似非解剖学
急所を狙うのは、急所への攻撃がより効果的にダメージを与えられるからだ。
急所を守るのは、急所を打たれればたちまち体が動かなくなるからだ。
では、なぜ急所は急所であるのか?
人体の構造上の欠陥、それが急所だ。ゆえに、急所が急所たる理由を詳しく知るにはその構造を把握する必要がある。
とは言え、誰もが医術の心得があるわけではないし、我々は真の武術家を目指しているわけでもない。取り敢えず小説内で取り上げられるだけの最低限の知識だけあれば十分だ。
今回は主な急所について、それらが何故急所であるのかを解説する。そして毎度ながらの言い逃れだが、これらはすべて私の浅学な理解の下に語る私見であり、学術的な裏付けがあるわけでないことを断っておく。
頭部については多くを語る必要も無かろう。脳髄に衝撃が加われば脳震盪を起こして危険であることは明らかであるし、目もいわずもがな、耳も三半規管をやられれば平衡感覚に支障が出ると容易に想像できよう。
四肢の関節部分は動脈が他の部位に比べてより表面に近い。特に
映画「セルラー」ではヒロインの女性が巨漢の敵に対して
指先のような末端は繊細な作業ができる反面、痛点も密集している。足の小指を箪笥の角にぶつけて悶えなかった人類は存在しまい。
胸部はすぐ近くに心臓がある。近傍の剣状突起や下部肋骨は胸部を守る骨格の中では脆弱な部位だ。特に下部肋骨の二対は胸骨に連結していないため折れやすい。これらの骨は折れるとそのまま心臓や肺に突き刺さる危険性がある。
腎臓には
肝臓も同様に血液が集中している部位である。
下腹は……何も言うまい。取り敢えず、子孫繁栄の望みを絶たれるのは精神的にも苦痛だ。
急所に攻撃を受けた人物がどのような症状に見舞われ、どのような苦痛を得るのか。この辺りにも想像を凝らしておくとリアルな(そしてちょっとエグい)描写ができるだろう。
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