第18話 神崎楓対劉麗華

「おー、おもしろいことになってるなぁ」

体育館の屋上で、シスターマリアは戦闘を見ていた。

マリアの前には、4つのモニターらしきものがあり映像は、4か所の戦闘を映していた。

「さて次は、あいつらかな」

マリアはそう言って、校庭が映っている映像を見た。


校庭では、神崎楓と劉麗華が対峙していた。

「いきます」

楓は構えていた、弓を引き矢を放った。

麗華は、横に飛んで躱した後

「いくぜ」

ドンッ

そう言って、一気に前に飛んだ。

ジャキンッ

楓は、弓から刃を出して近接の構えに切り替えた。

ガキガキガキンッ

麗華は、槍を無数に突くが楓はすべて防いでいた。

楓は、大きく払ったあと後ろに飛び弓を引き

バシュン!

矢を2本同時に放った。

「ちっ」

麗華は、矢を一本払いながらもう一本を躱すように体を横に向けた。

しかし、楓はそのまま第2射を構え

「五月雨いきます」

大き目の矢を、少し上にあげて放った。

矢は、放物線を描くように上がり下に向いた瞬間はじけて無数の矢が麗華に降り注いだ。

「はああっ」

バババババシンッ

麗華は、上に向けて槍を扇風機のように回して防いだ。

防いだ後、麗華が正面を見た瞬間楓は、すでに懐に潜り込んでいた。

「隙ありっ」

ズバッ

胴を薙ぎったが、麗華は大きく飛んで下がった。

「今のは、危なかったぜ」

麗華は、破れた腹の部分を押さえていた。

「浅かったようですね」

楓は、そういって再び弓を構えた。

「私の攻撃を、ああも捌くとはねぇ」

「対策は、万全ですわよ」

「まあ当然か・・・だが」

そう言って、麗華は槍を構え

「それで、勝った気になるのは気が早いと思うけどねぇ」

そう言いながら麗華は、槍を捻った。

カチッ

音が聞こえたが、槍に変化はなかった。

「いくぜ」

麗華は、その場から槍を突いた。

「その距離では・・」

楓が、そう言いかけた瞬間槍が伸びてきた。

「!?」

楓は、驚き慌てて躱したが

「せいっ」

麗華は、槍を引き上から振り下ろした。

楓は、弓で防いだが

バシィッ

槍が、折れ曲がり背中に当たった。

「くうっ」

楓は、槍を払いのけ間合いを取ろうとしたが

「あまいっ」

麗華は、そのまま横に払った。

ガシィン!

楓は、防いだが校舎まで飛んだ。

「三節昆ですか」

楓は、よろけながら立っていた。

「これが、私の隠し武器さ」

そう言いながら、麗華は武器を元に戻した。

「さて、これで下がることはできないな」

麗華は、槍を構えた。

楓は、校舎を背にしているため左右に飛ぶか上に飛ぶしか間合いを離すことができなくなっていた。

「困りましたわね」

楓は、平静を保っていたがどの方向に飛んでも、三節昆で叩かれ戻される。この場にいても槍の射程内で攻撃を回避できない状況に内心焦り始めていた。

(あー、まずいなこれは)

その時、頭の中で声が聞こえた。

「えっ?」

楓は、聞きなれない声に驚いた。

(だれですか?この声は?)

(おー、やっと聞こえたか。ずいぶん前から囁いてはいたけど)

(今取り込み中なんですけど)

(知ってるよ、この状況あんたじゃどうにもならないと思うからさ)

(何か、打開策でもあるんですか?)

(私と、代わりな)

(え?それはどういう・・・)

楓は、頭の中に聞こえる声と話していたとき

「これで、終わらせるぜ」

麗華は、足を広げ狙いを定めるように槍を構えた。

楓は、防御態勢を取って

(こうなれば、賭けに出るしかないようですわね)

楓は、弓を強く握り身を縮めた。

「いくぜっ」

麗華は、前へ踏み込み

「喰らえっ、千手槍撃!」

その瞬間、無数の槍が楓に襲いかかった。

ガガガガガガッ

楓は、弓で防いでいたが素早く連続で来る槍に対応できず徐々に削られていた。

そして、楓の防御が崩れた瞬間

「止めっ!」

麗華は、槍を大きく引き貫こうとした瞬間

「ここです」

楓は、弓を引いた。

「ゼロ距離だと!」

麗華は、驚愕したが

バシュンッ!

楓は、矢を放った。

バキンッ

麗華の顔面に、命中し顔が仰け反った。

「やりました」

楓は、にっと笑ったが

(いや、まだだ)

頭の中で、声が聞こえた。

仰け反った顔が、戻った瞬間楓は驚愕した。

麗華は、矢を口で咥えていた。

「おしかったな」

矢を、ぷっと吹き構えていた槍を振り抜いた。

ズドォン!

