第5話 安息の人新しい友達

夜、御影家道場

奈々と佳乃は、乱取りをしていた。

互いに木刀を持ち、打ち合っていた。剣道のような動きではなく、互いに防具はなく実戦形式での稽古だった。

カンッカンッカカン!

木刀の当たる音が、道場内に響く。

「それそれー」

奈々は、佳乃に連撃を与えるが

「んっ」

佳乃は、表情変えずに攻撃を捌いていた。

連撃を止め下がった奈々は、下段に構え

「御影流、円月斬」

一気に振り上げたが、佳乃は受けとめ力を逃がすように、横に動きながら縦に払い上げてから

ボカッ

そのまま、奈々の頭を叩いた。

「あいた―っ」

奈々は、頭を押さえ蹲った。

「あまいな」

佳乃は、奈々に言った。

「円月斬は、躱されたら隙が大きい。無暗に使うものではない。」

「んー、やっぱそうかー」

奈々は、胡坐をかいていた。

佳乃は、木刀を納め

「しかし、最近強くなってるな」

「ほんとに?」

「ちょっとだけな」

「ちょっとか・・・・・」

佳乃の返答に、奈々はしょんぼりしてた。

「学校で、なにかしてるのか?」

佳乃は、奈々に聞いた

「え?・・・・なにもないよ?」

奈々は、少し焦った。

「んーーー?」

佳乃は、細目で奈々を見た。

「おまえ、まさか・・・」

「ちっ、ちがうって最近晶ちゃんや楓ちゃんと、放課後練習してるんだよ」

「なら、いいんだが」

佳乃は、晶と楓を知っているので納得し奈々は、ほっとした。

御影家の教えで

「剣術を、学んだ以上私利私欲私闘のために剣を振るうべからず」

と、父の御影征四郎から言われている。

実際奈々は、自分からは手を出さないようにしてはいるが

「守る為の剣だから、必要でない限り使わないよ」

「お前の場合は、かっとなることが多いだろう?特に、友達になにかあったときは、特に見境なくなって暴れるんだからな」

「うーん、そこは否定しない」

奈々は、胡坐掻いてうーんとうなったが

「まあ、友達思いなのはいいことだ」

佳乃は、ふっと笑い

「今日は、ここまでにしよう勉強もあるからな」

そう言って佳乃は、先に道場を出た。

奈々は、しばらく道場に残り

「さて、今後どうするかなぁ」

明日以降のことを、考えていた。


空手部の騒動から、1週間が過ぎた。

晶も、打撲などのダメージがあったが回復した。

「おっは・・・・・よー」

晶が、教室に入った瞬間動きが止まった。何故か自分の机の上に、花瓶が置かれていた。

「・・・・奈々」

晶は、真っ先に奈々に聞いた。

「なに?」

「おまえだろ、こんなことしたの」

「なんの、こと?」

「とぼけるな、お前以外こんなことしないだろ」

「知らないよ、菊の花置いてリアクション見てたなんて」

「やっぱてめーじゃねーか」

晶は、奈々にスリーパーホールドをかけた。

「ぎぶぎぶぎぶ」

「縁起悪いことしやがって」

そう言いながら、晶は机の花瓶を教室の後ろに置いた。

「晶さん、おはようございます」

暫くして楓が、教室に入ってきた。

「おはよー、楓」

「晶さん、体の方はもういいんですか?」

「うん、もう元気さ」

そう言って、晶はガッツポーズをして元気な姿をアピールした。

そして、授業が終わり放課後。

三人は、屋上で話をしていた。

「和泉さんを、倒したのか!?」

晶は、驚愕した。

「いや、まあ偶然だと思うけど」

奈々は、頬をぽりぽり掻いて答えた。

「とりあえず、あれからまた沈黙してますね」

「うん、たしかに」

和泉との戦闘から一週間、学園に大きな動きはなかった。

前と同様、いつもの日常が戻っていた。

「磯部姉妹が、また逆襲に来ると思ったけどその気配もないのよねぇ」

奈々は、首をかしげて腕を組んで話した。

「そうですわねぇ」

「また、なにかの前兆かなぁ」

