粒あんグッディ
GWも明けて今日は月曜日。
私はまだ、昼下がりの秋穂駅にいた。
なんてことはない。Uターンラッシュに巻き込まれるのがめんどうだったので、うしろに休みを延ばしていたのだ。
いっつもちゃんと仕事しているんだ、これくらいやってもバチは当たるまい。
「うーん……」
あまりの暇さについついうなり声が漏れてしまった。いかんいかん。
なんといっても、早く来すぎてしまった。
駅前散策はもう滞在中にイヤっちゅうほどしたし。
こんなときのためのVitaはうっかりおみやげ(と妖精さん)と一緒に自宅へ送っちゃったし。
駅前に(ビデオゲームのある)ゲーセンなんかないし(県庁ゲーセン課(仮)の方々がんばって!)。
ううーん、私はいったいどうしたら――
《♪てれれれ↓てれれれん↑》
お、メッセージの着信が。
なになに。お、千秋からか。
『今日は見送りに行けなくてすみません!』
というメッセージとともに、写真が一枚。
……えーと、パン?
これ、秋穂で暮らしているときに、たまーに見かけたことあったけど、一度も食べたことなかったな。
でも、なんでこんな写真送ってきたんだ、千秋は。
どれどれ、ちょっとそこのコンビニで買ってみるか。
落ち着いて食べたいので、改札を入りホームのベンチで食べることにした。
が、なんだこいつは。
見た目なんてことない丸いあんぱんのように見えるのだけど、陳列されていた棚はスカスカ。
なんとか一個だけ残っていたといった感じだ。
そんなに人気なの? この『粒あんグッディ』というものは。
ロングセラーと書いているからには、まあ人気なのだろう。
中身はマーガリン&粒あんとのこと。
よくあるよね。コッペパンとかでマーガリンと何かを合わせてサンドしてるやつとか。
ああいう感じなのかな。
まあ、すべては食べればわかること。
新幹線の始発駅。まだ誰もこないホームでガササと音を立てて私はそいつを開封する。
いただきます。
こういうパンは思い切ってガブリといかないと、具にたどり着かないからね。
大口開けてグッディに噛みつく。
……え! な、なんだこれ!?
具、めちゃくちゃ多い!
思い切っていかなくても余裕で届いていたなこれ。
よくあるコッペパンとかだと具の量が少なくて満足感が少ないんだよね。
しかも粒あんとマーガリンの量のバランスが最高。
甘ーい粒あんに濃厚でほんのりしょっぱいマーガリン。
ほあーこれは……いい。
確かにこれがロングセラーを自称するのもうなずける。
このパンにたっぷり満たされた粒あんとマーガリンで、私の心も幸せに満たされてゆく。
ふと、横を見ると、ベンチの肘掛けに妖精さんがたたずんでいた。
黒髪ロングに、ロングスカートのセーラー服。
ロング……セーラー!?
ロングセラーとかけてるの!?
「ダジャレかよ!!」
私のツッコミも気にせず、優雅にほほえむ妖精さん。
「また、いつでもいらしてくださいね。それでは、
そう言って、私のかばんに勝手にもぐりこんでいく。
グッディ。日本語で言うと、ごきげんよう。
なるほどね。千秋も気の利いたことしてくれる。
……そうだね、また、近いうちに。
グッディ、秋穂。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます