第4話 四天王の実力

ダンッ!

磯部姉妹の四女理子は、机を力強く叩いた。

「なぜ、あいつらに攻撃をしかけないんですか!」

目の前の女は、腕を組んだまま座って答えた。

「今は、まだ必要がないからだ」

「しかし我々は、あいつらにやられた恨みがあります」

理子は、食い下がった。

「学園の統率が、乱れない限り今はそのままにしろということだ」

「誰がそのようなことを」

「御前だ」

「・・・・・」

その一言に、理子は驚きながらも口を閉ざした。

他の3人も立ち会っていたが、その名前の前に下がった。

「とにかく今は、手を出すな以上だ」

そういうと、女は立ち上がり教室を出た。

磯部姉妹は、その場から動かなかった。

「お姉たちも、何か言いなよ」

理子は、理沙、理緒、理恵の3人に言った。

しかし、3人の答えは

「御前の、命令ならばな・・・」

「動くわけには、いかない」

「そういうことだ、堪えろ理子」

しかし、この答えに理子は納得しなかった。

「もういい!」

そういうと、理子は一人教室を出て行った。

「理子!」

「理緒、止める必要はない」

「でも」

「あいつ一人で仕掛けても、学園に何ら影響はない。しかし、なにをするかわからないから一応止めるが、それ以上に学園全体の統率が乱れたらまたあれが、起きることにもなる」