晶も楓も、首をかしげて答えた。

三人が、そんな会話していたとき屋上の扉が開いた。

「晶ちゃん」

そこにいたのは、彩音優であった。

「晶ちゃん、元気になったんだね・・・よかった」

彩音は、涙を流して喜んでいた。

「心配かけてごめんね。」

晶は、彩音の頭を撫でた。

「うん、うん」

彩音は、更に涙がこぼれた。

「その人は?」

楓は、晶に聞いた。

「ああ、前に言った私の友達」

「彩音優と、言います」

彩音は、涙をぬぐい一礼した。

「ん?どっかでみたような」

奈々は、思い出そうとしていた。

「あの、あのとき晶ちゃんを運んでいたときに・・・あのぉ」

彩音は、説明しようとしたが奈々は、胸を凝視していた。

「・・・・・あっ、あの時の空手部員!」

「どこ見て、思い出した」

晶は、ジト目で言った。

「はじめまして、神崎楓と言います」

楓は、そう言うと彩音に一礼した。

「はっ、はい、はじめまして」

彩音も、一礼した。

「私は、御影奈々よろしくな」

モニュッ

そう言いながら奈々は、彩音の胸をもんだ。

「ひにゃぁぁぁぁ!?」

彩音は、胸を隠しながら奈々から離れた。

「な、なにを」

「ふむ、93とみた」

「なんでわかるんですか!?」

「乳道を極めし者は、揉むだけでサイズがわかるのだ」

「だからって」

「さあ、私にすべてを見せなさい」

そう言って奈々は、両手をわきわきしながら、彩音に迫っていった。

「ひにゃあぁぁぁぁ」

「やめんか」

ゴンッ!

触る直前で、晶が奈々を叩いた。

「いたい」

「人の友達に、いかがわしいことするな」

「あの乳は、けしからん誠にけしからん」

「相変わらず、胸に嫉妬心あるよな」

奈々は、自分の胸がない為胸の大きい人が気に入らないらしく、発作的にエロオヤジのような行為をすることが、たまにある。

「とりあえず、よろしく」

そう言って奈々は、彩音と握手した。

「は、はい」

彩音は、また揉まれるのかと思って顔が、引きつっていた。

「まあこいつは、変な奴だけど友達を大事にするやつだから、よろしく頼むよ」

「変な奴というのは、余計だよ」

「胸揉んどいて、何を言う」

「知らないなぁ」

「おまえなぁ」

奈々と晶の会話を、聞いていて彩音はくすっと笑った。

「二人とも、仲いいんですね」

「腐れ縁だよ」

「私も、腐れ縁ですわ」

楓も、ニコニコ笑いながら答えた。

こうして、彩音も混ざり四人で話をした。


翌日も、廊下で四人は会話していた。

彩音も、徐々にだが三人と笑って話せるようになった。

そうしてると、廊下から数人の集団が歩いてきた。

「ん?あれは?」

「あれは、風紀委員ですね」

奈々の問いに、彩音は答えた。

「へー、いたんだそんなの」

「いましたよ」

「今まで教室で話してたから、気づいてなかった」

「登校時、校門にもいますよ」

「まじで?」

「・・・・」

奈々の返答に、彩音は呆れて何も言えなかった。

「風紀委員は、月一回校内を巡回して違反者を、取り締まっているんですよ」

「ふーん」

彩音は、気を取り直し説明したが

「あれ?あの服、どこかでみたような・・・」

「制服じゃ、ないですわね」

晶と楓は、風紀委員の服を見て疑問に思った。

「あれは、生徒会の服装です。風紀委員も生徒会の一員なんですよ」

三人が、見覚えある服装は磯部姉妹の変身時の格好と類似していた。

「な、なんだってー!!!」

「な、なんですか??」

彩音は、三人が急に驚くのでびっくりした。

「あ、いや・・・・こっちの話」

「????」

彩音の頭には、?が付いていた。

三人は、彩音から少し離れてひそひそ話を始めた。

(と、いうことは)

(敵は、生徒会?)

(予想どうりですが、どうしますか?)

