ある冬の夜に。

 寒い冬の夜。

 ひんやりとした空気はいつもより澄んでいるようで、思わず深呼吸したくなってしまう。

 紺色の空には雲一つなく、青白い大きな月が光っていた。

 俺はぼんやりとそれを見つめながら、隣の人に声をかける。


「先輩」

「なぁに?」


 隣の人――先輩はこちらを見上げ、笑ったまま無邪気に首をかしげる。

 そんな彼女に、俺は囁くように言った。

「月が、綺麗ですね」


「そうね」

 先輩はふわりと微笑んだ。

「今なら私、死んでもいいわ」

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