論考編

銃を相手にどう戦う?

 近況ノートにてリクエストを頂いた。「銃での戦闘表現」をご所望とのことだった。

 なるほど確かにこれまで武術について語ってきたが、銃火器を用いた戦闘については一切触れてこなかった。これは一考してみると面白そうだ。


 しかし早速困ったことがある。

 私は銃器を扱ったことがない。本物はもちろん、モデルガンやエアガンすらない。手元にあるのはせいぜいコルト・パイソンを模したライター程度だ。

 なお私は非喫煙者である。なぜそんな代物を有しているのか私自身よくわからない。


 銃の機構や特徴についても疎い。以前は「シティー・ハンター」や「ゴルゴ13」のような作品を書いてみようと銃器について調べたこともある。が、それは過去の話だ。大部分は忘れてしまったし、覚えていたとしても情報は古くなっていよう。手元の書籍ももう何年も前に購入したものだ。


 なのでそういった銃の動作機構や有名どころに関する詳しい説明はその分野の方に任せたい。私が知っているところではこちらのエッセイが参考になると思う。


「小説に使える裏社会知識」飛野猶

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881918652


 さて、銃とはもちろん、弾を発射して敵を撃ち抜く武器だ。分類としては弓矢の延長であろうが、考えようによっては「ほぼ無限遠の長さの槍」とでも言えようか。

 であれば、その弾丸を射出する表現としては以下が使えよう。


撃ち抜く

射抜く

貫く

通す

穿つ

放つ


 あるいは単にこのようにも言える。こちらの方が銃器としてはよく用いられそうだ。


発砲する

発射する

ばら撒く

ブチ込む、叩き込む

(弾を)喰らわせる

(弾痕を)刻む


 それから、引き金トリガーはよく「引く」と表現される。その部位の名前がそれなのだから当然だ。

 しかし以前どこかで読んだ話では、特にスナイパーなどは引き金を「絞る」そうだ。定めた狙いがブレぬよう、息を静かに吐きながら指先を絞るのだとか。

 うろ覚えで出典が何であるかさえ示せないのが申し訳ない。


 戦闘スタイルとしてはどのようなものが考えられるだろうか。

 数百メートルの距離があるような場面では、スナイパーによる狙撃になるだろう。相手が気づいていない場面では一撃必殺で仕留めるのが上策であり、外せば集中砲火を食らいかねない。一撃に全神経を注ぎ込み息も忘れるような緊張感を描けるだろう。

 十メートル程度、主に室内のような場所では物陰に隠れながら撃ち合うことになる。相手が姿を見せた瞬間に狙いを定める。あるいは家具の下から足を狙って動きを封じる、頭上の照明などを撃ち落として攻撃する方法も取れそうだ。

 数メートルにもなれば銃器にしてみれば超接近戦である。映画「リベリオン(原題: Equilibrium)に登場する近接銃撃戦闘術「Gun Kataガン=カタ」は実に有名だ。私が銃器を使った戦闘を描くとなればまずこの距離を選ぶだろう。相手の射線を見切って逃れ、かつ相手を自らの射線に乗せる。徒手編「線を制する」の原理で戦闘が組み立てられる。

 この辺りのアイディアはアクション映画の銃撃戦を参考に大いに妄想を膨らませよう。


 少し脱線するが、私が昔好んで見ていた海外ドラマに「冒険野郎マクガイバー」という作品がある。

 主人公のマクガイバーはとにかく銃器が嫌いであり、銃を持った敵との戦闘においても絶対に自ら銃を手に取ろうとしない。物陰に隠れ、手近な物品を組み合わせて作った即席のアナログ武器で奇襲する戦法を取っていた。それは落とし穴やブービートラップであることもあれば、スリングのような投石器で敵を昏倒させていたこともあった。

 銃に銃で対抗しない手段の参考になるはずだ。


 銃を持った相手に不用意に接近するのは、誰が考えても愚策である。抜き足差し足で背後に回ったとして、相手に気取られてはその瞬間に終わりだ。銃を無効化しなくては。どのように無効化しようか。

 まずは叩き落とす。長い棒や、ベルトや鞭の類でその銃を持った手を強かに打ち据える。へし折るつもりでやれば万が一にも取り落とさなかったにしろ、即座に銃撃で応じることは難しくなるだろう。

 次に動作不良ジャムを誘発させる。ルパン三世のTVスペシャル「お宝返却大作戦!!」では、次元大介が周囲を無駄に打ちまくり、その飛び散った破片で敵の自動拳銃を詰まらせるというシーンがあった。また同じくルパン三世「天使の策略」では、小麦粉が充満した小屋でマシンガンを連射し粉塵爆発で敗北した者もいる。

 水中では弾丸もその速度を急速に落とし、威力を発揮しないとの話もある。実際にプール内でライフルを自身に向けて発砲し、それを証明した物理学者もいた。であれば敵を水中に追い落とすか、あるいは自身が水中へ逃げ込むという手段も取れる。


 銃器の扱いを自ら体験するという機会はなかなかない。日本ではなおさら、武術に触れるよりも難しい。海外旅行で射撃場に行こうと思う人もいるかもしれないが、普段からあまり銃に慣れ親しんでいないと近寄るのも恐ろしいというのが本音だろう。

 しかし実銃にこだわらなければ、サバイバルゲームや射撃場を備えたエアガンバーというものがある。試しにちょっと触ってみたい、という方はそういった場所に足を向けてみてはどうだろうか。

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