第14話 1年前の悲劇

桜瀬は、一年前の話を始めた。

彩音美紀は、長い髪に背が高く笑顔で挨拶する姿に学園のアイドル的存在としてみんなに慕われていた。

美紀は、生徒会役員でもあった。

東郷静香は、1年生で生徒会に入り美紀の元で活動していた。

東郷も、美紀を尊敬し常にそばにいた。

桜瀬は、その前から美紀と友達であったためよく二人でお茶会をしていた。

そのことで、家に招待されることもあり優を知って、よく勉強を見ることもあった。

しかし、そのころの生徒会長は東郷静香の兄東郷雅臣であった。

雅臣は、表では生徒会長裏では不良達をまとめていた為学園の実権を握っていた。

そのため、学園内の恐喝や喫煙が影ながら許されていた。

教師たちも、学園理事長の息子というのもあり誰も口答えができなった状態であった。

雅臣は、以前から美紀を自分の物にしようと目を付けていた。

何度か、執拗に迫ったが美紀は断っていた。

次第に、雅臣の行動がエスカレートしはじめ美紀を強引に押し倒そうとした。

しかし、静香が直前で発見し未遂で終わった。

美紀は、静香に事情を話し静香は、雅臣にやめるように説得をしたが当然聞き入れなかった。

そして、今度は不良を複数連れて複数で美紀を襲ったが静香と如月が割って入り雅臣ともども撃退した。

そのあと静香は、このことを理事長に話し雅臣は生徒会を追われた。

このことに雅臣は、業を煮やし静香を潰しにかかった。

静香は、不良達に追われながらも如月とともに倒していったがその数日後の朝、美紀は学園の屋上から飛び降りた。

命に別状はなかったもの、のこん睡状態のまま目覚めることはなかった。

このことで静香は、美紀を守れなかった自分を責めた。

しかし、数日後どこからかエンジェルシードを手に入れた。

そして、今の四天王を集め雅臣に報復を始めた。

桜瀬も、シードを手に入れ止めようとしたが四人に倒され止めることができなかった。

そのあと、雅臣と静香の全面戦争になった。

最終的に、雅臣率いる不良グループは四人相手に全滅し雅臣は学園を追われた。

そのあと、静香は生徒会長になりそこから四天王とともに学園の腐敗を一掃し、今の秩序が出来上がった。

「とまあ、かなり簡略しましたが今に至るわけです」

桜瀬は、紅茶を飲み話を終えた。

「そんなことがあったのか」

晶は、お茶を飲みそう言った。

「・・・・」

楓は、無言であった。

「で、美紀さんは今どこに?」

奈々は、聞いた。

「今は、東郷グループが運営する総合病院にいますわ。入院費は静香さんがみてるということですわよ」

桜瀬は、答えた。

「そうか」

奈々はそう言ってお茶を飲み干し

「じゃあいくか」

そしてそのまま立ち上がった。

「どこへ?」

「その病院へ」

「何をするためにですか?」

「顔を見ようと思ってね」

「まあそう言う事なら」

「お花でも持っていきましょう」

そういうと、3人は立ち上がり

「お茶、ご馳走様でした」

奈々はそう言っていこうとした時

「ちょっと待ってください」

桜瀬は、止めた

「行くのはいいですが、くれぐれも静香さんと鉢合わせないように。彼女は、あの日から毎日お見舞いに行ってるようなので一触即発は避けてください」

桜瀬は、忠告をした。

「わかった」

奈々は、そう言って3人で教室を出た。

夕暮れ時奈々達3人は、総合病院に着いた。

「ここか」

奈々達は、病室の前に着いた。

病室には、彩音美紀と書かれていた。

「しつれいしまーす」

奈々は、そう言って静かに入った。

部屋には、ベッドが一つだけありそこには、彩音美紀が静かに眠っていた。

「この人が、美紀さん」

晶は、ぽつっと行った。

「きれいな方ですわね」

楓も、美紀を見て言った。

奈々は、花を置いて

「それじゃ、帰りますか」

そう言って、扉を開けようとした瞬間

ガラッ

扉が開きそこには、東郷静香が花を持っていた。

「あ・・・・」

奈々達は、硬直した。

暫くの沈黙の後東郷は、ため息をつき

「ここに来たと言う事は、1年前のことを知ったと言う事だな」

東郷は、花を置いて。

「場所を変えよう」

そう言って、東郷の後ろを奈々達はついて行った。

そして、学園内では桜瀬が一人教室で紅茶を飲んでいた。

そのとき扉が開きそこには、和泉真琴がいた。

「あら、どうされました?」

桜瀬は、平静に言った。

和泉は、立ったまま腕を組んで

「おまえ、あのことをしゃべったのか?」

「と、いいますと?」

「とぼけるな、あいつらにあのこと話したろ」

「でしたら、なんですか?」

桜瀬は、紅茶を飲んで和泉を見て

「彼女たちには、知る権利がありますそこまで関わったのですから。それにあなたも、ヒントを漏らしたでしょ?」

