相手の力を利用する

「相手の力を利用する」


 そう聞いて頭の中に思い浮かべるのは「合気道」や「太極拳」ではないだろうか。

 確かに、どちらも「自分は力を使わずに相手を投げる」「攻撃を水のように受け流す」といったイメージが一般的にあると思う。さらに言うならば「相手の力をわざと増大させて破綻させる」と言えよう。

 では、それ以外の武術には相手の力を借りる技法は存在しないのだろうか。自身の体が発した力だけで敵を打つのだろうか。


 ここで昔話を一つ。

 ある人物が道を歩いていると、背後から駆けて来る足音が聞こえてきた。何だろうかと振り返ってみれば、それは見知った友人であった。どのような友人かと言うと、挨拶代わりに拳を交わすような間柄だ。

 そんな友人が全速力でこちらへ駆けて来る……その人は立ち止まり、そして相手が飛びかかろうとした瞬間にひょいと足を持ち上げた。

 飛びかかろうとしていた友人は憐れ、目の前に差し出された足に自分から当たりに行ってしまったのであった。友人が腹部に受けた衝撃は、他ならぬ自らが地面を蹴り出した力に因るものだった。


 要するに、相手の動こうとしている先に何かを据え置いてやれば、後は勝手にぶつかってくれる。ただその場に立っている相手へ拳を打ち込むのと、こちらへ飛びかかって来る相手に拳を打ち出すのとでは相対速度が違う。掴んだ腕で体勢を崩し、相手がその崩れた体勢を元に戻そうとする瞬間を狙う攻め方もできる。


 とは言え、それらは「相手の力に真っ向からぶつかる」わけで、こちらが受ける攻撃の反動も大きくなる。加えて、相手が向かって来るのは多くが攻撃を仕掛ける場合なので、同時に攻撃を捌く技術も必要になる。

 ガンガン行こうぜ! なパワーファイターにはお似合いかも知れない。

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