下の巻
ふたたび
かの武芸書「九陰真経」は上下巻であった。上巻は理論であり、下巻は実戦の技を解説していたとある。理論だけでは実用がわからず、実践だけでは拳理がわからぬ。双方揃って完璧となることができる。
であればこの武術秘伝もそれに倣い、上巻で語った理論を下巻にて実戦――もとい実践してみようと思うのだ。
下巻はその内容を二つの項目に分け、それぞれ思いついた時に不定期に更新していく。
一つ目は「解説編」。
ここでは私、古月自身が過去に描いた戦闘描写を取り上げ、その解説を自ら行っていこうと思う。要するに公開反省会であり、厚顔無恥な自画自賛であり、そして露骨な宣伝活動である。
というのも、さすがに他者の文章を使って解説を書くほど私は神経が太くないのである。
なお私はまだまだ無名に等しい輩であるので、私の文章を解説することがどれほど役に立つかはわからない。むしろ無いかも知れない。そのあたりはもう各々方の判断で読み飛ばしてもらって構わない。
もう一つは「論考編」だ。
こちらは私が様々なシチュエーションについて武術マニア的観点から考察を加えてみようと思う。この場面で可能な対処は何か、どのように体を動かすべきか、あるいは何を携行すべきであるか、等々。お題の提示はいつでも歓迎だ。
他にも私自身が武術の鍛錬や研究を通した中で考えた諸々について記載していこうと思う。
この下巻については前々から計画していたことではあるものの、なかなか公開に踏み切れなかった。というのも、すでに述べたように私は私が無名であることを自覚している。その無名が自身の拙文、未熟な考察を晒すなど傲慢甚だしいのではないかと思っていた。
転機はあった。カクヨムではないが、とある賞を賜ったのだ。私の文章が認められたのだ。これは大きな自信となった。
加えて一度は筆を擱き、そして再開しても更新は滅多にない、そんな中でも閲覧者は増え続けた。まれに評価を頂くこともあった。私の秘伝はまだまだ求められている――そう自惚れてみるには十分だ。
かくして私は再び筆を執る。今しばらく我が戯言に相伴願おう。
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