彩音には、シードの話はせず三人の中で、内緒ということにしている。

「とりあえず、情報がいるね」

「と言っても誰に聞くの?」

「・・・・やっぱあの人かなぁ」

そして、その日の放課後彩音を省く奈々達三人は、和泉の元へ向かうのであった。


そして、昼休み

中庭のベンチに座り三人は、和泉と向き合い話していた。

「というか、今まで気づいてない時点で、おかしいんだけど」

和泉は、奈々達三人に言った。

「あはは・・・」

三人は、苦笑いするしかなかった。

「まあ、おまえらは一年だ知らない部分もなくはないか」

和泉は、そう言って話を始めた。

「お前らを狙うのは、生徒会だ私は所属してないが、シードを持つ者としてなにかあれば動くようにしている」

「じゃあ、理子が晶ちゃんを狙ったのはあなたの仕業?」

「いや、それは理子の独断だ。私は、何か起きるまでは動くなという指示だったよ」

「なるほど」

「で、ああなったので動く口実ができたわけだ」

「そういうこと」

「でも、和泉さんが負けるなんて、今でもショックです」

晶は、頭を抱えてそう言った。

「まあ、私だって百戦して百勝とはいかないさ」

「そうだけど」

「それで、話は変わりますが」

楓は、話を切り替えた。

「あれから、生徒会が私たちを狙わないのはなぜです?」

「学園の秩序が、乱れないからだろうね」

「秩序?」

「要するに、学園が荒れる状態が起きないなら動かない。今の平穏を、維持できれば動くことはないのさ」

「ふーん」

「でも、私が負けたことで内部では大騒ぎのようだが」

そう言って和泉は、缶コーヒーを一口飲んで一言

「荒れてしまうと、また『あの惨劇』を繰り返すことになるからな」

「あの惨劇?」

奈々は、聞いたが

「あ、いや今のは忘れてくれ」

そう言って和泉は、話を濁し内容を切り替えた。

「とにかく、今は何もしなくていいそれに細かい情報が欲しいなら、彩音に聞くといい」

「彩音にですか?」

「一応生徒会の図書委員だ、内情は少なくとも聞けるだろうが、変な尋問するなよ」

「変なって、なんですか」

「たとえば、胸を揉むとか」

和泉のその言葉に、晶と楓は奈々の方を向いた。

「こっち向くと思ったよ」

奈々は、への字口で答えた。

「まあ、私から言えるのはここまでかな」

そう言って和泉は、立ち上がった。

「和泉さん」

晶は、和泉を引き止めた

「あの、すみません・・・部活の方は・・・」

「ああ、今は気まずいだろう辞める辞めないは落ち着いてから決めるといい。それまで、保留にしとくよ」

そう言って、和泉は去った。

「そんじゃ、昼休みも終わるころだし戻りますか」

「そうだね」

奈々達も、教室に戻ることにした。

「とにかく放課後は、あれだね」

「ああ、彩音にだね」

「その乳は、どうやって大きくなったのかを、赤裸々に告白させねば」

「いい加減にしろ」

ボグッシャー

奈々は、晶の正拳をもろに受けふっとんだ。


そして、放課後奈々たちは彩音を喫茶店に誘った。

「晶ちゃん楓ちゃん、いらっしゃーい」

喫茶店では、御影涼子がいた。

「涼子さん、こんにちわ」

晶は、涼子に挨拶し楓は、一礼した。

「お母さん、コーヒー四つお願い」

奈々は、そう言ってテーブルに向かおうとしたが。

「こらっ、ここではお母さん禁止」

涼子は、一言注意した。

「じゃあ、おばさんコーヒ・・・・ぐおっ」

奈々が、言い換えようとした瞬間涼子が、顔面を掴んだ。

「お・ば・さ・ん?」

ギリギリギリギリ

涼子は、笑顔であったが顔を掴んだ手には、力が入っていた。

「ご、ご、ごめんなさい、涼子お姉様」

奈々が、言い直すと涼子は、ぱっと手を離し

「わかれば、よろしい」

そう言って、にこやかにカウンターへ向かった。

「あー、ひどい目にあった」

奈々は、こめかみを摩りながら言った。

「おまえの、言い方が悪いからだ」

晶はそう言った後、全員席に座った。

「ここって、奈々ちゃんのお母さんが働いてるんですか?」

彩音は、聞いた。

「ああ、元々お爺ちゃんの店だったのわかりやすく言うと、お母さんのお父さんがやってた店。それを、お母さんが引き継いでるの。」

「へー、そうなんですね」

「たまに、うちの家族も手伝いしてるんだよ」

「私達も、たまに奈々ちゃんに誘われてここに来るの」

「いいですね」

そうして、会話してるうちに

「はーい、コーヒーおまたせ」

涼子が、コーヒーを持ってきた。

「うちのコーヒーは、すごく美味しいんだ。おかあさんの煎れるコーヒーは、世界一なんだよ」

奈々は、自慢げ胸を張って言った。

「もう、奈々ちゃんったらそんなに褒めても、何も出ないわよ」

バーン!

