第3話 敵の正体と回収する者

「喰らえ!」

理子は、銃を構え奈々に向けて発砲した。

銃から発射されたものは、弾丸ではなく光の弾であった。

大きさは、弾丸より大き目で肉眼でもわかるが、弾速は速かった。

しかし奈々は、回避して磯部姉妹に向かって一気に飛び込んだ。

「速い!」

理緒は、奈々の動きにうろたえたが

ガキンッ!

奈々の斬撃を、理沙が冷静に受け止めた。

「にゅにゅ」

「そう簡単には、やらせないよ」

二人が、つばぜり合いになったところで理子は、奈々に向けて銃を構えた。

「隙だらけだぜ」

理子は、にやりと笑い引き金を引こうとしたが

「はぁっ」

ドカァッ

晶が、理子の腕を蹴り上げた。

「てめぇ」

「あたしらを、忘れるんじゃねぇよ」

晶は、理子を見て構えた。

「そうですわね」

楓は、理緒に向けて弓を引いていた。

楓の矢は、光の矢になっていた。

晶の拳は、大き目の鋼鉄製拳サポーターを付けていた。

「なめるなっ」

「やられっぱなしというのは、気に食わないな」

理子は、銃を構え晶と対峙し、理緒は楓に向かって突進した。

「じゃあ私は、あんたと一騎打ちだね」

奈々は、つばぜり合いながらにぃっと笑った。

「理恵と、同じようにはいかんぞ」

理沙は、睨みながら答えた。

「そうかい」

そう言って奈々は、離れ間合いを取った。

そのころ晶は

「へっへー」

ダダダダ!バキンッ!!

理子の銃撃を、ジグザグに動き拳で弾きながら、ダッシュで詰め寄ろうとしていた。

ドンッドンッドンッ

「くそっくそっ、なんで当たらない」

理子は、下がりながら必死で撃ちこんでいたが、当たらないことにあせりの色が隠せないでいた。

そして、理子は足を止め狙いを定めようとした時、晶は合わせるように足を止め右拳を、脇に引き正拳の構えを取りつつ、踏み込む構えを取った。

二人は、距離にして二mの間で対峙した。

少しの静寂の後

「はっ」

ドンッ!

先に晶が、後ろ脚を蹴るように踏み込んだ。

「ばかめ」

そういって理子は、晶の額めがけて撃った。

しかし晶は、体を左に倒しかわした。

「なにぃ!?」

理子が、驚愕したとき晶は、すでに間合いに入っていた。

「はああぁぁぁ」

ドゴォッ!

晶は、引いていた右拳をえぐりこむように、理子の腹に突き抜いた。

「ぐはぁ」

理子の体は、くの字に曲がり宙に浮いた。

そのまま晶は、両拳を脇に引き次の瞬間、左右交互に素早く正拳を胴体に撃ちこんだ。

ドドドドドドドドド!!

「せいやー!」

ドガァッ!!

そして、最期に右拳を突き抜いた。

理子は、すべての拳を受け吹っ飛び地面に倒れた後、そのまま起き上がらなくなった。

「名付けて正拳連撃・・・・なんてね」

晶は、突き抜いた右拳を出したまま、にっと笑った。


そして、楓は晶と逆の立場に立っていた。

理緒は、晶と同じスタイルでオープンフィンガーグローブを付けて、楓を捉えていた。

「間合いさえ詰めてしまえば、弓は使えまい」

楓は、弓を使い防御しながら下がっていたが、間合いが取れずにいた。

「まずいですわね」

楓は、冷静に攻撃を払いながら、攻め時をうかがっていた。

「・・・しかたありませんね」

そういうと楓は、弓を持っている手の薬指と小指をぐっと握った。

ジャキンッ!

「つっ!?」

腕に痛みが走り、理緒は攻撃の手を止めた。

「なんてもの、仕込んでるの」

「こういうことは、対策してます」

構えた楓の持っている弓の左右から、刃が出ていた。

「いきます」

そういうと楓は、攻勢に転じた。

「くっ」

理緒は、斬られまいと攻撃を回避に徹し始めた。

ブンブンブンッ

薙刀を振るうように楓は、弓を振り下ろしてすぐ振り上げる。それを、上下左右ランダムに動かしていたためか、理緒は攻めあぐねていた。

「くそっ、このグローブでは・・・」

理緒は、迂闊に手を出せば腕を斬られると思い攻撃を、出すに出せない状況にあった。

「ちぃっ」

ダッ

たまらず理緒は、大きく後ろに退いたが楓を見たとき、すでに弓を引き射撃体勢に入っていた。

「あっ・・・」

「退きましたね」

バシュン!