「和泉さんを、出させるわけにもいかないし」

「とにかく今は、学園内の秩序と統率の維持を」

「何も、なければいいけど」

3人が、話してるところに後ろから声がかかった

「何の話を、してるんだい?」

「和泉さん!」

廊下の窓から、ポニーテールの女が肘を立てて聞いていた。

彼女が、生徒会が言っていた四天王の一人和泉真琴いずみ まことであった。

「えらく物騒なことが、はじまりそうな会話だな」

「いえ、そういうわけでは」

理沙が、弁明しようとしたが

「まあいいさ。いざとなったら、私が止めるそれで解決だ」

「はぁ」

3人は、不安まじりに答えた。

そう言って和泉は、去ろうとしたとき

「なあ、あいつら強いのか?」

3人に、奈々たちのことを聞いた。

「強いです、間違いなく」

理恵は、答えた。

「そうか、わかった」

そう言って和泉は、去っていた。


「ぬうーん」

奈々は、机で考え事をしていた。

「なんかそれ、定番になってるな」

「流行らないと、思いますよ」

晶と楓は、奈々に言った。

「うるちゃい!それよりも、あの警告が気になったんだよ」

「まあ、たしかに」

「でも、動きがない以上大丈夫と思いますが」

「それが、怖いの」

奈々は、楓に言った。

「油断したときに、何かが起こる。いつでも戦闘できるように、構えてた方がいいと私は、思うんだよ」

「わ、奈々がまともなこと言ってる」

「明日は、嵐ですわね」

「・・・・あんたたちが、普段私をどう見てるかがよくわかったよ」

二人の言葉に、奈々はいらっとした。

「とにかく、部活のときは一人になりやすいから当面休め」

奈々は、二人に進言したが

「それは、困りますわ」

「さすがに、部活中はないだろ」

二人は、部活を休む気はなかった。

「二人とも、ちょっとは警戒心もとうよー」

奈々は、呆れながら言った。

「そのときは、素早く連絡すればなんとかなるって」

「危険であれば、すぐに集合できる場所を決めておけば、大丈夫と思いますよ」

「まあ、それぐらいは・・・」

二人の無警戒心に、やれやれという感じで奈々は答えた。

奈々自身は、敵が学園内にいる以上いつ背後から襲われるという警戒心があり常に、気を配っていた。

それは、御影流の鍛錬の一つでもあった。

父である御影征四郎は、奈々と佳乃にこう言っていた。

「いついかなる時でも、警戒心を怠らずどんな状況でも、戦闘できる心構えを持つこと」

そこで、奈々は質問した。

「じゃあ、お父さんがご飯食べてる最中でも、後ろから攻撃してもいいの?」

「できるものなら、やってみるといいさ」

征四郎は、自信満々に言った。

その夜、奈々は実行に移した。

家族全員で、夜食を取ったとき奈々は真っ先に食べ終わり部屋へ戻ろうとしたが、まだ食事中であった征四郎に対し丸めた新聞紙で、背後から叩こうとした。

「すきありー」

奈々は、新聞紙を振り下ろしたが征四郎は、後ろを向いたまま躱し新聞紙は、テーブルに当たり味噌汁が飛んだ。

「えーーーーーっ!?」

奈々は、驚きそのあと征四郎は、振り返り

「わかったか、奈々」

そう言って、にやりと笑った。

「わかったよ、お父さん」

奈々は、うんうんとうなづきながら答えたが

「奈々ちゃ~ん?」

背後から、さっきまで正面にいたはずの御影涼子が立っていた。しかも、黒いオーラが漂っていた。

「は、はいお母様」

奈々は、丁寧語で言いながら恐る恐る振り返った。

涼子の頭には、さっき飛んだ味噌汁が頭にかかっていた。

「まだご飯食べてるお父さんに、そんなことしていいと思ってるのかな~?。お行儀悪いと、思ってるかな~?」

涼子は、笑みを浮かべていたが、明らかに心の中では怒っていた。

「い、いえお母様これには、色々とわけが・・・」

奈々が、弁解しようとしたが

「一週間、おやつ抜きの刑にします」

涼子が、あっさり答えた。

「ごめんなさああああぁぁぁぁい!!」

御影家に、奈々の謝罪という名の断末魔が響いた。

「すまんなぁ、奈々」

征四郎は、奈々に謝ったが

「お父さんも、半月お小遣い抜きの刑です」

「ごめんなさあああぁぁぁい」

征四郎も、同じ断末魔を上げた。

それを、毎日繰り返してるうちに後ろを向いていても、ある程度気配でわかるようになった。

姉の佳乃も、その能力は身についていた。奈々が、幼少のころトイレに行こうとするとき佳乃が、気配を察知して奈々の部屋の前にいて連れて行くことがあった。

その影響もあってか奈々は、磯部姉妹が来た時もすぐ察知したのであった。とはいっても、察知する範囲は半径数メートルで、万能というわけではなかった。しかし、晶と楓には警戒心が少ない。起きるかもしれないと思っていても、大丈夫だろうという安全という方向に向いていた。結局折り合いがつかず、放課後晶と楓は部活に向かった。


晶は、女子空手道部に所属していた。

高校1年生であるが、家が近くの公会堂で空手道場を開いているので、幼少から空手を始めて小学6年で黒帯を取っていた。そして、その実力を認められ1年にしてレギュラーを獲得していた。

