【体験レポ】戦国体感セミナー 槍編

 すでに述べたように、この日は五月であるにも関わらず30度超えの夏日である。

 よってこの時点で一部の参加者は甲冑を取り外した。


 続いては槍。槍は3mのものをメインで使用する。参考として4m、6mの槍も用意されていたが、実技では使用しない。

 なお6mの長槍は保持するだけでも精一杯。材質にも依るとは思うが、相手に穂先を打たれると容易にしなってしまい、まったく思ったようには取り廻せない。これは後述する馬避けにしか使わなかったのでは、とは私の個人的感想。


 槍は「突く」のではなく、「殴る」使い方をする。

 集団戦であるため左右には振らず、上から下、あるいはやや斜め下へと振り下ろして相手の槍、小手、そして頭頂を狙う。

 私はついつい日ごろ練習している「押さえる」やり方をしていたが、そんなお上品なやり方ではなく、命一杯叩きつける。そうして大きく開かせたところへ踏み込むのである。


 前進は足を交差させる「カニ歩き」なる歩法を使う。ここでもやはり、受け側は足を見て下がる。また受ける瞬間には腰を落とし(中国武術の馬歩に近い)、穂先を上方向へ振り上げることで相手の槍を迎え撃つ。

 これには「中心線を守ることで敵の攻撃を逸らす」という秘訣に通じるものを感じる。


 一通り打ち込み練習をすると、今度は置き盾を挟んでの攻防戦を行う。

 置き盾とは長方形の板に三角形の足を着けて自立させた、槍や矢を防ぐためのもの。戦場の防衛線というわけだ。


 守る側は槍先を置き盾の上に乗せ、守りを崩そうとする相手側の槍を払い除ける。おおよそ二人一組で片方が盾を押さえ、片方が払いに専念するわけだが、結構難しい。槍先で盾を押さえるのは力がいるし(やり方が違うのか?)、振り下ろされる槍は払おうにもタイミングが合わない。


 攻める側は号令係による「陣形組め!」の合図で三角形、いわゆる「魚鱗陣」の形を取り、「突撃!」の号令と共に進軍する。

 この槍部隊はただ「敵の守りを崩す」ことに専念し、盾を突破しても追撃はしない。それは後方の斬り込み部隊が担当し、役目を果たした槍部隊は撤収の号令で即座に引いたという。

 ただし合戦という怒号飛び交う中、眼前の敵に集中しすぎて撤退を忘れる兵もいたとか。


 最後に連携攻撃の解説。

 二対一で敵を迎え撃つ方法。二人組は槍を交差させて敵を待ち受ける。一方が頭、もう一方が胴を狙うなど連携して討つ。また馬上の相手は騎兵を狙うと馬を狙うとで分けると。

 馬を狙うには槍の石突きを地面に突き立てて固定することもあったそうだ。馬防と組み合わせればまず騎馬兵は接近できなくなる。例の6m長槍がずらりと突き出ていればその威圧感は凄まじかろう。


 石突を上向け穂先を下げる構えの紹介も。これは相手の攻撃を半円を描くようにして打ち飛ばす。


 ここで槍の実技が終了。休憩中、会の方より槍を短く使う方法を紹介してもらう。要は相手との間合いに応じて握る位置を変えるのである。縦に回して前後を入れ替え、下から切り上げたり石突で打つなども。

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