直線を描いて点を穿つ

 理想的な攻撃とは何か。

 私はそれを「最小限の動きで、最短の距離を進み、全身から発したすべての力を、相手のただ一点に注ぎ込む」攻撃であると考える。


 動きが大きければ、相手は攻撃を察して回避や防御の行動を取る。より大きなダメージを与えるには相手が油断している瞬間を狙うのが得策だ。それなのにこちらの予備動作で身構えられてしまっては意味がない。加えて、複雑な軌道を描けば描くほどその間に威力は減退してゆく。ゆえに「最小の動き、最短の距離」であるのが理想だ。

 また、相手に与えるべき力が分散してはいけない。飛礫つぶてを喰らえば激痛だが、それが泥団子では大したことはない。砕けて力が発散してしまうからだ。


 そこで「直線を描いて点を穿つ」ようにする。

 棒で突きを繰り出すなら、その棒は長く真っ直ぐであるのが良い。拳を突き出すのも同様だ。進む軌道は真っ直ぐ。さらには拳、手首、肘、肩、さらには反対側の肩、それらすべてが「一直線上」に並ぶようにする。腕はもちろん、全身を使って一本の棒を作るのだ。

 接触の瞬間、これらが曲がっていると威力を殺す緩衝材になってしまう。


 当てる部位は極力面積を狭めて「点」にする。面よりも点の方が圧力がかかり、より威力が増す。拳でなく掌底を使う場合でも、接触点はほぼ手首の一点だ。手の平ではない。


 直線から点、その意識があれば相手の体を突き貫くような攻撃ができる。

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