「・・・あの言葉を覚えていたのか」

「ええ、陣内さんがね」

「それに、知ったからどうこうなるなら結論として決戦となるでしょうね」

「だとして、おまえはどうする?」

「御影奈々の側に着きますわ」

「なんだと!?」

「今の私には、彼女達を引きこむことはできませんが、こちらから入ることはできますわよ」

「本気か」

「そう言うあなたはどうしますの?」

「それは・・」

そう言うと和泉は黙ってしまった。

「いい加減、決断しないと足もとすくわれますわよ」

桜瀬は、そう言って紅茶を飲み干しカップを置いた。

「そう言えば、あいつら病院に行ったのか」

和泉は、話を切り替えた

「ええ、いましがた行きましたわ」

「静香と鉢合わせになるんじゃないのか?」

「警告はしましたが、鉢合わせになるでしょうね」

桜瀬は、平静に答え

「さて、どうなるか楽しみですわ」

桜瀬は、窓から見える夕日を見ながら言った。


病院の屋上で、東郷静香と奈々達3人は向かい合っていた。

「誰から聞いた?」

東郷が、先に口を開いた。

「桜瀬さんからです」

晶は、答えた。

「なるほどな」

東郷は、納得していた。

「でも、それを考えたら彩音優に対して何故ああしたのかわかりません」

「それは、前にも言ったはずだが」

「だから余計に納得がいかないんです」

晶は、食い下がった。

「美紀さんの妹と知ってて利用して、あげくに用済みとばかりに刀を刺した・・・・・それが、許せない!」

「たまたま、頼んだ相手が優だっただけだ。そして彼女は、承諾したが気の弱さゆえに自分ではできないから、間接的に協力してもらいシード回収を手伝ってもらった用が済めば眠ってもらいそれで終わり。ただ、それだけだ」

東郷は、淡々と答えた。

「なんだと!」

晶は、声を荒げた。

「目的のためなら、手段は選ばんたとえ尊敬していた人の身内であっても」

「あんたって人は!」

晶が、前に出ようとしたが奈々が止めた。

「なにが、あなたをそこまで駆り立てるのですか?」

奈々が、聞いた。

「美紀さんが、飛び降りる前に私は彼女と話した。その顔は、いつもの笑顔で『もう大丈夫だよ』と言ってそのあと、私は窓から彼女の飛び降りた瞬間を見たんだよ。そのとき思った、なにも守れていなかった兄から彼女を守れなかった。そして私は、兄を倒すことに成功してそのあと、誓った二度と彼女のような思いをするものをなくすとそのためには、私は鬼にでも悪魔にでもなる。皆に嫌われようとも私が、この東郷学園にいるからにはそれは揺るがない」

東郷の目は、いつもより鋭く強い決意の目をしていた。

「それで、学園が統率ねぇ」

奈々は、つぶやいた。

「私は、そこまで難しいこと言われてもわかんないしどうにかできるかと言われたらできないだろうねぇ。ただ、はっきりいえるのはそんな堅苦しい学園生活はまっぴらごめんということかな」

「で、本音は?」

東郷が聞いた。

「経緯はどうあれ、彩音ちゃんを泣かせたあんたを絶対に許せない!」

奈々は、顔を近づけ統合を睨んだ。

「結局、行きつく先はそこか」

東郷は、ため息をついた。

「一つだけ聞く、あんたは今の状況を改める気はないの?」

「ない・・・絶対に」

そう言って暫く睨み合った後

「結論は、出たね」

そう言って奈々は、一歩下がり

「私の格言にこういう言葉がある『口で言ってもわかんない奴は、ぶっとばしてでもわからせる』今のあんたは、言うだけ無駄に思えるよ」

「そうか、だったらやるか」

そう言って東郷は、シードを構えた。

「今は、やらない」

奈々は、シードを構えなかった。

そして、東郷を指差し

「一週間後、あんたらと完全決着をつける。負けたほうがシードを渡すこれでどうだ?」

「・・・・いいだろう」

東郷は、シードを納め承諾した。

「それまで何もしないように全員に伝えておく、ただし、次は確実に仕留める覚悟してもらうぞ」

そう言って、東郷は去った。

そして3人だけが残った後

「ごめんなさい」

奈々は、二人に謝罪した。

「何をいまさら」

晶は、ため息をついた。

「奈々さんが、一番怒ってたのですね」

楓は、ふふっと笑いながら言った。

「で、どうします?」

奈々は、聞いた。

「もちろん、やるさ」

晶は、にっと笑いながら答えた。

「右に同じく」

楓も、微笑を浮かべ答えた。

「じゃあ、いつものメンツでがんばりますか」

そう言って三人は、以前の強気の顔に戻った。


そして、決戦へ展開は進んでいくのであった。

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