第15話 それぞれの思い

東郷と対峙して決戦を決めた翌日

奈々達は、中庭で桜瀬に会っていた。

「やっぱりそうなりましたか」

桜瀬は、微笑浮かべ奈々達に言った。

「勢い余って・・・言っちゃいました」

奈々は、頬をぽりぽり掻いて苦笑いをしていた。

「戦うにしても3人ですか?」

桜瀬は、聞いた。

「彩音もいたけど、ああなってしまったので実質3人ですね」

晶も少し苦笑いしながら言った。

「桜瀬さんは、どうしますか?」

楓は、聞いた。

「私は、その日まで考えておきますわ」

桜瀬は、直前までは黙っておこうと考えていた。

「ところで、優ちゃんですがもう目覚めてますわよ」

「ほんとに!?」

晶は、身を乗り出した。

「ですが、まだ学校にはこれないでしょう。もうしばらくは安静ですわ」

「そうか」

晶は、一安心した。

「でも、なんでだ?起きるにしても早くないかな?」

奈々は、首をかしげてそう言った。

「恐らく、急所は外したのでしょう。達人ともなればできなくもないですから」

桜瀬は、奈々達の経緯を聞いた上で推測を述べた。

「本当に眠らせるだけだったのかな」

「心臓は外したということかな」

「なにはともあれ、お見舞いに行きましょう」

楓は、にっこり顔で言った。

「行く前に、メールでも送ってあげたらいいと思いますわ。では、わたしはこれで」

そう言って桜瀬は、去って行った。


そして、彩音にメールを送ったあと3人は家に向かった。

彩音は、すんなり3人を部屋に招き入れた。

「まさか、早く返事が来るとは思ってなかったよ」

彩音を含む4人は、テーブルを囲み座っていた。

「ここで、拒否するわけにもいかないと思って・・・」

彩音は、下を向いて答えた。

「お姉ちゃん・・彩音美紀さんに会ったよ」

晶は、病院での事情を話した。

「そうですか、お姉ちゃんに・・・」

彩音は、驚くこともなく答えた。

「驚かないんだ」

「どのみち、お姉ちゃんの事を聞いて遭うと思ってたのであんまり」

「で、話変わるけどシードのことはいつ知ったの?」

奈々は、話を変えた。

「シードを知ったのは、みんなに見せた前日です。静香さんに、事情を聴いて協力を頼まれました。その時は、可能と思ったのですが、言うに言えずもう一度話した際にあの作戦に切り替え私が、裏切り行為で3人に襲われないように穏便に納めれることができればと思ったんですが・・・結果は、あのとおりです」

「でも、彩音ちゃんを刺すことはなかったはずだよね」

「それは、理由があります」

「理由?」

「晶ちゃんとの会話中に、通信はあったんです『撃て、撃てばすべてが終わる』と、でも撃てなかったその時私は言ったんです『私は、晶ちゃんたちの味方です』と、そのあと『ならば仕方ない』と言われ私を刺したのです」

「敵になると判断したので会長は、刺したのですね」

「はい」

彩音は、すべてを話した。

「では、判決を言い渡す」

奈々は、そう言って鞄に手を入れた。

「判決は・・・・有罪」

スパーン!

「ふぎゅっ」

そう言った後、鞄からハリセンを出して彩音を叩いた。

「ちょっ、おまっ」

晶は、驚き立ち上がった。

「これで、チャラにする」

奈々は、ハリセンを持って言った。

「え?」

彩音は、頭を押さえながら奈々を見た。

「だから、これで許してあげるって言ってるの」

「え?・・・わ、私は、絶交とか殴られるのかと・・」

「絶交はしないし、殴りもしません・・・叩いたけど」

「なんでですか?」

「ごめんと言ったし、反省もしてるからいいかなと」

「・・・・」

「それに、殴ろうとしたら私が晶ちゃんにボコボコにされるからねぇ」

奈々は、にっと笑って言った。

「二人ともいいかな?」

奈々は、楓と晶に聞いた。

「もちろん」

「当然ですわ」

二人とも、即答であった。

「あ、ありがとうみんな・・・・ぐすっ」

彩音は、下を向いて泣いていた。

「そのかわり、生徒会の事とお姉さんのこと教えてね」

「うん、うん」

それから、彩音が泣き止むまで待ってから四天王の事を聞いた。

四天王全員が、彩音美紀と繋がりがあった。

東郷静香と如月舞は、美紀の元で生徒会活動をしていて普段から3人で動き静香は、美紀を慕っていた。

劉麗華は、隣同士で毎日朝二人で登校していた。雅臣が狙い出した時は、登下校

時護衛としてついていた。

「そして、和泉さんと桜瀬さんも元は生徒会の一員でした」

「!?」

和泉真琴は、生徒会執行委員長であった。困ったときいつも美紀に相談したり勉強にも付き合ってもらっていた。

桜瀬姫香は、風紀委員であった。雅臣が美紀を狙っていたとき妹の優に危害が加わらないように、優の登下校時護衛についていた。

雅臣と決着がついたあと、和泉は空手部主将になり生徒会を離れ有事の際だけ協力することになり桜瀬は、やり方に静香と意見が分かれ生徒会を離れ反逆同盟を作り好機をうかがっていた。

