第304話 プリズンブレイクXⅢ

「総員王に遅れをとるな! 聞いた通り、遅れたものは罰ゲームがあるぞ!」


 ディーは号令と共に神鎧ヴァルハラの力を顕現させると、背中の二枚羽で空を舞う。


「ほんとなんであのバカは一番弱いくせに一番前走りたがるのかしら」


 フレイアはマジで意味がわからんと髪をかくと、ライフルのスコープを覗き込んだエーリカが笑みをこぼしながら答える。


「勝手に突っ込んでいく防衛目標を後ろから守るのが我々の役目です」

「なんて迷惑な奴なのよ」

「他の王には絶対マネできない芸当です」

「マネしないだけよ」

「正論ですね」


 エーリカはライフルのトリガーを連続で引き、迫りくる蜘蛛と枝を全て撃ち落としていく。


「王を一番遅くして、王に罰ゲーム受けさせるの面白そうネ」


 レイランは襲い来る枝に飛び乗ると、そのまま枝を駆けあがり両手に持つ青龍刀で近づくもの全てを斬り裂いていく。

 彼女の後ろに迫った枝をエーリカが撃ち抜くと、レイランは不快気に口元を歪めた。


「いい気になるなポンコツ」

「あなたの背中を狙っただけです、アンデッド」

「「お前には負けん(ません)」」


 両者フンと顔をそらすと、レイランはその瞳に紅を灯し、エーリカはヘルムに青を輝かせる。

 その様子を俺は巨木の下を走りながら眺めていた。


「うわ、なんだあれ……エーリカの奴ガンビットみたいなの飛ばしてオールレンジ攻撃始めたし、レイランなんか両手からドラゴンだしてるし……」


 CGが売りなアクション映画みたいだなと思っていると、物凄い跳躍力でグランザムが俺の頭上を飛び越えていく。


「うぉらあああああああアックスブル!!」


 グランザムは全身を回転させながら戦斧で太い枝を叩き切る。

 後方を見ると、オスカーが魔法陣を輝かせながら、全員に強化支援をかけているのが見える。


「なんか体軽いと思ったらオスカーのおかげか。皆テンションたけぇな」


 押せ押せの空気が漂うが、死霊樹の枝はすぐさま再生し、いくら斬っても燃やしてもキリがない。

 おまけに奴は何もしなくてもこちらの生命力を吸収できるので、普通につっ立ってると負けだ。


『あああああ死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇ!!』


 なかなか捉えきれない俺たちに、苛立ったハラミの声が響く。奴はこちらを足止めする為に周囲に汚泥をまき散らし始めた。

 触れると魔物化してしまう泥に進路を阻まれるが、ウジャウジャいる蜘蛛人間の成れの果ては汚泥を無視して突き進んでくる。


「くそ、アブラムシみたいに大量発生しやがって」


 近づく蜘蛛を斬りふせるが、全く減る様子がない。

 それもそのはず倒したはずの蜘蛛は、しばらくするとまた動き出してくるのだ。


「あいつら泥に入ると無限に復活しやがるな」


 まとめてぶっ飛ばす突破力が必要だ。

