個性的な武器

 彼も剣、彼女も剣、対峙する相手も剣。

 しかし同じ剣という武器でも、きっと一振り毎に違うものであるだろう。まさか主人公から強敵、雑魚に至るまでが同様の量産品を携えてはいるまい。


 少なくとも主人公やその仲間たち、そして倒すべき強敵にはそれ相応の武器を持たせたいところだ。名のある武器を持たせたいところだ。

 戦闘を彩る名脇役、それが武器だ。彼らの個性を語らずしてどうするか。……いやまあ、素手の戦闘もあるけれど。


 私が武器を表現する場合、大きく二つの要素について述べているようだ。


 一つは「物理的特徴」。例えば、その武器は同種の武器と比べて大きいか、太いか、長いか、あるいはその逆か。真っ直ぐか、湾曲しているか。輝いているか、くすんでいるか。重そうであるか、軽そうであるか。色はどうか。飾りはあるか。元々が武器でない物(鉄扇や判官筆など)ならば、それは何であるか。


 これらは見たままの事実を述べるだけだ。そこに個性を出すためもう一つの要素を足す。


 それは「心証的特徴」だ。例えば、その武器は繊細で細身な女性のようであるか、重厚で剛直な男性のようであるか。烈火のような覇気を纏っているか、氷雪のような鋭さを秘めているか。獣のような獰猛さを醸し出しているか、貴人のような風流さを漂わせているか。


 要するに「何となく感じられる雰囲気」の事だ。人物描写における第一印象のようなものだ。

 武器とて誰かの手によって生み出され、様々な修羅場をかい潜って来た経験があるはずだ。それらによって形成された「風格」や「人格」とも呼べるものを加味して描写すれば、同じ武器でも違った趣になるだろう。


 ――と、ここまで言っておきながら、実は私が書く小説では武器そのものの描写は少ない。と言うのも、それが剣であり、一般的な剣の形をしており、剣以外の扱い方をしないのであれば、それ以上の描写はもはや蛇足であると考えているからだ。

 そんなわけで、私にはキャラに武器を持たせる際には以下三つのルールがある。


1. 一般に知られた武器(剣・刀・槍などの有名どころ)を使わせる

2. 特殊な形状の武器でも、一般に知られた武器や道具をベースにする

3. 画像検索しても結果が出てこないようなイロモノ武器は登場させない


 もちろん、これは私自身がデザイン力に乏しいがための「逃げ」でもある。そして同時にもう一つの企みでもある。

 それは、いずれ私の作品が書籍化されることになったなら、イラストレーターのセンスを駆使して武器をデザインしてもらおうという魂胆だ。絵を生業とする方にそのセンスを遺憾なく発揮してもらうには、下手な描写は無い方が良かろう。

 ――などと自身を正当化している。いやはや、いつになるかなど知れたものではない。


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 今回のネタはTwitterにて梧桐彰さん(@neo_logic)よりいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

 そして、すみません。リクエストを受けた後になって「特殊な形状の武器を扱ったことが無い!」と気づいてこんな内容になりました。おそらくご期待に沿うものではなかったかと……。


 私もこれを「弱点」と捉えて精進いたします。

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