第2話三月五日リエンツィ主催アマチュア限定大会②
ある日、少女は願った。現状を打破する存在の登場を。
だが現れない、一向に。求めている存在が現れない。
焦り苛立つ少女。やがて一つの決断を決める。
それは、禁止、封印されいてた魔法。
けっして行ってはいけない魔法――禁忌の行使であった。
◇
先攻後攻はコイントスで決定される。
コイントスは星の多い者が行い、少ない者が言い当て、その結果で決まる。当たりなら少ない方が、ハズレはトス側の星の多い者が決定権を得る仕組みだ。
コインには表はリエンツィの国旗である大樹、裏には象徴である熊が彫られている。
テーブルに各自にセットされたコインを持つトス側。
それを指で力強く打ち上げる。コインはやがて飛び上がるのをやめ、素早く落ちていく。コインの着地点に左手の甲待ちかまえて受け、同時に右手で覆い被せる。
「――裏で」
銀髪の男が静かに選択。それを聞いた金髪の通称凡夫の男――マイゼルがゆっくりと左手を離していく。
「熊の彫もん、裏か」
銀髪の男の勝ちだ。選択権はその男に託される。
「後攻で」
「なら俺が先攻だな」
先手後手が決定し、いよいよ本格的に始まった。
互いにカットしたデッキを相手に返し、そこから6枚のカードをドロー(引く)する。
その後残ったデッキを指定位置にセット。そして手札を確認、終了後先手が「開始」の声を上げる。
「よし戦闘開始だ、俺の先攻、メインフェイズ。マナエネルゲン「赤」をセットしてエン ド」
このゲームには必ずマナコストとそれを支払うマナが必要である。
マナは基本的にはマナエネルゲンからしか出せない、その為まずはマナエネルゲンをセットしないと話にならないのだ。
だがマナエネルゲンはターン中一回しかセット出来ない。それもメインフェイズ限定となる。その為今の流れは、初手の基本中の基本の動き。
ちなみに初期ライフは20点、先に相手のライフをゼロにしたプレイヤーが勝者となる。
「自分のターンですね、ドロー致します」
そう言って堅苦しい宣告の後、銀髪の男はデッキからカードをドローする。後攻のプレイヤーはドローフェイズと言う、デッキからカードを1枚引く権利が1ターン目から移行出来る。
その後メインフェイズに移行(ドローフェイズはドローした時点で終了する)手札からカードを選ぶ。
またこのドローフェイズ時に引くカードがない場合、デッキレスアウトと見なされその時点で敗北となる。
「手札からマナエネルゲン(青)をセット、そのままエンドです」
同じく基本的な初手。ここまで特に動きはない。
「俺のターン、ドロー」
先攻も2ターン目からドローフェイズに移行出来る。そのままメインフェイズへ。
「俺は手札からマナエネルゲン(赤)をセットし、2タップ」
マナソースからマナを引き出す為には、セットしたマナカードをタップ(横向きにする)する必要がある。
一度引き出されたマナは各プレイヤーが所有するマナソースゾーンに入り、そこからマナを引き出し、コストを支払うことが出来る。タップは引き出した証拠の公開という側面も持つ。
引き出したマナを元にマイゼルは更にカードをプレイする。
「クリーチャー『非道の蛮族』をプレイ、SS:B」
『非道の蛮族』コスト①+赤
パワー2タフネス1 タイプバーバリアン
SS:B コモン
このゲームのカードは幾つかの種類がある。
マナエネルゲン、特殊マナエネルゲン、クリーチャー、魔術である。
マナエネルゲンは先に説明した通り、このゲームの根幹とも言えるカード。特殊マナエネルゲンはマナを引き出す以外に特殊な能力、もしくは特殊なマナを引き出せるカードのことだ。
そしてクリーチャー、これはそのままの意味で相手の体力を削る戦力だ。マナエネルゲン同様、メインフェイズでしかプレイできない。
マナエネルゲンとの違いは「コストと手札があれば何枚でもプレイしてよい」こととプレイ時は「呪文」であること。
「呪文」の状態はそのクリーチャーの能力は一部例外を除いて機能しない。
その為、青のお家芸「打ち消し」に対して無防備な状態である。
「対応して青1マナタップ、手札から『呪文代価』プレイします」
『呪文代価』コスト青
対象の呪文をプレイしたプレイヤーは①マナを支払わなければならない。
支払わない場合、その呪文を打ち消す
SS:B アンコモン
呪文は一度プレイすると「ドリフト状態に乗った」扱いになる。
その「ドリフト」状態の呪文に対して、対戦相手は別の呪文をドリフトに乗せて、対応することができる。