楓は、矢を放った。

ドンッ!

光の矢は、理緒の頭を撃ち抜き矢は消えた。

ドサッ

理緒は、顔が上に跳ね上がりそのままゆっくり後ろに、大の字で倒れた。

楓は、構えた弓を下ろし

「ふぅ、仕留めました」

楓は、にっこりほほ笑んだ。


そのころ奈々は

カキンッカキンッガキンッ!

理沙と打ち合っていたが、奈々の顔には余裕があった。

「なんなんだ、こいつは」

理沙は、打ちこんでるが軽く捌かれている状況に、焦っていた。

そうして、互いに間合いを取って離れたとき、周りの戦闘が終わっていることに気づいた。

「あっちは、終わったみたいだよ」

奈々は、理沙に言った。

「ぬううう」

理沙は、三対一の状況に焦りの色を隠せないでいた。

「大丈夫、二人は手を出さないから安心していいよ」

奈々は、余裕の表情で答えた。

「ぐぬうううぅぅ」

ギリギリギリ

理沙は、舐められていることに苛立ち歯ぎしりをして

「なめんなー!」

理沙は、奈々に向かって剣を大きく振り上げ斬りかかったが奈々は、体を横に向け振り下ろされる剣を躱し

「ほいっ」

ズバァッ!

そのまま奈々は、剣を水平に振り胴を薙ぎ払った。

「がはっ」

理沙の服が裂け、そのまま前のめりに倒れ動かなくなった。

「焦りすぎだってばよ」

奈々は、倒れた理沙を見て淡々に言った。

そして、結界が晴れたころには日も暮れ夜になっていた。

「やったな、奈々」

「お見事です」

晶と楓は、奈々の元に向かった。

「ところで、あんたたちなんで使い慣れてるわけ?」

奈々は、二人に問いただした。

「いやまあ、昨日の夜に情報を整理して、使い方を覚えただけですが・・・」

「わたしも、同じですわ」

「ちょっとは、初心者的動きしてほしいよ」

二人の返答に奈々は、つまらなさそうにため息をひとつついた。

「そう言うお前は、余裕綽綽だったけどなんで?」

晶は、奈々に聞いた

「私も、同じで変身して自分で色々試したんだよね」

奈々は、頬をぽりぽり掻きながら言った。

3人で、少し話をしてしばらく経って奈々は、はっと気づき

「あーそだ、敵の正体突き止めないと」

奈々は、そう言って倒れている理沙の元に向かった。

「さーて、身ぐるみ剥いでさらし者にしてやろうかな」

奈々は、にやにやしながら言ったが

ゴンッ

「やめなさい」

奈々は、晶に叩かれた。

「冗談なのに・・・・」

「お前が言うと、冗談に聞こえん」

そんなやり取りをしているうちに、理沙の変身が解けようとした。

そして、解けた瞬間三人は驚愕した。

「これって・・・」

「そうなりますわよね・・・・」

「まじかよ・・・・」

その姿は、奈々達と同じ制服を着た理沙であった。

三人は、しばらく声も出さず驚いたままであった。

それもそのはず敵の正体は、同じ学園の生徒であったことに後に起こるであろう恐怖に立ちすくんでいた。


同刻、東郷学園では