放課後は、空手部が使う修道場で練習をしていた。

しばらくして、主将が入ってきた。

「押忍!!!」

部員全員一斉に、主将に挨拶をした。

「お疲れ様です、和泉主将!」

晶は、主将の元に向かった。

女子空手部の主将は、和泉真琴であった。

「晶か、がんばってるな」

和泉は、晶を見て一言声をかけた。

「はいっ、レギュラーにして頂いた主将の為にがんばります。」

晶は、目をキラキラして言った。

「おいおい、私の為じゃなく、みんなの為だろ」

和泉は、あははと笑って言った。

「それじゃ、彩音の練習に付き合います」

そういうと晶は、和泉に一礼し練習に戻った。

「じゃあ、はじめようか」

「は、はいっ、おおおお願いします」

晶が、練習に付き合う相手は、彩音優あやねゆう晶と同じ1年生である。

気が弱い性格を、直したい為空手部に入ったが、余計に委縮して孤立していたところに晶が来て

「あたしと、一緒に練習しよっか」

その日から、晶は彩音に空手を教えていた。

基礎練習や、柔軟体操に毎回晶は付き合っていた。

「いつもごめんね、晶ちゃん」

「なにが?」

「私みたいな落ちこぼれに、付き合ってもらって」

彩音は、申し訳なさそうに言ったが。

「そんなことない!」

晶は、はっきり言った。

「彩音ちゃんは、落ちこぼれじゃない努力すれば必ず報われる。私は、彩音ちゃんを見捨てない。だから、がんばろう」

そう言って晶は、構えた。

「う、うん・・・ありがとう晶ちゃん」

彩音も、半泣きながらも笑顔で構え組み手を始めた。

そして、練習が終わり部室では2年生が集まっていた。

「あいつ、どう思う?」

「晶のことか?」

「最近、レギュラーに選ばれていい気になってないか?」

「主将とも仲いいし」

「媚び売って、手に入れたんじゃないのか?」

「どっちにしても、気に入らいなぁ」

2年の数名が、晶のことで話し合っていた。

話しているメンバーは、レギュラーから外れた者達であった。

実力が伴わないのもあるが、1年生にレギュラーを取られたことに、不満が募っていた。

「いっぺんあいつ、しめてやろうぜ?」

「でも、そんなこと主将に見つかったらやばくない?」

そんな話を、始めたとき部室のドアが開いた。

「陣内やるんなら、手伝おうか?」

そこにいたのは、磯部理子であった。

「和泉が、いないときに狙えばいいそれだけだろ?」

「でも、どうやって」

「お膳立ては、してやるよあとは全員でやってまえばいいんだ」

「なんで、磯部がそこまでやるんだ?」

「あいつには、恨みがあるんだ。動けなくなるまで、ぼっこぼこにしないと気が済まないんだよ」

理子の顔は、憎しみにあふれていた。

そして、女子空手部2年数名と磯部理子は晶を潰す為に、作戦を練り始めた。

そして翌日、作戦は実行される。

放課後、いつもどおり晶は部活に現れたが

「今日は、呼び出しがあるから私は抜けるが、各自練習しておくように」

和泉は、そういうと練習から外れた。

「なんだろ?」

晶は、気になりつつもいつもどおり彩音の練習に、付き合おうとする。

「じゃあ、今日もよろしく」

「よ、よろしくお願いします」

そして、二人で練習をして2時間後練習を終え上級生は、修道場を出て更衣室へ行った。

下級生は、床の掃除をしてから片づけてから更衣室へ向かう

「じゃあ、いこうか」

「うん」

晶と、彩音は下級生も出た後最後に出ようとしたが

「おい、陣内」

そのとき後ろから、声をかけられた。

「なんでしょうか、先輩方」

「お前は居残りだ、あたしたちが相手してやる」

昨日集まっていた2年生部員達が、晶を囲み道場の中に戻した。

「今から、組手ですか?」

晶が、周りを見て聞いた瞬間、背中になにかが当たり声が聞こえた。

「そうだよ」

ドンッ!!