涼子は、照れながらお盆で、奈々の後頭部にフルスイングし奈々は、そのままテーブルに突っ伏した。

「じゃあ、ごゆっくりどうぞー」

涼子は、そう言って厨房に入って行った。

「大丈夫ですか?」

彩音は、奈々に聞いた。

「ああ、大丈夫だよいつもの照れ隠しだから」

奈々は、後頭部を抑えながら言った。

「まあまずは、コーヒーを飲んでよ」

そう言って4人は、コーヒーを一口啜る。

「これは・・・・美味しいです」

「でしょー」

「ほんと、涼子さんの煎れるコーヒーは美味しいね」

「そうですね」

みんな、納得する味であった。

「んで、彩音ちゃんを呼んだのにはわけがある」

二口飲んで奈々が、話を切り出した。

「はい、なんでしょう」

彩音は、ぴっと背を伸ばし聞いた。

「そのおっぱい、一晩目一杯揉ませてもらえないだろうか」

「いい加減にしろ」

ボカッ

晶は、奈々を殴った。

「雰囲気を、和ますための冗談なのに」

「そんな冗談は、いらん」

「それで、話というのは?」

彩音の問いに、楓が答えた。

「生徒会のことを、聞きたいのです」

「生徒会ですか?」

「そうそう、彩音は図書委員やってるって聞いたんで」

「たしかに、やってますけど」

「風紀委員とか、生徒会の内情をわかるかぎりで教えてほしい」

「はぁ」

彩音は、わかる限りのことを教えた。

生徒会は、各役員がいるが部活も合わせてやっている人が多く風紀委員は、剣道部を筆頭に、柔道部、空手部の部員が集まり30人ぐらいいる。他にも、美化委員や体育委員もいるが戦闘に特化してる組織は、風紀委員がほとんどでその中で、実力あるものが執行委員としている。図書委員も組織としては末端に位置するので上の詳細までは、彩音も詳しくは知らない。そして、その一番上が生徒総会で生徒会長、副会長がナンバー1,2執行委員長が、ナンバー3そして、和泉がナンバー4で四天王と呼ばれている。

他にも色々あるようだが

「私が、わかるのはこれぐらいです」

彩音は、申し訳なさそうに答えた。

「いや、十分だよ」

晶は、彩音に言った。

「でも、なんでそんなこと聞くんです?」

「まあ、色々とあってね」

「?」

彩音の頭に?が付いていたが、深くは聞かなかった。

「まあそれよりも、コーヒー冷めるから飲もう」

「そうですね」

「じゃあ、ついでにケーキも頼むか」

奈々が、そう言おうとした時

「はーい、ケーキどうぞー」

涼子が、ケーキを持ってきた。

「あれ?涼子さん、まだ頼んでないですよ?」

晶が、涼子に聞いた。

「これは、奈々がお世話になってるからサービスよ」

涼子は、そう言ってウインクした。

「ありがとうございます」

「コーヒーの、おかわりは?」

「あ、おねがいします」

そうして、新しいコーヒーが来た時に彩音は一言

「あ、でも私は」

「・・・なに?ケーキ苦手?」

「いや、そうじゃなくて私はまだ知り合って間もないのに・・・」

彩音が言った瞬間、奈々が言葉を遮り

「何、言ってるのさ!」

「え?」

「彩音ちゃんとは、もう友達だよ!」

「そうですわね」

楓も、彩音に答えた。

晶も、彩音の肩に手を置いてにっこり笑った。

「ほんとに?」

彩音は、三人に聞いた

「もちろん」

三人は、笑顔で彩音に言った。

彩音は、その言葉で感極まり涙が溢れた。

「わ、私、今まで友達いなくてそれで、あ、晶ちゃんと友達になれて、そ、それが嬉しくて、それで、それで・・・・・うっうっ」

泣いている彩音に、奈々は手を差しだし

「ということで、よろしくね彩音ちゃん」

奈々は、笑顔で言った。

「うん、うん」

彩音も泣きながら、笑顔で奈々の手を握った。

その日は、日が暮れるまで四人で話をした。


数日後、事態は抗争に進展する。

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