この場合『非道の蛮族』に対応して『呪文代価』をプレイ。既にすべてのマナエネルゲンを使用したプレイヤーは追加コスト①を支払えない為、『呪文代価』の効果が発動され打ち消され、ドリフトの処理を解決させる。
双方カードを
ちなみにドリフトに乗っている時に一つ重要な要素がある。
SS(スペルスピード)の概念だ。
スペルスピードとは平たく言えば「その呪文が解決される順番」である。スペルスピードは5段階ありS、A、B、C、Dの5段階だ。Sが最も早くそこから右から順に落ちていき、Dが最も遅い。
そしてスペルスピードはこのゲームのバランスの目安でもある。其々のスピードに枠組みがあるからだ。
S:
半面効果は貧弱な物が多く、緊急性を要する時に使われる。
A:
B:
C:
SS:Cのカードにはコストが軽い、もしくは条件のない確定カウンターが大半、もしくは追加効果のある物が大半である。
D
そしてスペルスピードにはルールがあり「スペルスピードの遅い呪文でそれよりも早い呪文に対してドリフトに乗せてはならない」
つまり、スペルスピードBのカードに対してCのカードでカウンターをプレイしてはならない、というもの。
最も場に出たクリーチャー、特殊マナエネルゲンはその限りではない。
一度出たクリーチャー呪文は「エグジスタンス」と言う状態になる。
この「エグジスタンス」の状態に限り、その能力をドリフトに乗せてプレイ出来るのだ。
早さに関係なく既に呪文としてドリフトに存在していて、それをプレイしていると思えばわかるだろう。
尚、この際、その能力の処理速度はそのクリーチャーのスペルスピードで行われる。
つまりSS:Aの呪文に対応して能力を発動しても、その効果はAの呪文の解決後に処理される。
例として、プレイヤー1がSS:Cの「対象のマナエネルゲンを一つ破壊する」カードをプレイ。
それに対応してプレイヤーBがSS:Aの「対象の呪文をプレイしたプレイヤーは①マナを支払わなければならない。
支払わない場合、その呪文を打ち消す」カードをプレイ。
この①が支払えないのでエグジスタンスとして場に立っているクリーチャーSS:Bの「あなたのマナソースゾーンに①マナを加える」を対応してプレイしたものとする。
この場合だと、まず最も早いのはプレイヤーBの唱えたSS:Aの呪文。まずこれが解決されて、プレイヤーAのSS:Cの呪文が打ち消される。
その後SS:Bの効果でプレイヤーAのマナソースゾーンに①マナが加わることになる。つまり後の祭りということだ。
また同ランクのスペルスピードの場合は「優先権」を所持したプレイヤーの呪文から解決される。
「優先権」はメインフェイズ移行時に移行したプレイヤーが有しており、カードを唱えた時点で相手に移行する。
その為、後から出した方から順々に解決していくのだ。後出し有利と思えば解りやすいだろう。
「ターンエンドだ」
話を勝負に戻そう。マイゼルはマナも枯れ、手はないのでそのままエンドを宣言する。
「自分のターンですね、アンタップフェイズ」
マナを使用した場合のみ発生するフェイズ「アンタップフェイズ」。
タップしたマナエネルゲンを元に戻し、また使用することが出来る用にするフェイズだ。
「ドローフェイズ、手札から基本マナエネルゲン(黒)をセットします、これでエンドです」
色を2色用意する銀髪の男。特にこのターンも動きはなかった。
「俺のターン、アンタップフェイズ。ドローフェイズ、ドロー」
マイゼルの手札は現在5枚。まだまだ序盤だがここでも動く。
「マナエネルゲン(緑)セット、そして赤と緑のエネルゲンをタップ」
2マナを支払い、手札から新たにカードをプレイする。
「手札からクリーチャー呪文『大月の輪熊』をプレイ」
『大月の輪熊』コスト①+緑
パワー2タフネス2
SS:B コモン
「対抗策はありません、通しです」
今回は銀髪の男には対抗策がない。その為この呪文は解決され、ようやく場にクリーチャーが立つ。
「よし、俺はそのままバトルフェイズに移行する」
場にクリーチャーが呪文からエグジスタンスに移行した時に移行するフェイズ「バトルフェイズ」
その名の示す通り、戦闘を行う権利である。
現在銀髪の男の場にはクリーチャーが存在しない。つまりノーガード、手札から呪文を唱えなければこの攻撃は防げない。
「アタックだ」
「対抗はしません、受けます」
アタックの際はその対象となるクリーチャーをエネルゲン同様、タップさせる。
