【菜食主義者の謝肉祭】

                                 1968/2/7

 僕は――が嫌いだ。


 僕だって生きるためには食べる。けれども、何故その為に生き物を殺さなければならないんだ?ウシや羊、豚に鳥。みんな生きてたってのに何故ヒトのエゴで彼らを殺さなければならないんだ?。あんなに悲痛な叫び声を聞いて死んでいくってのに。

だから僕は彼らを食べないって決めてる。

そうすれば救える哀れな家畜たちがいるって今も信じてる。

この日記帳もいつか一杯になるのだろうか。

                                 1968/2/8

 今日は朝からハーブのサラダとナツメのスープを飲んだ。こうやって朝を迎えるのが一番好きだ。せっかく日記を付ける時間も出来たんだから。

春にもなったし近いうちに初モノでも食べようかな。と言っても最近は全く街に行っていないからちゃんとメモしておかなきゃ。こんな時にもこいつは役に立つ。

                                 1968/2/10

 あぁ…3日目にしてサボってしまった。せっかくの日記帳だもの、しっかり書かなきゃね。そういえば12日は謝肉祭だそうだ。この生活になってから謝肉祭が嫌いになっただろ?ってみんなから言われるけどそんなことはない。なんせカーニバルが行われるんだから。みんな大声で叫ぶからすぐに声なんて搔き消されてしまって誰が何を言ってるのかわからないほどだけど、ああいう雰囲気は元から大好きなんだ。

どうしても耳が痛くなるのが欠点だけどね。

                                 1968/2/11

 とうとう謝肉祭も明日に迫った。僕も大急ぎで支度してる所だから日記を書く暇なんて無い。

あぁ、これしか書いていないけれど。早くしないとパレードが行ってしまう。

とにかく明日が楽しみだ。


                                 1968/2/12

 久しぶりの街は刺激的だった、今晩の食事も十分すぎる程用意できた。

彼らにとってはあのパレードこそがカーニバルらしいけど、僕にとっては家に帰ってからが本番だ。今日の為にわざわざナイフも新調したんだ。こんな生活だけど食事だけは絶対に手を抜きたくないからね。今日だけペティ・ナイフは包丁棚でお休み。

 

 こんなに旨い食事は久しぶりだ。今年は当たり年だったなぁ。


                                 1968/2/19

 日記帳を無くしてしばらく書けなかった。本当に残念だ。

でもまぁ、1週間の長い祭りはやっと今日で終わりだ。今年も本当に楽しかった。

外では誰かが何やら騒いでる。どうも行方不明者の捜索中らしい。

現場には棍棒が落ちていたそうだ、きっと殺されたんだって男女が泣いてる。

両親なんだろうか?2,3発殴られたくらいで人は死なないのに。


 これだから僕はこんなにも心が醜いヒトが嫌いなんだ。愛すべき家畜も殺し、同じ者同士でも争うヒトなんて死んでしまえばいい。


                                 1968/2/20

見返したらカーニバルを書き間違えていたみたいだ

ああ、まったくもう、浮かれすぎたかなぁ。でも今年もうまくいったから良いさ。

 

また後でrを書き加えておこう。

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