「磯部四姉妹が、やられたか」

テーブルを囲い女達は、報告を聞いていた。

「三人とも、相当の手練れのようです」

「しかも、同じ学園内の生徒であるなんて」

「このままでは、学園の秩序が乱れる恐れが」

女達は、しばらく議論を交わしていたが

「静粛に!」

中央にいた女の一声で、周りは静かになった。

「相手は、三人臆することもない。こっちには、まだ戦力はある」

「しかし、磯部姉妹は我々の中でも上位に近い力を持つ者達。それを、あっさり倒すとなれば」

「それならば、四天王を出すまで」

その一言に、周りはざわつき始めた。

「全員が出ることはない、一人で十分だろう」

「では、誰を向かわせるのですか」

その答えに、中央の女は腕を組んだまま

「和泉を、出す」

そう言ったとき、周りから「おおー」と歓声があがった。

「さて、和泉相手にどれだけ持つかな」

女の持つ書類には、奈々達三人の顔写真と経歴が書かれていた。


前回の戦闘から、数日が過ぎた。

三人は、教室で弁当を食べていた。

「あれから、なんもないね」

奈々は、もぐもぐしながら言った。

「そうだね」

「なんででしょうね」

晶と楓も食べながら答えた。

三人が、恐れていたこと。それは、シードを狙う敵が同じ学園の生徒であることが発覚したこと。

想定されていたことは、授業中に突然襲撃とか、校舎裏に呼ばれて戦闘とか、登下校時に物陰からいきなり襲われる等々考えていたが、この数日何事もなくいつもの平常な学園生活が、続いていた。

「まあ、平和が一番」

「そうだねー」

奈々と晶は、お茶を飲みながらのほほーんとしていた。

楓は、二人を見てにっこりしていた。

そして授業が終わり、放課後三人は一緒に下校しバーガーショップで、わいわいガールズトークをしていた。

その様子を、道路の向こう側で一人の修道服を着た女が、その様子を見ていた。

そして三人は、楓が住んでいる家の神社へ向かい、境内でカバンを置いてストレッチを始めた。

「んじゃ、変身して練習しますか」

「最近、部活とこれでかなり運動量多いよ」

「右に同じく」

「一応、私もなんだけど・・・」

三人は、この数日変身してからの戦闘特訓をしていた。

「なにが来るかは、わかんないけど色々想定しないとね」

「まあねぇ」

「たしかに」

そう言いながら、ストレッチをしていたとき背後から、妙な気配がした。

奈々は、素早く振り返ると先ほど様子を見ていた修道服の女が、立っていた。

シスターのようだが、身長は170近くあり見た目の年齢は二十代で、サングラスをかけ煙草を吸っていた。

「おい、おまえらシードもってるな?」

シスターは、三人に声をかけた。

その容姿を見た三人は、囲んでひそひそ話を始めた。

(何あれ)

(私に聞かれても)

(どう見てもシスターですわね)

(でも、煙草にサングラスだぜ)

(あんなやさぐれシスター見たことないよ)