攻撃は基本的に一体につき一回までとなる。銀髪の男は対抗しなかった為、『大月の輪熊』のパワー2がそのライフから引かれる。
現在ライフは18点、まだ顔色を変えるほどでもない。今場に立っているクリーチャーだけで殴り勝つには後9回も殴る必要がある。
つまり9ターン、その間ドローも9枚、デッキ総数の約4分の1が引けることになる。その間にクリーチャーをこちらも立たせればいいので、なんとでもなるといった所。
ちなみに先ほどの『呪文代価』はターンが立てば経つほどその力が落ちていく。故に早めに使うが吉、それだけのプレイ内容だ。
「エンドだ」
「では自分のターン、ドローフェイズ、そのまま引いて来たマナエネルゲン(白)をセット、エンドです」
「なんだなんだ、もう事故ってんのか?俺のターン、アンタップフェイズ」
攻撃参加したクリーチャーはマナエネルゲン同様、アンタップフェイズで元に戻る。
「ドローフェイズ、カードはプレイせず、そのままバトルフェイズに移行、アタックだ」
「対抗はしません」
ダメージチェックが入りライフが引かれる。これで残りライフは16 。
「自分のターンですね、ドローフェイズ」
銀髪の男がカードをドローする。
その時、引いた勢いあまって、デッキの上のカード一枚を捲ってしまう。典型的チョンボ行為だ。
「ああ、しまった」
「おいおい何やってんだよ、そのカードちゃんとボトムに入れとけよ」
「はい……すいません」
「たっく、この素人が」
チョンボが発生した場合原則的にはデッキの一番下にそのチョンボ対象となったカードを入れる。
あくまでも原則。ジャッジ同伴の試合ならばジャッジの指示による。
もしくはチョンボによりあってはならない損失が発生した場合、その時点で無効試合。対戦相手の無条件勝利にもなる。
今回は特に対戦相手であるマイゼルには損失は特にないためこの程度の処理で済む。
慣れない手つきでカードをデッキボトムにしまい、銀髪の男はゲームを再開する。
「いいカードだったのに……メインフェイズ、引いてきたマナエネルゲン(青)をセットしフルタップ。更に手札から『海岸線の怪鳥郡』をプレイします」
『海岸線の怪鳥群』コスト③+青
パワー2タフネス3 タイプ鳥
飛行(飛行は飛行を持つクリーチャーでなければブロックされない)
SS:B コモン
航空戦力とも言われるクリーチャー、飛行能力持ち。
クリーチャーをコントロールする場合、相手アタックフェイスのクリーチャーの攻撃に対して自身の持つクリーチャーでブロック出来る。飛行を持つクリーチャーはそのブロックを同じ飛行持ちのみでしかブロックされない為、回避能力と言われる。
ちなみにゲーム性の勘違いでよく初心者が行いやすいミスがひとつありアタックフェイスはクリーチャーを使い、プレイヤーに攻撃する物。
あくまでもプレイヤー、クリーチャーがクリーチャーを攻撃することは出来ない。
「対応策はない、通しだ」
「やった、やっとクリーチャーが立ったぞ。エンドです」
攻撃には使わずエンドする銀髪の男。これにも、もちろん意味がある。
「俺のターン、ドローフェイズドロー、メインフェイズでマナエネルゲン(緑)セット、赤マナ1タップし手札から魔術『瞬間性パイロキネシス』プレイ」
『瞬間性パイロキネシス』 コスト赤
対象のクリーチャーかプレイヤーに2点のダメージを与える。
『瞬間性パイロキネシス』をあなたのメインフェイズでプレイした場合、更に追加でその対象に1点のダメージを加える。
SS:B コモン
「対抗はしません、解決です」
「対象は『海岸線の怪鳥群』効果によりまず2点、その後メインフェイズ発動の条件も解決され追加で1点、合計3点のダメージを与える」
ダメージを受けたクリーチャーは自身のタフネス以上のダメージを受けると破壊され、墓地に置かれる。
先ほど『海岸線の怪鳥群』を攻撃参加しなかったのも、ブロックに使って『大月の輪熊』を打ち取る為だ。互いのパワーは2だが『海岸線の怪鳥群』がタフネスにおいて上回る。
当然相手は見えてる相手に殴りはしない。アドバンテージの損になるからだ。
故に攻撃に参加しなければ攻撃の抑止になったということだ。その目論見は崩れたが。
『海岸線の怪鳥群』はタフネス3、その為破壊される。
「更に残りをフルタップ、『ルーン肌のクロコダイル』をプレイする」
『ルーン肌のクロコダイル』 コスト③+緑
パワー4タフネス3 タイプクロコダイル