 そう思うと、俺の頭上に影が差し、漆黒のマントをなびかせた鋼の死神が空を征く。

 タナトスはその手に巨大な鎌を握りしめると、背面の推進器を吹かせながら特攻する。


『はぁぁぁぁぁ!』


 タナトスが大鎌を振るうと、無数の蜘蛛たちは横一閃に両断され、その体を黒い霧に変えていく。

 どうやらあの鎌に斬られると、蜘蛛たちは再生できなくなるらしい。


【我は魂を永遠の闇へと導く、死の案内人。無明の世界へと帰るが良い】


 タナトスから中二病っぽい声が聞こえる。

 一瞬ゼノが中二病化したのかなと思ったが、恐らくタナトスのコアだろう。


「いいねぇゼノさん輝いてるよ!」


 俺がゼノを褒めると、今度は頭上からルナリアの声が響く。


『あまり特定の女性を褒めるのは感心しませんね』

嫉妬ジェラシーですね】

『メタトロン、くだらないこと言ってないで泥の浄化を』

【オーライッ。聖域方陣を展開。浄化開始】


 メタトロンの光が、周囲に散った泥を浄化していく。


「さすが起源聖霊二機、向こうもデタラメだがこっちもデタラメだな」


 対等にやりあえてることに自信を持っていると、不意に死霊樹から伸びたツタが俺の体をがんじがらめにする。そのまま強い力で体が引きずられていく。

 やばい、このツタ俺を泥に引きずり込むつもりだ!


「誰かああああ! たーすけーてーー!」

「大丈夫かい?」


 クリスが間一髪泥に入る前にツタを斬り裂いてくれた。

 白い歯を輝かせる、そのあまりのイケメンっぷりに、思わず胸がキュンとしてしまう。


「ほんと王子役が似合うな。女だったら惚れてた」

「無理しちゃダメだよ子猫ちゃん、なんてね――にゃあああああああ!?」


 王子っぽく俺を助けたはずのクリス(女)の足首にツタが絡みつき、凄い勢いで引きずられていく。

 手を伸ばしたが、あまりにも一瞬すぎて助ける暇もなかった。


「クリス!!」


 彼女の足はツタに巻き上げられ、ハラミの上半身がある、幹の中心で逆さづりにされていた。


『あなたはクリストファー……やっぱり女だったのね』


 ハラミはクリスの胸を見て、不快気に口元を歪める。


「やぁ、監獄では世話になったね。君、相当僕の事嫌いだったみたいだけど、僕が女だって気づいてたわけ?」

『性別関係なくあなたのことは大嫌い。見ているだけで虫唾が走る。同じウォールナイツというだけで、いつもオスカー様の隣を独占して、何様のつもりなの? お前さえ、お前さえいなければオスカー様は……』

「僕がいなくたってオスカーは君のこと好きにならないと思うよ」

『!』


 そう言うと死霊樹のツタがクリスの頬をはたく。パンっと鋭い音と共に彼女の頬に一筋の血が流れる。


『お前に何がわかる! オスカー様の為に自分を磨き、オスカー様が望む女になったと言うのに、常にお前がオスカー様の隣を独占する。これで嫌いにならないわけがないでしょう!』

