第7話 抗争の始まり

東郷静香の帰還から、数日後

「なんもないね」

奈々達は、机を囲みいつもの昼休みを過ごしていた。

「なんでだろ?」

晶も、疑問に思っていた。

「そろそろ、何か来そうと思うけどねぇ」

「来るって、何がですか?」

楓は、奈々に聞いた。

「例えば、生徒会が勧誘に来るとか」

奈々が、そう言ったとき教室の扉が開き

「御影奈々は、いるかな?」

奈々を、呼ぶ声が聞こえた。

「ほらね」

奈々が、予想通りとふふんと言ったが

「あ、ああああ」

「え、ええええ」

晶と楓は、顔が引きつっていた。

「何?どうしたの?」

奈々は、二人に聞いた。

「あああ、あの人」

二人は、指を指した。

「ん?」

奈々は、振り返るとそこには、生徒会長東郷静香が立っていた。

「ぶっ」

奈々は、『マジですか!?』という感じで驚きのあまり吹いた。

「そこにいたか」

東郷は、奈々を見た。

「放課後、話がある。茶道部まで、来てもらえるかな?」

「は、はい」

奈々は、あっさり了承した。

「では、またな」

そう言うと、東郷は去って行った。

しばらく三人は、予想外の出来事に硬直していた。

そして、放課後三人は、茶道部部室前にいた。

「もういるかな?」

奈々は、二人に聞いた。

「いるでしょ」

「覚悟決めて入りましょう」

そう言って三人は、扉を開けた。

そこには、東郷静香が正座をして待っていた。

「御足労かけてすまないな」

東郷は、三人に言った。

「いえいえ、とんでもない」

奈々は、へこへこしながら言った。

「おまえ、前回とえらい違うな」

「いや、だってさなんか貫禄あるというかなんというか」

奈々は、いつもと違い低姿勢であった。

「まあ三人共、座って話をしよう」

「は、はい」

東郷の言葉に、三人とも恐縮そうに言って座った。

そして、お茶が前に置かれしばしの沈黙の後、東郷が口を開き

「それで、話なんだが・・・」

(勧誘かな)

奈々は、予想していたが

「エンジェルシードを、こちらに渡してもらえるかな?」

「え?」

意外な答えだった。

「何故ですか?」

楓が、聞いた。

「君たちを、この戦闘に巻き込みたくないというのはだめかな?」

東郷は、答えた。

「勧誘と思いましたけど」

晶は、東郷に言った。

「それもあるだろうが、できるなら我々生徒会でこの抗争を終わらせようというのが、私の考えだ。そこで、君たちがシードを持っていると反逆同盟がしつこく勧誘すると思うのでね。シードを持ってないとなれば、向こうも君たちを勧誘してこないだろう。そうなれば、以前の平穏な生活に戻れるということだ」

東郷は、三人にそう言った。

「・・・・・」

三人は、黙って考えていた。

「どうかな?」

東郷は、再び聞いた。

少し間をおいて奈々は、お茶を一気に飲み干し。

「時間を、もらっていいですか?」

奈々は、答えた。

「どうしてかな?」

「今渡すと、私達の身が危ないと考えました」

「理由は?」

「もし、渡したとしてそのあと反逆同盟が勧誘に来てシードを生徒会に渡したと知れば、彼女らは『シードを、生徒会に売ったな』と、私達に危害を加えるのではないかとそう考えます。そのとき、シードを持たぬ私達がどのような目に遭うかは、わかりますよね」

奈々は、まっすぐ東郷を見た。

「たしかに、その点はありえる」

東郷は、納得した。

「それなら、警護をしてもらったら?」

「四六時中生徒会に付きまとわれたら、それこそ生徒会側だと睨まれるでしょうが」

「うっ、たしかに・・・」

「晶さんが、奈々さんに突っ込まれるなんて珍しいですわね」

楓は、にこやかに答えた。

「楓は、ほんとマイペースだな」

奈々は、ため息しながら言った。

「あら、私も一応考えてますわよ」

「で、楓ちゃんの答えは?」

「奈々さんの意見に賛成します」

「んじゃそういうことで、この話は保留でいいですか?」

奈々は、東郷に聞いた。

「わかった、それでいい。だが、君達は最終的にどちらにつくのかな?」

「それは、今後の展開で決めます」

奈々は、東郷を見て言った。

「そうか、わかった」

東郷は、それ以降何も言わず三人を見送り一人になり、しばらくして

「いるんだろ、舞」

その声に、背後から如月が現れた。

「何故、帰したのですか?」

「強奪するわけにもいくまい。私たちは、生徒会だぞ」

「ですが」

「言いたいことはわかる。彼女らは、後の脅威になるかもしれないということだろう。それで倒れるなら、私達がその程度だということだ」

その言葉の後、東郷の目が座り

「私は、絶対に負けない何があってもな」

その瞬間、今まで出さなかった重圧が背後にいる如月に伝わった。

「・・・・」

如月は、その重圧の前に言葉が出なかった。


そして、放課後

三人は、運上公園で練習していた。

「ふうっ、休憩しよ」

奈々は、一息ついて言った。

「そうだな」

「そうしましょう」

二人も、そう言って汗をぬぐいベンチに座り、そのまま考察を始めた。

「そういえば、二人は光弾系を斬ったり弾いたりしてましたが、見えているのですか?」

楓は、二人に聞いた。

「まあ、見えてるね」

「変身したら、身体能力が上がるから動体視力も上がってるという感じかな」

「そうなんですか」

「でも、大きさにもよるかな」

「というと?」

「威力が上がると、防ぎきれないし楓のように矢のタイプなら手で当てるのも難しい。例えると、理子の場合は卓球の玉ぐらいの大きさだったので、速いけど見えやすいし弾きやすかった。けど、楓の場合は矢を弾くというより躱す方が多くなるかな。」