「がはっ・・・!?」

音とともに、背中から脇腹にかけて衝撃と激痛が伝わってきた。

「ぐっううううぅぅぅ」

そのまま、前のめりに倒れて脇腹を、抑え痛みのあまり顔が歪んでいた。

「晶ちゃん!」

彩音は、倒れた晶を見て目の前で起きた事に、恐怖のあまり口を両手でふさぎ足が震え動けずにいた。

「これで、やりやすいだろ?」

「お、おまえ・・・」

晶が見上げた先には、銃を構えた磯部理子が立っていた。

「おまえ、今撃ったよな」

「死んじまうんじゃないのか?」

2年生部員も、理子が銃で撃った為さすがに焦った。

「大丈夫、痛いだけだから。その証拠に、血がほとんど出てないだろ」

晶の背中は、道着に穴が開いているが、血はにじむ程度しか出ていなかった。

「ぬうううっ」

晶は、痛みをこらえながらゆっくり立ち上がった。

「これ、先輩の策略ですか?」

晶は、2年生部員をにらんだ。

「うっ」

その形相に、部員達はたじろいだが

「だったら、なんだよ」

理子は、にやけながら答えた。

「あたしが、けしかけたんだよ。あんたを潰す為にね」

「なんだと」

「あんたのせいで、この数日こん睡状態で戻ったころには、あたしら姉妹の立場がなくなってお姉たちは・・・・・だから、あんた達を潰さなきゃ気が済まないんだよ!」

理子は、恨みながらに声を荒げた。

「お前らも、さっさとやれよお膳立てはしてやったんだぞ」

「で、でも・・・」

「病院送りにしちまえば、こいつは喋れない。こっちで適当にごまかしゃいいんだ」

「しかし・・・」

「いいからやれーーー!!」

理子は、銃口を向け大声で叫んだ。

「う・・・・・うああああ!!!」

2年生部員たちは、撃たれると思い込み反射的に動いてしまい、全員で晶に襲いかかった。

「くっ」

晶は、痛みを堪え構えようとしたが

「ついでに、教えてやる!!」

ドンッ!

理子は、そう言うと晶の左足を撃ちぬいた。

「ぐあああっ」

痛みとともに晶は、膝をついた。

「変身した武器で、生身の人間に攻撃したら痛みが、変身したときより数倍に伝わるんだ。死ぬほど痛い激痛を伴い、一発で気絶するくらいなんだがな」

「うううっ」

晶は、痛みを堪えるのに精いっぱいで、手が出せなかった。

その瞬間

「うおああああ」

ドカッボカッドゴッバキャッ

2年生部員は、一斉に殴りかかり晶は袋叩きにされた。

「あっあああ・・・」

それを、見てた彩音は何もできず、立ちすくんでいたが

「・・・・誰か、誰か呼ばないと」

彩音は、道場を飛び出したが

「ふんっ」

理子は、あえて見逃した。

御影か、神崎が来たら好都合で生身に、撃ち込んでやろうと思っていた。

「どうしよう、どうしよう・・・」

彩音は、外に出たものの声をかけるにしても、気が弱いため自分から言いにくく気が動転して、どうしていいかもわからず彩音は、校内をひたすら走った。そして、階段を上がりいつのまにか屋上にたどり着いた。

屋上のドアを、バンッと開いた先に御影奈々が、木刀を持って素振りをしていた。

「はぁ、はぁ」

「ん?」

奈々は、振り返ると汗だくになっている彩音が、息を切らしていた。

「どうしたの?あんた、空手部員の人だよね?」

奈々は、近寄ろうとした時、彩音は顔を上げ

「お願い、助けて!晶ちゃんが、晶ちゃんが・・・うあぁぁぁぁん」

彩音は、涙ながらに奈々に言ったあと、泣き崩れてしまった。

「!?」

奈々は、その言葉を聞いた瞬間、校舎を走り抜けていった。

ドンッ!、ドンッ!、ドンッ!

階段を、駆け下りず一気に各階を飛び下り、一階まで降りた後また走り抜けて行った。

バンッ!

道場に、着いて力強く引き戸を開けた。

「晶ちゃん!」

その声に、中にいた2年生部員の手が止まり、奈々の方に向いた。

目の前には、道着がぼろぼろになってうつぶせに倒れ、ピクリとも動かなくなっている晶がいた。

「!?」

その瞬間、奈々の顔は怒りの形相になり、髪の毛がざわっと逆立った。

「おまえらあぁぁぁぁ!!!」

次の瞬間、奈々は木刀を持って飛びかかった。

「御影ぇぇ!」

理子は、銃を持って構えたが奈々は木刀で払い右拳を、理子の顔面に撃ちこんだ。

ドゴッ!

「きかねぇなぁ」

理子は、変身していた為、生身で殴る程度では効かずにやけたが

「うおあああぁぁぁぁ!!!」

ドゴォッ!!