「それは失礼。別に僕はオスカーを寝取ったつもりは一度もないよ。君は勝手に男状態の僕に負けを認めた、ただの卑屈な女。それだけさ」


 もう一度ツタがクリスの頬を叩く。


『気に入らない! 気に入らない! あなたの全てが気に入らない!』

「愛を求めて愛に狂う……哀れだね」


 完全にキレてしまったハラミがツタをめりめりと締め上げていく。

 クリスは身動きが取れなくなる前に、ポケットから植物の種を取り出し、ハラミに向かって弾く。

 種は丁度ハラミの胸に埋まると、すぐさま双葉の芽が吹き出した。


『なに……なによこれ? なんなのよ!?』

「ヤドリギソウ、体内に埋めると根が心臓に絡みついて心臓を押し潰す。この死霊樹をコントロールしてるのは君だろ? 死にたくなかったらこれ以上――」

『黙りなさい! 私に指図しないで!』


 言いかけたクリスにドリルのような鋭い枝が迫る。


「今更交渉は無意味だね。悪いけど死んでもらうよ」


 ハラミの殺意を感じ取り、クリスは拳を握りしめる。その瞬間ハラミの体内でヤドリギソウが成長し、彼女の心臓を押し潰した。


「ぐっ……ぐぅぅ忌々しい、忌々しい! お前さえお前さえいなければあああああ!」


 ハラミは呪詛のように叫びながら、ごぼっと大量の血を吐き出す。


「ごめんね。でも君は自分の愛の為に他者を犠牲にしすぎた」


 ハラミが事切れると死霊樹の増殖が止まり、生き物のように蠢いていた枝もピタリと止まった。

 それからゆっくりと木全体が力なくしおれていく。

 クリスを逆さ吊りにしていたツタが自然と千切れると、俺の真上に降って来た。

 俺はそれを受け止めると、彼女は満足げな笑みを浮かべる。


「ハラミ倒しちゃった」

「無茶したな」

「あいつ自分が死霊樹のコアのくせにノーガードなんだもん。絶対僕が近づいたら恨み言の一つでも言ってくると思った」

「そこまで計算づくか」

「実際は監獄でいいようにイジメてくれたから、その報復も入ってる」


 やはり女性は怒らせると怖い。


「想いが純粋すぎる分、何を犠牲にしても良いってなっちゃったんだろうね」


 ほんの少しだけ寂しそうな表情を見せるクリス。

 ハラミも踏み外していなければ、もしかしたらオスカーと結ばれる未来もあったかもしれない。そう思うと少しだけ哀れに感じる。


「よし、これでウチに帰れるな――」


 言いかけて、死霊樹の異変に気付くいた。動きを止めたはずの死霊樹が小さく震えだすと、活動を再開したのだ。

 しかも先程と違い、動きが不規則で根やツタが手当たり次第に伸びていく。


「おぉ、やばいんじゃないかこれ?」

「もしかして、心臓ハラミを失って体が暴走してる?」

「その可能性が高そうだ」


 死霊樹の枝はヘックス城やミスリル城壁に突き刺さり、周辺の生物を片っ端から吸収していく。

 植物でさえも、エネルギーを吸われて枯れ果てていくほどだ。


「危険だ、全員下がれ!」


 ディーの撤退命令と共に、全員が下がる。

 その間も死霊樹の増殖は続き、幹は60、70メートルを超えて、尚も成長していく。

 それと同時に枯れ木だったはずの死霊樹のてっぺん部分に不気味な紫の花が咲く。


「うわぁ……超巨大ラフレシアって感じだな」


 空を舞っていたがディーが俺たちのすぐ隣に舞い降りてくる。


「なんてエネルギー量……まずいです。死霊樹の体が無差別にエネルギーを吸収し、自己増殖と自己進化を繰り返してます。このままでは、この周辺の命は全て吸い尽くされ死の大地になります。いえそれだけでなく、奴の根がこの星の地核に到達した場合、最悪卵のように星が割れます」

「そりゃマズイな」


 俺の頭に星が二つに割れて中から黄身が飛び出すシュールな光景が浮かぶ。

 マジやべぇと困っているとオリオンが俺の服を引っ張った。


「ねぇ咲、なんか断空剣もっ発撃てそうなんだけど」

「なに?」


 オリオンの結晶剣を見やると、刀身が虹色に発光してエネルギーに満ちている。


「なんかね、あの死神と天使から力貰ったっぽいよ」

「起源聖霊の魔力を結晶剣が吸い取ったのか?」

「わかんない。これであの木ズバッといけんじゃない?」

「さすがに断空剣でも、あの規模はちょっとなぁ。しかしあれだけでかいと自重で潰れそうなんだが……」


 そこでピンと閃いた。


「全員集合ーー!!」


 俺が叫ぶと、メタトロンやタナトスを含めた全員が俺とオリオンたちの元へと戻って来る。

 中和しても中和しても降って来る泥の対応をしていたルナリアは、急に呼び出されて声を低くする。


『なんですか、今忙しいんですが?』

「なんかね、オリオンの断空剣がもう一発撃てそうなんですよ」

『それがどうし……なにこれ……』


 メタトロンが結晶剣を解析すると、凄まじい魔力が充填されていることに気づく。


『凄い魔力量です。……しかしその剣を以てしても、今の死霊樹の再生能力には届かないと思いますよ』

「ルナリアさん、あいつ今なんでも吸収するんでしょ? そんじゃ逆にくれてやればいいんじゃないですか?」


 そう言うとルナリアは俺が言っている意味を理解した。


「なるほど。面白いですね。進化による組織変化で原子核崩壊を誘発させるわけですか……いけそうです」


 俺が考えついたのは生物の急速進化による自己崩壊。

 今の死霊樹は生命エネルギーを吸収しながら増殖と進化を繰り返している。

 ならばあえて断空剣のエネルギーをくれてやり、異常進化を促す。奴は今体を拡張させながらそれに耐えられる体へと進化しているはずなので、進化が追いつく前に体をパンクさせてやるのだ。