晶は、前回の戦闘の見解を答えた。

「でも、弾いたら痛くないですか?」

「あれは、手に神力でバリアを張ってたのでなんともない」

「なるほど」

楓は、納得した。

「私の場合は、バスケットボールの倍の大きさだったけど、弾くとなると無理と思ったので、ゲーム風に言うと神力を剣に与えて切れ味を上げたといえばいいかな」

「へー」

「でも、二度は通じないと思うなぁ」

奈々は、そう言ってスポーツドリンクを一口飲んだ。

「まあ光弾系は、大きさで威力が上がるけど回避されやすいと思えばいいかな」

「私の矢も、大きくすると威力は上がるということですね」

「まあそうなる」

「でもその分、神力を消費するからここぞでないと、使わないほうがいいんじゃないかな」

「そうですね」

「いわゆる、必殺技ですよ」

奈々が、にやっと言った。

「まあ、そうだね」

「いいですね、必殺技」

楓も、笑いながら言った。

そんな会話を、してるとき

「よう、久しぶりだな」

サングラスかけた、シスターが声をかけてきた。

「あ、やさぐれシスター」

奈々が、指差して言った。

「だから、それやめろ」

シスターは、嫌そうな顔をして言った。

「お久しぶりです。マリアさん」

声をかけてきたのは、シスターマリアであった。

「あれから、シードのことはわかったか?」

「まあ、一応」

奈々達は、シードのことを説明した。

「なるほどね、生徒会か」

マリアは、煙草を吸いながら話を聞いていた。

「で、まあ近々学園内が大荒れになりそうな感じで」

奈々が、そう言うと

「は?とっくにはじまってるぞ?」

マリアが、呆れて言った。

「はい?」

奈々の頭に、?がついていた。

「おまえら、結界のこと忘れてるな」

マリアが、そう言って少しして

「・・・・・あっ」

奈々が、気づいた

「表では、何もなく結界内でやりあってるのか」

「そういえば、最近変身して結界張ってなかったな」

「たしかに」

三人は、苦笑いしていた。

「おまえらなぁ」

マリアが、更に呆れて言った。

「でも、なんで知ってるわけ?」

晶は、マリアに聞いた。

「私が、天使だってのも忘れてるな。結界は、張れるし入るのも苦労しないんだよ」

「で、そこで何してるわけ?」

「暇つぶしに観戦」

「・・・ほんと、呑気だね」

「最近、戦闘が多いからなんかあったのかと思ったので、おまえらのとこに来たわけだ」

「なるほどね」

そして、マリアは煙草を吸い殻入れに片づけ

「まあ、大方わかった。また何かわかったら、連絡頼むわ」

そう言うと、マリアは去って行った。

「でも、今の会話で」

「抗争は、すでに始まっていたということですね」

「てことは、そろそろこっちにも来ると、思った方がいいかな」

三人は、そのまま今後のことを話し合った。

そして翌日の放課後

屋上に、奈々達三人は集まっていた。

「さてと」

奈々達は、シードを持って構えた。

「変身」

奈々達は、変身して楓が結界を張りそして、屋上から下を見た。

そこには、生徒会と反逆同盟が対峙していた。

「ほんとだ」

奈々達は、見つからないように顔だけ出して様子を見ていた。

「ここからじゃ、聞こえないか」

「あまり近寄ると、危険ですし」

「しばらく様子見だね」

そう言って、三人はそのあと黙って様子を見ていた。

その下では、生徒会と反逆同盟が一触即発の状態であった。

「お久しぶりね、磯部姉妹」

反逆同盟の先頭に、桜瀬姫香が制服状態で腕を組んで立っていた。

「ほんと、久しぶり」

磯部理沙が、生徒会の先頭にいた。

「あら、理子ちゃん。家で怯えてたんじゃないの?」

桜瀬は、にやけながら言った。

「うるせー。撃つぞ」

理子は、銃を桜瀬に向けた。

「どうしても、やるのか?」

理恵も復帰し、剣を持って反逆同盟と対峙していた。

「もちろん、そのつもりです」

そう言って桜瀬は、シードを構え。

「変身」

桜瀬の体が光に包まれ、黒い衣装に変わった。

「さあ、始めましょう。反逆開始です」

そう言いうと、桜瀬は左手をかざし杖が現れた。

「やるぞ、総員抜刀!」

理沙の声に、生徒会のメンバー全員が一斉に剣を抜いた。

「うおおおお!!」

「やあああああ!!」

生徒会と、反逆同盟が同時に動きだし戦闘が始まる。


こののち、奈々達も巻き込まれ大乱闘のはじまりであった。

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