楓の左肩を貫き、校舎に激突した。

「うああああああああああっ!!」

楓は、痛みのあまり絶叫した。


「これで、決まったな」

麗華は、貫いたまま顔を近づけた。

「くっうううっ」

楓は、苦悶の表情を浮かべていた。

「さあ、敗北を認めな。それで、終わりだ」

「お断りしますわ」

楓は、痛みに耐えながら言った。

「あっそ」

そう言うと麗華は、槍を更に押し込んだ。

「うぐああああっ」

楓の左肩に、更なる激痛が走った。

そのとき、楓の頭の中で声が聞こえた。

(おしかったが、ここまでのようだなぁ)

(またですか、こんなときに)

(こんなときだから、声をかけたのさ丁度いいから代われよ)

(どうやってですか?)

(簡単さ、意識を換ればいいだけさ)

(あなたは、誰なのですか?)

(まだわかんねぇのか?私は・・)

そう言った瞬間、楓の意識が一気に遠のくのを感じた。

(私は、おまえだよ)

楓は、意識が遠のく瞬間自分の顔を見た。

そのあと楓は、意識が途切れたように俯いて動かなくなった。

「気絶したか・・・やっと、終わったな」

麗華は、そう言って楓が気絶したのを確認する為顔を近づけた瞬間

ガシッ

楓は、俯いたままいきなり右手が動き麗華は、顔面を掴まれそのとき

ボウッ

楓の右手から、炎が現れた。

「ぐあああああっ」

麗華は、顔を焼かれ槍を抜いて振りほどいた。

「な、なんだ今のは」

顔を押さえ楓の方を向いたとき

「ふっふっふっふっくっくっくっ」

楓は、笑いながらゆっくり立ち上がった。

周囲には、小さな火の粉が現れ楓を包んでいた。

「あーっはっはっはー」

楓は、天を仰ぎ高笑いをした。

そのあと、麗華の方を向き

「またせたな」

そこには、いつもの楓とは違う釣目でにやけた顔があり目の色は、赤く髪は若干朱色が混ざっていた。

「なんだ、何が起こった?」

麗華は、状況が読めず焼けた顔を押さえながら楓を見ていた。

「こっからは、選手交代だ。楽しませてもらうぜ」

楓は、そう言いながら右手から炎を出した。

「はあっ」

右手を、払った瞬間炎が飛んできた。

「くうっ」

麗華は、横に飛び躱したが楓は、目の前に飛び込んでいた。

「おらおらー」

炎を纏った右手を、手刀で繰り出してきたが麗華は、槍で捌いた。

「はっ」

楓は、手のひらを麗華に向け

「燃えな」

ゴウッ!

火炎を、放った。

「ぐううっ」

麗華は、一瞬焼かれたが槍を回して後ろに下がった。

楓は、追い打ちをかけずにやけたまま麗華を見ていた。

「おまえ、だれだ?」

「私は、楓だよ。ただ、人格は違うがな」

「なにぃ?」

「そうだな、強いて言うなら私は『炎神楓』だ」

「炎神だと!?」

「そうさ、私は炎を操る神とでも言っとこうか」

楓は、そう言いながらゆっくり近づいて行った。

「さっき相当やられたからさっさとケリをつけねぇとなぁ。長くはもたねぇんだよ」

「ならば、もう一度串刺しにしてやる」

「できねぇよ」

麗華は、槍を構え

「もう一度喰らえ、千手槍撃!!」

再び、無数の槍が楓に迫るが

「同じ技は、通じねぇよ」

楓は、右手をかざし炎の壁を作った。

「そんなもので、破れるものか」

麗華は、そのまま槍を貫いたが炎が消えたときそこには、楓の姿はなかった。

「なっ!?」

「だから、通じねえぇといっただろ」

楓は、麗華の真横に立っていた。

「終わりだ」

ドドドドドンッ

楓は、麗華の額と両肩と両脇に炎の拳を撃ちこんだ後背中を向き

「爆ぜろ」

指をパチンと慣らした瞬間

ドオォン!!!

麗華は、火柱に包まれた。

「があああああっ」

火柱が消えたとき、麗華は所々黒ずみになっており膝から崩れ前のめりに倒れた。

「私の炎は、誰にも消せないさ」

楓は、にやりと笑いながら言った。

「さてと、他の奴も焼き払っちまうかな」

そう言って、去ろうとした瞬間

ドンッ

背中に何かが刺さった。

「てめぇ」

背中には、槍が刺さっていた。

「ただでは・・・・やられん」

麗華は、立ち上がったいたが意識が途切れ倒れた後変身が解けた。

「まあいいか、機会はまた・・・あるさ」

楓も、その場で崩れ落ち倒れた。

しばらくして

「はっ」

楓は、目をさまし起き上がった。

目の前には、麗華が倒れていた。

「私が、やったのですか?」

楓は、戦闘を振り返って思い出そうとするが

「槍を受けてから、意識が飛んで・・・・・そのあとが思い出せない」


しばらくその場に座りこみ

「あと、あの声・・・・あれがやったと言う事でしょうか」

楓は、いまいち納得できないでいるが

「自分の中に、もう一人の自分がいる・・・・にわかに信じにくいですわね」

そして、校舎を見て

「みなさんは、どうなんでしょう」

他の戦いを気にしながら、自分に起きた出来事に困惑していた。

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