『わかりました。メタトロンとタナトスのエネルギーは私が仲介します。剣の担い手は全力全開の魔力放出を行ってください』

「よしゃ任せろ、そういう単純なのはあたし得意だぞ」


 俺は振り返って全員に作戦を説明する。


「今からオリオンが全力全開の断空剣を放って奴をパンクさせる。大量のエネルギーが必要なんだ。誰かエネルギーを集めてオリオンの結晶剣に受け渡しできる人!」

「私がやろう」


 そう言って手を上げたのはオスカーだ。

 オスカーが地面にルーン文字を描き、魔力を込めると魔法陣が浮かび上がる。


「私が魔力エネルギーを集め、その剣にコンバートする。皆力を!」


 全員が魔力をオスカーに送ると、その全てがオスカーの魔法陣に吸い込まれていく。


「エネルギーを剣に接続する!」


 魔法陣からオリオンに光が伸びると結晶剣が強く輝く。


「お、おぉ咲、なんかこれ凄い……」

『タナトスのエネルギーいきますわよ』

『同じくメタトロンのエネルギーいきますよ』


 タナトスとメタトロンが膝をつくと、白い光と黒い光が同時に伸びる。起源聖霊二機の魔力を受け、結晶剣は刀身が見えないほどの眩い光を放つ。


「うぉぉぉ超眩しい! 光と闇の力があわさって最強に見える!」

「オリオン!」

「しゃあああ行くぞおおおお!!」


 オリオンは結晶剣を天に掲げると、先ほど撃った断空剣とは比べ物にならないほどの極太の光が天へと伸びる。

 光の剣は雲を割り、空を割り、天を突く。

 火花にも似た光の粒子が剣から漏れ、ある種幻想的にも見える。


「凄いエネルギー量だ!」

「咲、超重いんだけどこれ」


 オリオンの腕がプルプルと震え、ふらっと倒れそうになる。

 それと一緒に光の剣は俺たちの方に落ちて来そうになった。


「お前ちゃんと持て! ここまできて自滅とかシャレにならんぞ!」


 俺が慌てて支えに入ると確かに重い。剣は大規模なエネルギーの放出に激しく震えており、これを一人で支えるのは辛いだろう。

 エネルギーは更に増大を続け、最早光の剣がどこまで伸びているのかわからない。


「断空剣、凄い必殺技みたいになってるな」

「咲、これは断空剣じゃないよ」

「じゃあなんだ?」

「超・断空剣だ」


 バカみてぇな名前だと思ったが、確かに強そうだなと思いクスリと笑ってしまう。


「じゃあかますか、超・断空剣!」

「おう!」

『エネルギー充填1200%。このエネルギー量なら進化より先に自己崩壊を起こせます!』

「ぶちかませ!」

「やっちゃえ!」

「早くここから出るわよ」

「……やる」

「王よ!」

「天誅よろし」

「やってしまうであります!」

「王様早くして下さい、魔力がどんどん吸い取られて行きます」

「我輩の必殺を見せてやるである」

「お館様、最後の一撃を!」


「「超・断・空・剣!!!」」


 俺たちの全エネルギーたらふく喰らえと極光の剣が振り下ろされ、死霊樹は光の渦に飲み込まれていく。

 閃光と、ヘックス領全てを巻き上げるような暴風が俺たちを襲う。

 凄まじい光が眼球を突き刺す中、超・断空剣のエネルギーを吸収し死霊樹が巨大化していく。しかしそれと同時に末端部分が異常進化に耐え切れずボロボロと崩れ落ちていく。


「「「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!」」」」


 俺たち全員の叫びと共に光が全てを飲み込むと、視界が完全に0となり、数秒の間自分がどうなっているのかさえわからなくなってしまった。

 やがて光が収束し、辺りに静寂が戻っていく。

 