奈々は、怒りの形相のまま木刀を喉めがけて突き抜いた。

「がはっ」

喉を突かれた理子は、そのまま壁まで飛んで叩きつけられた。

そのまま、奈々は2年生部員を睨み

「おまえら・・・全員ぶっとばす!!」

2年生部員たちは、奈々に向かって一斉に襲いかかった。

「うおおおおっっ!!」

「だあああぁぁぁぁっ!!!」

奈々も、叫びながら2年生部員に向かった。

次の瞬間、道場内に怒号と物が倒れる音、ガラスの割れる音が混ざり数分後静かになった。

中は、部員が全員四方八方に倒れており中央に、奈々が一人折れた木刀を持って立っていた。

奈々自身も、攻撃を喰らっており制服が、破れていた。

しかし、怒りは収まっておらず、ゆっくり理子に向かい歩いて行った。

「な、なんなんだおまえは」

理子の答えに、奈々は何も言わずゆっくり迫っていた。

「この・・・化け物が!」

「・・・だから?」

奈々は、冷たい目で答えた。

「ひっ」

理子は、その目に恐怖した。

「それが、なんだってんだ?」

奈々は、そう言いながら折れた木刀を両手で掴んだ。

「くっ、くるな、こっちにくるなー!」

理子は、奈々の冷徹な目と殺意に押され、変身していることも忘れて怯え始めた。

奈々は、折れた木刀をゆっくり振り上げ

「今はただ、あんたらを・・・・ぶっつぶしたいだけだぁぁぁ!!」

奈々は、折れた木刀を一気に振り下ろしたが、背後から両腕を抑えられ途中で止められた。

「そこまでです、奈々さん」

下から支えるように、腕を抑え止めたのは神崎楓であった。

「ぐううっ!、ぐううっ!」

奈々は、頭に血が上りきって息を荒げていた。

「もう誰も、戦えませんよ落ち着いてください」

目の前の理子は、やられたと思ったのか白目をむいて泡を吹いていた。

「奈々さん!」

楓は、もう一度奈々を呼んだ。

「ふーっ、ふーっ、ふーっ・・・・・ふぅ」

奈々は、徐々に息を整え力を緩めた。

「・・・・ごめん、楓ちゃんもう大丈夫」

そういうと奈々は、両手から木刀を離した。

それを見て楓も、抑えていた両手を離した。

しばらく息を整え、冷静になったとき奈々は、はっと気づき

「晶ちゃん!」

奈々は、振り返り倒れている晶の元へ走った。

「打撲が、ありますが大丈夫、気絶してるだけです」

楓は、晶を抱え確認した。

「それなら、よかった」

奈々は、ほっとした。

「とりあえず、目が覚めるまで保健室で休ませましょう。先生には、私から許可をもらいます」

「そうだね、それは任せるよ楓ちゃん。私は、晶ちゃんを保健室に運ぶよ」

「わかりました」

そういうと楓は、晶を奈々に預け職員室に走って行った。

「さて、運ぶか」

そう言って奈々は、晶を背中におぶって保健室に向かった。

「晶ちゃん!」

向かう途中で、泣き崩れていた彩音が戻ってきた。

「晶ちゃんは、晶ちゃんは大丈夫なんですか?」

「大丈夫だよ、今は寝てるだけしばらくしたら起きるよ」

奈々は、彩音に笑顔で答え彩音は、涙目ながらもほっと安心した。

「あ、ついでに今日の練習は終わりだから、道場に戻らず着替えて帰っていいよ」

彩音に、道場の惨状を見せて慌てさせないようにする為、帰ることを勧めた。

「は、はい・・・・」

「んじゃ、保健室いくので」

そう言って、奈々は保健室に向かっていった。

彩音は、その姿が見えなくなるまで、その場から動かなかった。


「んっ・・・・・ここは?」

一時間後、晶は目を覚ました。

「目が、覚めましたか?」

気が付くと、ベッドで寝ており横には奈々と楓がいた。

「私は、・・・そうだ!先輩たちと磯部は!?」

気絶する前の状況を、思い出し晶は起き上がった。

「あー、それがそのー・・・なんといいますか」

奈々は、頬をぽりぽり掻きながら答えた。

「ん???」

「それは、私から説明しますわ」

楓は、事の顛末を説明した。

楓が止めにきた経緯は、部活が終わりいつもの屋上に行ったが、奈々はおらず晶のいる道場に向かう途中で、けたたましい音が聞こえたため楓は、道場まで走った。道場に入ると、周りの惨状とその中で奈々が、木刀を振り下ろしそうになったのを見て素早く止めに入ったのであった。

「そうか彩音が、奈々の所に」

「あの子、友達?」

「ああ、私の大事な部活の友達だ」

「なるほどね」

彩音のことを、話してそのあと晶は、少し間をおいて

「ごめん、奈々」

奈々に、謝った。

「あんたの、忠告を無視してこんなことになった。彩音を、泣かせてしまい奈々にも怪我させて、楓にも迷惑かけた・・・・本当にごめん」

晶は、重ねて謝罪した。

しかし、奈々は

「いや、私もかっとなってあんたの部員達を、ぶっとばしてしまったし部活の居場所を奪ってしまったかもしれない。それに、私がもっと警戒していればよかっただけだ私にも、非はあるよ・・・・ごめん」

