしまった灯火から答えを示してもらうことはできない。それが分かっていても、求め続けてしまうのだ。

 歩くことが怖くて、立ち止まっている。誰かが手を引いてくれることを待っている。今の俺にはそれしかできない。それしかしたくない。

 見えないものをどうにか見ようとするために、再び目を瞑った。

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