浩一VSふたば

二人の熱愛デートはその後も続いた。ふたばは箸で摘まんだ、豆を清十郎の口に運んだ。

「ああ、美味しい」

「ふふ、それはあたしの手作りじゃないよ。スーパーのお総菜だよ」

「いえ、愛情が籠っています」

ふたばがクスッと、微笑んでいると、急に、清十郎の顔が強張った。そして、突然、彼女を突き飛ばした。

「ふたばさん、危ない」

咄嗟のことに、ふたばは驚きながら、草むらに投げ出されると、真空波のようなものに、清十郎の身体は吹き飛ばされ、さらに、それはメスのように、彼の皮膚を削り取った。


「ぐぅぅぅ」

肌が赤青くなり、服には血が滲んでいる。見ると、遠くの方から、背の高い男が近付いて来るのが見えた。それは、今時珍しいパンチパーまで、ヤクザと学生を足して割ったような見た目をしていた。


「おい、清十郎。鈍ってるな。今のを避けられないとは」

「ぐぐ、兄貴か」

「恋愛禁止令忘れたか。やれやれ、お仕置きが必要だな」

吉田浩一が、木刀を構える。再び、さっきの真空波を放つつもりらしい。すると、草むらに投げ出されたはずの、ふたばが、彼の前を遮るように立ちはだかった。


「おい、女。邪魔だ」

「ふん、悪いが俺は男だ」

ふたばは清十郎の腰にある木刀を奪うと、ニヤリと笑った。

「ねえ、勝負しない。さっきの技、俺にも浴びせてよ」

「けっ、その構えからして、お前、只者じゃないな。俺はジェントルマンだなんて、世間では言われているが。本当は、こういう男だ」

浩一は居合い斬りのような構えをした。そして、引き抜いた木刀で、横一閃、空を斬ると、先程と同じ、真空の刃が、ふたばに襲い掛かった。


「ふうん、それ」

ふたばは真空の刃に向かって、木刀を振った。一見すると、意味不明なその行為であるが、彼の放った、真空波は、丁度、ふたばを中心に、真っ二つに割れ、まるで扇のように、左右の木々を斬り倒して行った。


「バカな、俺の大大蛇が」

「あんた、弱いね。今のは殺界って言うんだ。覚えときなよ」

清十郎は薄れ行く意識の中で、ふたばの後ろ姿を見た。そうだ、あの技は知っている、自分が結城双葉と、道場で戦った際、彼が最後に見せた技だ。自分はそれを受けて破れたのだ。しかし、それ前後の記憶は飛んでおり、良く、覚えていない。しかし、今、浩一も同じように、それを受けて、倒れていた。


何処かの建物、その中の学校の体育館ほどの広さを誇る、畳部屋の中心で、立花丞は笑った。

「あのバカ、また使いやがったな。流石の俺も庇いきれないぜ」

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