三人が、ひそひそ話してる様子をみてたシスターが

「おい」

声をかけたが、反応がなかった。

「おい!」

更に声をかけたが、変わらず

「おい!!」

三度目に、やっと奈々たちは振り向いた。

「質問に、答えろ!」

シスターが、返答を求めたが

「あの、ここ神社ですけど」

晶は、違う返答をした。

「わかってるよ!」

シスターは、即答し

「ちげーよ、シード持ってるかと聞いてるんだ」

「あの、ここ禁煙です」

今度は楓が、違う返答をした。

「ああ、それはすまない」

そう言ってシスターは、煙草を吸い殻入れに片づけた。

「はっ、そうじゃねぇ!」

シスターは、目的を思い出して三度聞いた

「おまえらは、シードを・・・」

言いかけたその時

「んじゃ、続きをしようか」

奈々は、練習を始めようとした。

「人の話を、聞けー!」

シスターは、キレた。

「なんですか、やさぐれシスター?」

奈々は、振り返り聞いた。

「変なあだ名付けんじゃねぇ」

シスターは、そう言った後気持ちを切り替え

「おまえら、シードを持ってるな」

シスターは、改めて質問した。

「あるけど、だったら?」

「また、実力行使?」

そう言って、三人は構えたが

「まあまて」

シスターは、制止した。

「ここでは、タバコが吸えない。違うとこで話そう」

そう言ってシスターは、移動しようとしたが

「んじゃ練習を、はじめようか」

奈々は、無視して準備を始めた。

「てめぇ、ここはついてくるとこだろうがー!」

シスターは、絶叫した。

そして、境内を降りたところに公園がありそこで奈々達は、缶ジュースを飲みながらシスターの話を聞くことにした。

「ふぅ~」

シスターは、煙草に火を付け一服し話を始めた。

「私は、シスターマリア『回収する者』だ」

「回収する者???」

三人の頭には、?がついていた。

「元々エンジェルシードは、神族が持っているもので私は、それを回収しにきた神の代行者ということ」

「神族???」

三人の頭には、更に?がついていた。

「神族は、神様のことで元々エンジェルシードは神様の持ち物なの。それで、この世界に落ちてきたシードを回収して天界に持ち帰るのが、天使である私の役目だわかったか?」

マリアは、説明したが返答は

「つまり、変なシスターということですね」

「いかれたシスターというのは、わかった」

「病院は、向こうです」

「てめぇら、喧嘩売ってるだろ」

マリアは、三人にいらっとした。

「んじゃ、天使って証拠は?」

奈々は、マリアに問いただした。

「ほれ」

そういうとマリアは、名刺を出した。

そこには、『能天使 カマエル(PNシスターマリア)』と書かれてあり下に、電話番号とEメールアドレスもあった。

「マリアってペンネームなんだ・・」

「なんで、天使が名刺持ってるわけ?」

「まあこれは、連絡先としてだ」

「いや、ちゃんとした証拠を」

奈々が、そう言ったときマリアは手をかざし

「本当の証拠を、見せてやる。」

そう言った時、マリアの手が光り引き寄せられるように

三人の持っていたシードが、マリアの手に集まった。

「これで、ちょっとは信用したか?」

マリアは、シードを持って3人に聞いた。

「まあ、ちょっとは」

三人は、信じにくい話ではあるがマリアが、シードの存在を知っているのと、この石がある時点で天使が、いないとも言い難くなっている為この場は、一応に納得した。

「とりあえず今は、シードの所在が分かればいい」

そういうとマリアは、シードを返した。

「どういうことですか?」

楓は、マリアに聞いた。

「まだ、回収期限があるからだ」

マリアは、そう言いながら二本目の煙草を、吸い始めていた。

「期限?」

「それっていつまで?」

「2988年後」

「はぁぁ!?」

人間にとっては、とてつもなく長い期限であった。

「まあお前らが、死んだときにでも回収したらいいと思ってるぐらいだ」

「そんなもんですか」

「その間は、人間界で遊ぶとするさ」

そう言ってマリアは、煙草を吸い殻入れに片づけていた。

「でもさ、あんたが自分の力で持ってるやつ倒して、回収したらいいんでない?」

奈々は、マリアに聞いた。

「それが、できたら苦労しないよ」

マリアは、ため息を一つついて

「天使は、悪魔が介入しない限り手を出してはダメって、天界のルールがあるの。・・・・まあ、気に入らん奴は蹴っ飛ばすけど」

「手は、出さない代わりに足を出すのね」

「まあとにかく、天使の力を使って攻撃してはいけないのさ」

「使うと、どうなるの?」

「地球が、消し飛ぶ」

「なるほど・・・」

大げさな気もしたが、ありえなくもないと思い突っ込まなかった。

「ついでに、気になったことがあったんでな」

「気になること?」

「ここ半年ぐらいだが、エンジェルシードが一か所に集まっている」

「その場所って、まさか」

「お察しの通りで、東郷学園だ」

その言葉に、三人は息をのんだ。

「おまえらは、狙われてる側のようだから接触したのさ」

マリアは、そう言うと立ち上がった。

「できれば、シードの所有者がわかればその名刺の連絡先から、教えてもらえると助かる。期待はしないが、一応頼む」

そう言ってマリアは、帰ろうとした時立ち止まり

「そうだ、一つだけ警告をしておこう。おまえらは、確実にマークされている。いつ、何が起こってもいいように常に三人でいることを心掛けてた方がいいぜ。・・・・んじゃ、またな」

そう言ってマリアは、公園を出て行った。

三人は、その場からしばらく動けずいた。

「そろそろ、動いてくるってことだよね」

「どこから来るかわからないから、離れたら狙われるってことかな」

「今以上に、警戒するべきかもですね」

各々、冷や汗をかきながらも

「最初は、怖いと思ったけど」

「まあ、これはこれで」

「楽しくなるかも、ですね」

この状況を、楽しみだしたのか顔は、微笑んでいた。


そして、翌日マリアの警告は、現実のものになる。

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