古臭いフィルムで撮られた、モノクロ映画のような味の文体

古き良き、という言葉を使うと大正モダンや明治の文豪なんかを引き合いに出されますが、この方の文章はもう少し新しい昭和の良さです。
時代に取り残された、古い日本のような感想を抱くのに、描かれている風景は海外を想わせる。もちろん英名が出てるからという理由ではなく。

考えてみれば、現代の人にとって昭和の街なんてのはもう外国と変わりません、全く知らない、憶えていない街なんです。
そんな街を覗き込む楽しさがここにはあります。

短編集で一つの街のよう。
勧善懲悪、ハラハラミステリ、そんなものも良いですが、たまにはこの街を覗いてみてはいかがでしょう。

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