第48話 来し方から未来を読む
2017年初めてのもの書き手帳の更新です。今年もよろしくお願いします。
今年も読む読む修行は継続して参りますが、これまで以上に、目の前のことだけでなく「自分が歩んで来た道を意識した上で前に進む」ことを目指そうと思います。
もともと「猪突猛進を絵に描いたような」を自負する私ですが、ただ闇雲に進むだけの生き方では勿体ない、と思うようになりました。直感的に強くそう感じています。
そのきっかけは、昨秋に父が亡くなってから実家の片付けに通う中で、過去の自分と何度も出逢ったことでした。
「今の私に至る足跡」をたくさん見出したのです。
「今の私」が過去からの延長線上にあることは、頭では理解していましたが、それが、例えば社会に出てからの30年余の産物などでは決してなく、やはり生まれ落ちてから今日までの全ての蓄積の上にあったことを改めて実感する日々でした。
若い方々にはいま一つピンと来ない話かもしれませんが、半世紀以上生きてみると、直感、実感、納得の三拍子です。
中でもそれを強く実感した出来事の一つは、実家で発掘した高校時代の図書貸出カードの束でした。当時の司書さんが卒業時にお祝いのカードと共に封筒に入れて生徒全員に配ってくれたものです。いまと違って貸出は全て手書きカード制でしたから、いつ何を読んだのかが全てそこに詰まっていました。
当時の私は、図書室にある本を片っ端から借りて読みました。本を読むのが大好きで、貸出数が学年で一番多かったことは後で知りました。しかしこれにはちょっと事情がありました。実は自分だけでなく、母にも読ませようと、せっせと貸し出しを繰り返していたのです。
昭和一桁生まれの母は、学業成績も良く読書好きでしたが、戦前・戦中に「女に学問は要らない」「本を読むより家事手伝い」「読書禁止」とされ、何とか女学校には行かせてもらったけれど大学なんてとんでもない、勉強したかったのにとても悔しい思いをした、と何度も聞かされていました。それでも隠れて読書を続け、嫁入り道具の中に茶箱一杯の「鞍馬天狗」「大仏次郎全集」があったのは幼心にも覚えています。
子育てが一段落した後、母は毎週のように図書館に通って、まるで青春を取り戻すかのような勢いで本を読んでいましたが、それでも家事を優先する専業主婦としては限界があります。
そこで私は高校の図書室で借りては自宅に持ち帰り、母に「もう読んじゃったからどうぞ」と渡し、母が読み終えると返却し、また母が好きそうな本を探して借りる、を繰り返していました。
もちろん、私も借りた分はちゃんと読んでいました。本を渡す時の母の嬉しそうな顔に励まされて、それは卒業の日まで続きました。
けれども、もしあれが母が読むことを意識したのでなければ、好みが偏ってしまって、あれほど多くのジャンルを片っ端から読むことは無かったと思います。
その多読の経験が、いまの素地を築く一助となっているのは間違いありません。何事も経験しておくものだなあと改めて思うのです。
ちなみに、こういう時の理由などは、実は何でも良いのだと思います。とにかく、経験しておくことが大事だと。長く生きてくると、身体に身に付いたもの、脳に焼き付いたものが身を助けてくれることを実感しています。
少し話が逸れましたが、というわけで、知らぬ間に我が身に培われているもの、備わっているものを無視しては勿体ないと思うようになりました。
特に、誰に命令されたのでもなく自分から好きでやってきたこと、進んで積み上げてきたことは大事にしなくてはと、強く思うようになりました。
この先の時間がもう限られている年頃になったというのももちろんあります。出来ない事や足りないことを補うことも大事ですが、私にはもうそれほど時間は残されていないことはきちんと自覚しておこうと思うのです。
改善すべき点や修行については、もちろんこれまで通り真摯に取り組むつもりですが、今年はこれまでの蓄積を意識しつつ、その中で自分らしさを見極めながら、先に進むことを優先しようと思います。
今年は、自分が本当に書きたいものをもう一度考え直してみようと思います。いま連載しているお話は、自分でもとても気に入って書いていますが、もし明日この命が尽きるとしたら何を書き残すかと問うてみると、まだ他に選択肢があるような気がするのです。
カクヨムに参加して、連載を始めてからもう少しで一年です。とてもたくさんの貴重な経験をさせて頂き感謝しています。
コンテストに参加したことも、講評をお願いしたことも、何度も凹みながらも貴重なアドバイスを頂けたことに感謝して修行を始めたことも、読む修行だけでなく映画や脚本も注目するようになったことも、どれも本当に有り難い経験です。
その中で、自分が目指すものに最も効果的で役に立つ関わり方は何か。それも模索していこうと思います。
しばらくはコンテストと距離を置いて、本当に書きたいものと向き合っていく時間を取るつもりです。ですので、当面はコンテストは応援団として見守られて頂きます。参加されるみなさん、どうぞ頑張ってください。遠くからエールを送ります。
皆さんにとって素晴らしい2017年になりますように♪
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