「私も、奈々さんと同じです警戒していれば、こんなことには・・・ごめんなさい」

奈々も楓も、晶に謝った。

3人は、しばらく沈黙して晶が口を開き

「まあ、お互い様ということにしよう」

「晶ちゃん」

「とにかく、起こったことよりこれからのことを考えよう。あたしも、この有様だししばらく戦線離脱だよ」

「そうだね」

「そうですね」

3人は、徐々ににこやかに今後のことを、帰りながら話した。


そして翌日

「呼ばれたのに、誰もいなかったのはそういうことか」

和泉は、昨日の出来事を聞いた。

「すまない、私たちの責任だ」

磯部理沙は、和泉に謝罪した。

「で、理子は?」

和泉は、理沙に聞いた。

「理子は、あれから悪夢を見てるかのように怯えて部屋から出てこない。肉体的ダメージより、精神的ダメージの方が大きい暫くは、戦闘不能だ」

「そうか」

そう言うと、和泉は行こうとしたが理沙は制止した。

「これから、どうするんだ。私達に、責任を取れというならいかなる処分も辞さないが・・・」

「それは、向こうが決めることだ私じゃない。それに、どうするのかというのなら私は、御影奈々に責任を取らせる・・・この場合は、おとしまえかな」

和泉は、ふっと笑い答えたが、次の瞬間笑みが消え

「あいつは、うちら部員を倒した言ってみれば道場破りも同じだ。経緯は、どうあれやられたからには、簡単に引き下がれないのさ」

「しかし、先に手を出したのはこっちだ」

「喧嘩両成敗だよ、誰かがやらないと御影は調子に乗って学園を、乱すかもしれないぜ」

和泉の目は、座っていた。

「そういうことだ、私がやられたら後は、任せると言っといてくれ」

そう言って泉は、去っていた。

「上位クラスのあなたが倒れたら、それこそ学園は大荒れになる」

理沙は、一人つぶやいた。

そして、その日の放課後

奈々は、運動公園でいつもの修練をしていた。

楓も、先日の出来事がありしばらく部活を休むことにして、奈々と一緒にいた。

「奈々ちゃん、動いて大丈夫?」

楓は、奈々に聞いた

奈々も、少なからず打撲や擦り傷があるが

「大丈夫、いつものことだから」

奈々は、ニコニコ顔で答えた。

「うちは、剣術やってるから乱取り中に擦り傷とか打撲などの怪我が、毎日あるからそのせいか慣れちゃってるんだよねー」

「意外に、ハードな家庭ですわね」

「そんなことないよ、うちは家庭円満だよ」

「ほんとうですか?」

楓は、不安そうに言ったが奈々は、いつもどおりであった。

「さて、それじゃ変身して練習しますか」

奈々が、シードを持って楓に言ったとき

「それなら、私が相手をしよう」

正面から、和泉が現れた。

「あんた、だれ?」

「私は、東郷学園2年和泉真琴、空手部主将だよ御影奈々」

和泉は、奈々に向かってそう答えた。

「私を、知ってるんだ」

「まあな」