「なるほどなぁ、それで桜瀬は『優ちゃん』と言ってたわけか」

晶は、納得した。

「でも、桜瀬さんは護衛目的であって友達ではなかったのです。私が入った時、気が弱かったのでいじめとかあると思ったのですが、生徒会が影で守っていたから今があると思います。それで、これじゃだめだと思って和泉さんがいる空手部に入ったのです。和泉さんは快く迎えてくれたのですが、なかなか周りに溶け込めなかったとこに、晶ちゃんが来て・・・それで、初めて友達ができたということなのです」

3人は、彩音の話を真剣に聞いていた。

そして、日が暮れたのを確認して

「んじゃ、そろそろ帰りますか」

奈々は、立ち上がった。

「そうだな」

「そろそろ、おいとまいたしましょう」

晶と楓も立ち上がって帰る準備をした。

「あの、みなさんはこれからどうするのですか?」

彩音は、3人に聞いた。

「数日後、生徒会と全面対決をやる。勝った方がシードを渡す条件でね」

奈々は、言った。

「彩音ちゃんは、落ち着いてから学校に来ると言いそれまでには片を着けるさ」

晶は、鞄を持ってにっと笑った。

「何も心配することはないですよ、負けませんから」

楓も、笑顔で言った。

「はい」

彩音は、返事だけした。

そして、帰り道

「彩音って、気が弱いと思ったらそうでもないんだな」

晶は、空を見ながら言った。

「なにいってるのさ。気の弱い人がシード使えないでしょ」

奈々は、ジト目で晶に言った。

「彩音さんは、芯が強いのですよだからシード所有者になれたと思いますよ」

楓は、二人を見て言った。

そう言いながら、薄暗くなる中3人は家路に向かった。


時を同じくして生徒会は、会議室で机を囲み一同に集まっていた。

「御影達と決戦ですか」

磯部理沙は、東郷の言葉に息をのんだ。

「そうだ、この戦いで勝った方にシードを渡す」

「それはいつ?」

「一週間後、この東郷学園にて行う」

全員は、このことにざわついた。

「こちらは、全員投入するが参加は自由だその代りシードは、置いて行ってもらう」

「しかし、私達のは欠片であってメインでは・・」

「そう言う約束だからな。違えるわけにもいかない」

「・・・・」

しばらく沈黙が続き

「すぐに決めろというのも、無理があるな。3日後もう一度集まろうそれまでに決めてくれ以上だ」

そういうと、東郷は立ち上がり会議室を出た。

「御前」

如月も東郷と同時に出て声をかけた。

「みんな、来ますか?」

「来なくてもいい。あいつらの目標は私達四天王なのだからな」

「しかし、数があればあいつらを削れます」

「できると、思うか?」

「相手は3人です。普通に考えれば可能です」

「普通ならばな」

「どういう意味ですか?」

「あいつらは、個々の能力も高い。そして、シードを使いこなしているメインシードと欠片の差は、言わずともわかるだろう?」

「やはり、我々でないと太刀打ちは難しいと」

「そうなる」

「そうなれば、和泉を・・・・・しかしこちらに来るかどうか」

「来るさ、真琴は」

「その根拠は?」

「美紀さんの作った生徒会だ、潰されると考えれば真琴はこちらにつく」

「なるほど」

「実質4対4になるだろうな」

「4対4?あと一人は?」

「いずれわかる」

そう言って東郷は、ふっと笑い校舎を後にした。


「ほう、お前らやりあうのか」

奈々達は、翌日シスターマリアに会っていた。

「呼び出すからなんだと思えばそれか」

マリアは、煙草に火を付け奈々達の話を聞いていた。

「て、ことはメインをもつ頭同士になるのか」

「メイン?」

マリアのつぶやきに奈々は、聞いた。

「なんだ、知らなかったのか?」

「みんな同じと思ってたけど」

「生徒会の下っ端が持っているのはシードの欠片で能力は、お前らの半分以下だ。元は一つだったのだが何かの拍子で割れたりすると欠片になって数は増える。まあ大きさにもよるがね」

「つまり、100で10等分すると10分の1の能力で10人変身できるのか」

「簡単に言うと、そうなる」

「まったく、欠片になると直すのがめんどくさいってのに」

マリアは、説明しながら愚痴を言った。

「まあ一応、報告だけしたから」

奈々は、そう言って帰ろうとした時

「おい、おまえ」

マリアは、楓に声をかけた。

「はい?」

「おまえ、2段階変身できるのか?」

「え?できませんが」

楓は、きょとんとした顔で言った。

「何?どういうこと?」

奈々は、マリアに聞いた。

「あ、いや、気のせいだ聞き流してくれ」

「???」

3人の頭に?が付いた。

そして、奈々達はその場を後にした。

マリアは、一人その場で煙草を吸っていた。

「てっきり、隠しているのかと思ったが知らないのか」

煙草を吸い殻入れにしまい

「ということは、眠っていたのか。以前は見えていなかったが、シードがきっかけで起き始めているのかもしれないな。目覚めたら一番戦闘力が上がるが、さてどうなることやら」

そう言いながら、マリアは空を見上げた。


そして、それぞれの思いが交錯し決戦の日は、迫って行った。

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