秘技・点穴術

 武侠小説では当たり前のように「点穴てんけつ」という技術が使用される。人体に流れる「気」の流れを堰き止め、体の自由を奪ってしまう技だ。

 わかりやすく言うと「北斗神拳」である。ただし突かれても爆発はしない。


 北斗神拳が創作物であることは周知であろうが、点穴の技術そのものは実在する。と言っても、武侠小説のように相手の全身を硬直させたり脱力させたり、言葉を奪ったりはしない。急所として狙う部位と扱われているようだ。


 人体の経穴けいけつ――いわゆるツボ、気が流れるポイント――は百を超え、効能まで含めてすべてを把握しているのは鍼灸を生業としている方々ぐらいだろう。

 もちろん武侠小説家はそのような専門家ではないため、往々にして「要穴を塞いだ」と表現を濁すか、あるいはお決まりの経穴を使う。


 と言うわけで、頻出する経穴名とその効果をいくつか示す。もちろん独断と偏見による選出だ。


曲池きょくち

肘の外側、曲げたときに盛り上がる位置。

個人的には「ファニーボーン」の事ではないかと考察しているが、少し位置が異なる。

これを突くと腕が痺れ、武器を取り落とす。


肩井けんせい

首と肩の中間地点。武侠映画では大体この位置を突いて全身を脱力させ体の自由を奪う。


壇中だんちゅう

体軸中心線と両乳首を結んだ線の直交する位置。胸骨剣状突起の真上辺り。

この部分を突かれると眩暈を起こして昏倒する。


「唖穴」の名称を持つ経穴はなく、総称と思われる。これを突くと言葉を発せなくなる。

瘂門あもん穴」の事と考察するなら、後頭部、頸部と頭蓋の連結部分。


百会ひゃくえ

頭頂部。すべての経絡けいらくが集中する部位であるため「百会」と呼ばれる。

いわずもがな急所であり、打たれると命に関わる「死穴」の一つ。


※いずれも急所に近しい部位であることに変わりはないので、いたずらに他人に試したりしないように。


 なお、点穴の効果を解除することを「解穴げけつ」と呼ぶ。

 武侠小説でもないのにこれらを多用してしまうと作品イメージに関わるだろうが、中国武術を扱うキャラにやらせれば「気功の神秘」っぽさを出すのに使えるかもしれない。

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