「その主将が、何の御用で?」

「言わずともわかるだろう、あんたにやられたあいつらの敵討ちに来たのさ」

そういうと、真琴は結界を張った。

「これは、結界!?」

そう言って楓は、シードを構えたが

「ちよっと、まった」

奈々が、楓を止めた。

「楓ちゃん、ここは私がやる」

「奈々ちゃん!?」

「相手は、一人だし用があるのは私だけだから今回は、見といて」

その会話を、聞いてて

「別に、二人がかりでもいいんだぜ」

和泉は、そう言ったが

「仇討ちってのは、口実っぽい気がしたんだけど」

「なんでそう思う?」

「勘違いかもしれないけど、ただ私の実力を試したいんじゃないのかなと思ったの。それに、さっきから殺気が感じられないから」

奈々が、そう言ったとき和泉は、にやっと笑い

「そうだな、その通りかもしれない。だが、仇討ちも嘘じゃない。空手部の、真の実力を見せないとな」

「なるほどね」

「話は、終わりだ。始めるか」

そういうと和泉は、シードを持って構えた。

「変身」

和泉は、光に包まれ制服から深緑の衣装に変わった。

両手には、ナックルに手甲が付いていた。

「変身!」

奈々も、変身し剣を構えた。

「どっからでもきな」

真琴は、そう言ってノーガードで立っていた。

「はっ」

奈々は、力強く踏み込み一気に、和泉の目の前に立った。

「でえぇい!」

奈々は、剣を振り下ろしたが和泉は体を横にずらしかわした。

「はああああああっ」

キキンッカキンッ

続けて連撃を放つが、右へ左へかわしながら手甲で、斬撃を受け流しすべて回避された。

奈々は、一度攻撃をやめて間合いを取った。

「やっぱ強いか」

奈々は、剣を構え直した。

「それじゃ、今度はこっちから行くぜ」

そういうと和泉は、左拳を脇に引いた。

左拳に光が、収束していき光の玉が左拳を包んでいた。

「はぁっ」

左拳を、前へ突き出した瞬間光の玉が左拳から離れ、奈々に向かい一直線に飛んできた。

「いいっ!?」

奈々は、横に大きく飛び避けた。

「近接格闘と、思ったのに飛び道具あるのか」

「へぇー、気功弾をかわしたか」

和泉は、驚くこともなく笑っていた。

「だが、攻め続けたら攻撃できないでしょ?」

そう言って奈々は、また踏み込み攻撃を仕掛けたが。

「そう思うか?」

そう言って和泉は

ガキン!

斬撃を、左腕の手甲で受け止め

「なめられたもんだな」

ドゴォッ!

動きが、止まったところに右拳を、下から奈々の腹に突き上げた。

「ぐはっ」

奈々は、直撃を受けくの字になりながら下がった。

「まだまだっ」

和泉は、間合いを離さず奈々に連撃を繰り出す。

ドドドドドッ

「くうっ」

今度は、奈々が防戦になり剣で攻撃を防いでいた。

「はっ」

和泉が、右拳引いて正拳を繰り出した瞬間、奈々は体を横に反らしそのまま蹴りを出した。

ドカッ!