あなたのこのメインフェイズで『ルーン肌のクロコダイル』以外の呪文をプレイした時、『ルーン肌のクロコダイル』のマナコストを①下げる
SS:B アンコモン
緑のお家芸コストダウン効果の一つ。この場合、結果的に4マナ全て使ってるが、先に『瞬間性パイロキネシス』を使うことにより1ターンで両方プレイ出来るようになる。当然そちらのほうが旨味がある。
ちなみにマイナスされるマナコストで+緑の部分はマイナス出来ない。
この+マナは必ず必要な色マナな為「+○を下げる」という効果でなければ下げられない。
「パワー4かぁ~どうしよう……うーん」
「どうした? 対応するのかい?」
「いやいや、対応は出来ません」
銀髪の男はマナを枯渇させているため対応は出来ない。『ルーン肌のクロコダイル』のパワーは4と高い。これでマイゼルの攻撃値は三倍になる。
「バトルフェイズ移行」
「対応してディフェンシブフェイズに移行します」
ディフェンシブフェイズは自分の場に基本マナエネルゲン以外のエグジスタンス状態のカードがない場合移行できる。
このフェイズに移行したプレイヤーはアンタップフェイズ同様マナエネルゲンをアンタップ出来る。
ただしこのフェイズ中には一つの制限がある。それは「ディフェンシブフェイズに移行したプレイヤーは全てのカードで対戦相手を対象に出来ない」
これはバランス調整の為。先の『瞬間性パイロキネシス』の様なバーンカードをディフェンシブフェイスで発動した際、もしプレイヤーを対象に出来てそれで決着してしまっては、あまりにもノンクリーチャー戦術による待ち有利になる。殴る旨味すら吹っ飛びかねない。それではディフェンシブなんて大嘘だ。
故に火力にせよそれ以外にせよ、アタックフェイズに移行したプレイヤー本人へのちょっかいは出来ない。あくまで立っているクリーチャーのディフェンスの為のフェイズなのだ。
「クリーチャー2体でアタックだ」
「 対応してフルタップで、『静寂の伝令』プレイです」
『静寂の伝令』コスト③+白
このターン全てのプレイヤーはダメージを受けなくなる
SS:A コモン
『静寂の伝令』のスペルスピードはA、まず先に解決され、全てのプレイヤーに反映される。
その後2体のアタックが解決、ダメージチェックに移行する。だがこのターンは『静寂の伝令』の効果によってダメージを受けない為チェックが終了される。
この処理の通り、アタックのダメージ処理もスペルスピードが反映されるのだ。
「くそ、エンドだ」
多少苛立ちを見せるマイゼル。
しかしそれは演技、内心は余裕に満ち溢れている。ある確信を得たからだ。
(こいつはやっぱズブの素人、初心者だ)
理由はいくらかあった。
まずおぼつかない動き、先ほどのチョンボなどがその典型。そしてデッキパワーの低さ。コントロール寄りのデッキ構成らしいがアタッカーにせよダメージ敬遠せよ重たいカードを使っている。
そんなカードを入れて『炎刃翼のサラマンダー』のようなパワーカードを入れないなんて、もうこれは強さの本質を理解してない証拠だ。
初心者が勘違いしやすい勘違いの一つに「スペルスピードの速さ=強さ」という誤解がある。
確かに速いに越したことはない。対応が出来なければそれは確かに強力な強みだ。だがバランスが伴っていないなら話は別。4マナということは使うのに最低でも4ターン必要なカード。なのに効果はダメージ敬遠のみだ。
対して『炎刃翼のサラマンダー』は追加でクリーチャー⒉体のクリーチャーを生贄に捧げなくてはいけないが同じマナ数だ。仮にパワー2のクリーチャー2体を生贄な捧げてもパワーは3点も跳ね上がる。
殴る回数も5回から3回に増える。クリーチャーが並びやすいリミテッド構築でこのパワーは破格だ。
なのにバランスなのか戦略かは不明だが、明らかにどちらが勝利に貢献する確率が高いかもわからない。そんなカードを入れる位なら打点のしっかりしたクリーチャーかもっと軽いクリーチャーをピックして使えばいい。
その間殴っていれば、ダメージが入り勝利に近づくからだ。危なくなったらブロックに回せるしより効率的だ。
なのにダメージを受けたとして、まだ2回殴られても負けないのにこんな場面でダメージを敬遠している。それならもっと煮詰まってから唱えた方がよい。その方がより効果が高まると言う物。
これも初心者に起き易い「ダメージを受ける=ピンチ」という発想。この後、更にクリーチャーを展開してダメージ量が増えたらどうするつもりなのか?その辺がわかっていない。
