(補遺)線を制する

 自らが攻撃する場合、相手の攻めを回避あるいは逸らす場合。どちらの場合でも共通する要点がある。

 それは「線」だ。


 最良の攻撃とは「最小限の動きで、最短の距離を進み、全身から発したすべての力を、相手のただ一点に注ぎ込む」ものである――と、「直線を描いて点を穿つ」の項で話した。

 相手の攻撃を回避、受け流す場合でも、それは相手の攻撃が描く線から逃れるということだ。


 ある書籍ではこれを「攻撃線」と呼称していた。

 相手の攻撃線上に自身の体があるのは危険な状態だ。だから身を躱す。相手の攻撃を逸らす。そして同時に、相手を自身の攻撃線に乗せる。

 つまり、攻防とは「線と線の引き合い、逸らし合い」なのだ。それは歩法による位置取りにも言えるし、実際の拳や蹴りによる応酬と防御にも言える。


 もしも双方が同じ直線上で攻撃を繰り出したなら、最後まで攻撃線をブレさせず守り抜いた方が勝つ。我々が存在する三次元世界では同じ座標に二つの物体は存在できない。攻撃線を守れなかった攻撃はたちまち押しのけられ脱線し、目標点に到達することはないのだから。

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