 パラパラと巻き上がった砂やゴミが降ってくる中、俺は地面からズボッと頭を抜いた。


「あーびっくりした。まだ目がチカチカする……あんなバカみたいな威力自分で使うもんじゃねぇな」


 俺は地面に埋まっている、我がチャリオットメンバーを掘り起こしていく。


「死ぬかと思った」

「あいつはどうなったんだ?」


 死霊樹を見やると、爆心地の中心に炭化した木が見える。

 死霊樹の成れの果ては風に吹かれると形が崩れ去っていく、どうやらもう再生することはできないようだ。


「なんとか……なったな」


 しかし、俺たちの方はもうボロボロだ。

 エネルギーの全てを結晶剣に回した結果、皆肩で息をしながらその場に蹲っている。


「すまない、少し加減せずに皆から魔力を集めてしまったようだ」


 オスカーは申し訳なさそうにするが、俺は首を振った。


「いや、全力全開じゃないと多分やれなかったからな。それでいい」


 大きく息を吐いて、空に向かって叫ぶ。


「勝ったぁぁぁぁぁぁ!!」


 拳を天に突き上げ、勝鬨をあげると全員が笑みをこぼす。

 これで長かった監獄での戦いは終わったのだ。


「キサマラァァァァァ!!」

「ん?」


 あれ、せっかくエピローグに入るかと思いきや、野太いおっさんの声が。

 何かと思い爆心地へと近づくと、そこには死霊樹に寄生され、上半身だけになったデブルの姿があった。

 どうやら死霊樹に吸収されていたようだが、何かの拍子で意識が戻ったらしい。


「よくも、よくも。殺してやる、殺してやるぞぉぉぉぉ!!」

「しつこさ半端ないな……」


 魔法一発ではじけ飛びそうなくらい弱々しいデブルだったが、奴の体が泡みたいにボコボコと膨れ上がり急激に増殖を始める。


「うぉ、マジかよ!?」

「フハハハハハ、もう一度再生して貴様らを皆殺しにしてくれる!」


 やるしかないと黒鉄を構えると、ルナリアが慌てた様子でメタトロンから降りてきた。


「あっ、ルナリアさん。デブルの野郎まだ生きてて――」

「そんなこと言ってる場合じゃありません! さっきの衝撃で地下にあるメテオダインが起動してしまいました! 皆逃げてください!」


 確かメテオダインってディーがまじやべぇって言ってた爆弾だな……。


「…………皆……逃げろぉぉぉぉぉ!!」


 そう叫ぶと、ヘックス領を巨大な飛行船が舞う。

 見覚えのあるその飛行船はファラオから貰った大型飛行船ホルスだ。

 確か飛べなかったはずなのだが、空を飛んでいるということは修理が終わったのだろうか。

 しかしそんなことを気にしている余裕はない。


「兄貴! お迎えに来やした」

「カチャノフ!」

「皆さん乗り込んでくだせぇ!」


 俺たちは順次ホルスに乗り込み、メタトロンとタナトスを格納庫に運び込んだ。

 ついでにG-13が搭載された小型戦車も積み込む。


「いいぞ、出せ!」

「アイサー!」


 ホルスはマストと両翼を広げ、空中へと飛び上がる。


「おい、待て貴様ら!」


 上半身だけのデブルが必死に手を伸ばす。


「じゃあな、お前には勿体なさすぎる墓標だ」

「貴様ら、貴様らぁぁぁぁぁぁ!!」


 ホルスはグングンと高度を上げ、ヘックスから遠ざかっていく。


「あばよ、監獄!!」


 お別れと同時に大気を震わせるような大爆発が起こり、デブルごと監獄は木端微塵に吹っ飛んだのだった。





――――――――――――――――――――

次回エピローグでプリズンブレイク編は完結です。

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