ダメージ敬遠は敗北から一時的に遠さがるが勝利には一歩も近づかない。
あくまで勝つための布石があり、その布石が生きるリミットを守るために使うもの。
ましてやタイプリミテッド構築は基本
(デッキレスアウト狙いやバーンダメージのみで戦うフルバーン戦術だと勝ち道はあっても実用レベルで組める保証が無い為)
故に先の『静寂の伝令』の使用は「ディフェンシブフェイズに入れたし、使っとこう」という思考が薄れて見えてしまう悪手。仮に軽いクリーチャーをデッキに持っていたとして、先に展開しないでこんなカードでその場凌ぎするのは単純に手札に存在しないからだ。
(それなら問題ない、現状のパワー比は6対0でライフは20対16、俺の手札は2枚と心許無いが、このまま殴り合いでダメージ値で上回れるなら後はトップのカードからクリーチャーをいつでも展開出来る様にして息切れだけ気をくばれば恐れる要素などない)
「自分のターンです。アンタップフェイズ、ドローフェイズドロー」
先のやり取りで手札はこのドローを合わせて5枚、このドローには嫌でも期待が入る。
「よしいいカードだ。黒+2マナで 『引っ込み思案の吸血鬼』プレイですSS:C」
『引っ込み思案の吸血鬼』コスト②+黒
パワー3タフネス2 タイプ吸血鬼
飛行(飛行は飛行を持つクリーチャーでなければブロックされない)
『引っ込み思案の吸血鬼』は攻撃かブロックに参加すると貴方の手札に戻る。
SS:C コモン
マナコスト3で飛行持ちのパワー3と優れた性能を持つカード。正し、攻撃か防御どちらかでも参加すれば手札に戻るデメリット効果を持つカードだ。だがこのゲームに限りデメリットとしの意味合いは薄い。
「通しだ」
「ではバトルフェイズに移行します。『引っ込み思案の吸血鬼』でアタックです』
「通しだ」
5ターン目にして初めてダメージが通る。ライフ差は1点差にまで縮まるが、依然形勢不利は銀髪の男。まだパワー差には3の開きがあり、このまま殴り合えばダメージレースでは勝てない。
「『引っ込み思案の吸血鬼』を手札に戻しターンエンドです」
「俺のターン、アンタップフェイズ、ドローフェイズドロー」
手札3枚のマイゼルはパワー差で優位に立っているのでまだ余裕に満ちている。
「カードはプレイせず、そのままバトルフェイズ」
「対応してディフェンシブフェイズ移行、アンタップ」
「2体でアタック」
「対応して『瞬きの壁』をプレイ」
瞬きの壁 コスト①+白
あなたの場にパワー0タフネス1の白の壁トークンを2体場に出す。(壁は攻撃に参加出来ない)
ターン終了後、そのトークンを破壊する
SS:B
独自のカードが存在せず、ルールによって生成されるクリーチャー、トークン。壁の固定ルールとデメリットによりブロック限定効果だが、ディフェンシブフェイズでのブロック手段としてはなかなかの性能だ。
メインフェイズでトークンを張った場合は、ディフェンシブフェイズに移行しない為、この使い方が基本になる。
「壁トークンで2体をブロックします」
トークンはその生成カードのSSを引き継ぐ。つまりSS:B、優先権は相手に移るが一時凌ぎならこれでも十分だろう。
「対抗はしない、解決だ。」
ダメージチェックが解決され、このターンも無傷で凌ぐ。ライフ差変わりなし、勝負も中盤にそろそろ差し掛かる頃間だ。
「自分のターンですね、アンタップフェイズ、ドローフェイズドロー」
「先ほど引いたマナエネルゲン(黒)をセット、更に『引っ込み思案の吸血鬼』をプレイ」
「対抗はしない、通しだ」
「アタックフェイズ移行、アタックです」
「通しだ」
これでマイゼルのライフは14点になる。初めて銀髪の男がライフで優位にたった。
しかしパワー値はまだ変わりない、依然有利はマイゼル。
当然マイゼルはその事を理解している。理解している為崩し時を待ってるに過ぎない。だがそんな事実を見ようともせず、仮初の優位に銀髪の男は喜んでいた。
「よしよし、いい感じだ」
(馬鹿が、せいぜいはしゃいでろ)
マイゼルはそれを見て見下していた。一時の優位に一喜一憂するなんて愚の骨頂、そう思っている。
しかし彼はまだ知らない。
自分が見下す男の常人の思考から逸脱した戦略、思考、罠に。一見して凡でありきたりな展開、故にマイゼルは気づきもしない。
自分が魔獣の空腹を満たす餌であるその事実を……
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