「くっ」

和泉の腹に蹴りが当たり、互いに離れた。

互いに、息を切らし整えようとしていた。

「奈々ちゃん・・・」

楓は、息をのみながら二人の攻防を見ていた。

奈々は、大きく深呼吸して

「ふぅ、やっぱ本当に強いな」

和泉も、息を整え

「一応、四天王と呼ばれてるからな」

「ふーん、それならそれ相応に答えないとだめだね」

そういうと奈々は、武器を構え

「本気出しますか」

「いいねぇ、こっちもそうしようか」

和泉も、答えるように目が座り構えた。

その瞬間、周りの空気が重くなった

「これは、・・・・・互いに次で決める気ですね」

楓は、そう言いながら息を飲んだ。

しばらく二人は、見合うように動かなくなった。

「はあぁぁぁぁぁぁっ」

そして、和泉の右手が光り始めた。

一撃目よりも倍の大きさの光の球ができていた。

「この距離なら、今度は避けられないぜ」

和泉と、奈々の間合いは3mであった。

「避ける気は、ない」

そう言って奈々は、剣を上段に構え

(晶ちゃんが、銃弾を拳で弾いたとなれば・・・・一か八かやってみるか)

そう考えた後

ダッ!

奈々は、前へ踏み込んだ。

「はぁっ」

和泉は、右手を突出し光の玉は奈々に向かって飛んだ。

「でえぇぇい!」

ズバァッ!

奈々は、避けずに剣を振り下ろし光の玉を斬った。

「なにっ!?」

和泉は、右手を引いて防御態勢を取ろうとしたが、その余裕を与えず奈々は、一気に和泉の目の前に立った。

そのまま、振り下ろした剣を下段に構え一気に振り上げた。

「御影流!円月斬!」

ガギンッ!!

和泉は、とっさに左の手甲で防いだ。

「ぬううううううっ!」

「ぐううううううっ!」

奈々は、そのまま振り抜こうしているが、和泉も振り抜かれまいと抑えようとする。

ギギッ!ギギッ!

しかし、奈々は両手和泉は片手であったため、じわじわと和泉の腕が上がって行き。

「うおりゃーーー!」

奈々は、そのまま振り抜き和泉の腕を撥ね退け

ズバァッ

和泉の、服が裂けた。

「ぐうっ」

和泉の胴が、がら空きになった。

「まだまだー」

奈々は、後ろ脚を前足に引きつけさらに踏み込み振り上げた剣を、そのまま回しもう一度振り上げた。

「だああああぁぁぁ!」

ズバンッ!ズバンッ!ズバンッ!

奈々は、そのまま連続に回転切りを3回繰り返した。

和泉の体が、宙に浮き奈々は、足を広げ剣を上段に構えて

「うおおりゃあぁぁぁぁぁ!!」

奈々は、叫びながら足を広げ腰を捻りながら、力いっぱい剣を一気に振り下ろした。

ドバァン!!

和泉は、クロスに服が裂けそのまま地面に叩きつけられた。

「はぁっ、はぁっ、つかれたーっ」

奈々は、息を切らし集中力が切れそのまま仰向けに、大の字になって倒れこんだ。

和泉は、同じく大の字で倒れたまま微動だにしなかった。

「奈々さん!」

楓は、奈々の元へ駆け寄った。

「大丈夫ですか?」

「へへへ・・・・なんとかやったよ」

奈々は、倒れたまま楓にピースした。

しばらくして

「はーっ、負けたか」

和泉は、意識が戻り倒れたまま言った。

「油断したつもりはないんだが・・・私の負けだ」

奈々は、それを聞いて

「たった数分なのに、あんな神経使うのはお姉ちゃん以来だよ」

奈々も、倒れたまま和泉に言った

「伊達に、四天王じゃないって言ったろ?」

「まあそうなんだけど・・・」

二人は、互いに倒れたまま答えた。

そして和泉は、天を見上げたまま一呼吸おいて

「御影、・・・・お前強いな」

和泉は、ふっと笑い奈々に言った。

「いや、まだまだだよ」

奈々は、首を振って言った。


そして結界が、晴れたころには周りは真っ暗で星が輝いていた。

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