第3話『鷹のウルザ』(4/5)

 全ての予定を中止にし、兵を集めてナグハを出立した。 総大将にシュウ、麾下の将校としてグレンとハコンというふたりの勇者を据えた、今ではナグハの最精鋭と謳われる布陣である。


 万一に備えてティラード隊を市場の守備に配し、不在の間の陣頭指揮はクリクに委ねた。 クリクはまた軍を率いて出て行く主人と目を合わせようとしなかったが、与えられた仕事に背くことはないはずだ。

 総勢六〇名近くにまで増員した兵はいずれも士気高く、全員にカイナが鍛え上げた鉄槍を行き渡らせている。 万が一、風の民との戦になっても引けはとらないつもりだったが、同時に戦わずに事を収めるつもりでいた。


(風の民を敵に回すと、これから先やりにくくなる)


 今、ナグハ新市場は成功に近づいている。 支配圏の外ではオミ商会に敵対する大商家が次々に滅ぼされ、オミ家によるゲンガン大市場の独占が現実味を帯びてきているところだ。

 シュウの計画は、そこで次の段階に進む。 その時、風の民との間に対立の芽があってはならない。


 血気に逸った守備兵が向こうから風の民を襲うなどしていたら、大事になるぞ。

 シュウは焦りを隠しながら、ほとんど走るような速度で行軍を続けた。 二日で南監視塔に到着すると、守備兵たちが歓呼してシュウを迎えた。


「シュウ様だッ! シュウ様が来た!!」

「喧嘩屋のグレンにハコン殿! 二人の勇者もご一緒だぞッ!!」


 十数人の守備兵が喜ぶのを聞いて、グレンが唇を曲げた。 ハコンは無反応で、兵たちを整列させている。


「ちぇっ…… ハコンさんには“殿”呼びで、俺は呼び捨てかよ」

「そう腐るな、喧嘩屋。 代わりにハコンには通り名がないぞ」


 のんきな奴だ、と思いながらなだめておき、守備隊長の元へ走る。 ちょうど会いに行く支度をしていたらしい守備隊長が恐縮して頭を下げてきたが、すねを軽く蹴って話を促した。 こっちは急いでるんだ。


「風の民はどこだ?」

「それが、奴らめは村の目と鼻の先です。 野営地を築いています。 堂々と」


 足のを使い、物見台の上部へと跳んだ。

 監視塔と言っても、木造りの小屋の屋根に台を伸ばしただけの代物だ。 屋根に乗り、台の出っ張りを掴んでよじ登ると、確かに草原の向こうにいくつかの幕舎の連なりが見える。

 丸い形の幕舎は風の民が好んで使うゲルというものだろう。

 羊毛を固めたフェルト地で覆われている為に、外観も羊の色をしている。 草原の激しい風から身を守り、しかも解体して容易に持ち運びが出来る優れものらしい。

 いつか聞いた話を思い出しながら、真下を見た。


「風の民とはどうなった? 奴らは襲ってきたか? 戦ったのか?」


 はしごを中ほどまで昇ってきた守備隊長に声を投げつけると、苦笑い混じりの顔で答えを濁されてシュウは苛立った。


「いえ、その、なんというか」


 なんだってんだ。


「もごもご言ってんじゃねえ! 殺されてぇか!?」

「ひいっ!!」


 落っこちかけた守備隊長に手を伸ばし、引っ張り上げながら言った。 焦りで声が低くなっている。 あまり余裕が持てない。


「俺が来るまでここで何をしていたか、一言で話せ」

「は、はひっ……!」

「話せ!」


 鼻水を垂らして涙目になりながら、男は口を開いた。 いい歳をしてみっともない奴だ。


「な……」

「な!?」

「何も、しませんでした……」

「……ほう?」

「すみません、怖かったんです! 俺たちゃ今まで風の民なんて見たこともなかったし……」

「ほうほう」

「それにあの四つ足の化け物! ありゃ一体なんなんですか!? なんであんな速く走る生き物の上に座ってられるんですか、あいつら!?」


 守備隊長が泣きじゃくりながら弁明する。 おおかた、ナグハの軍はどんな時でも勇猛果敢に戦うとかなんとかありきたりなことを誰かが言っていたのだろう。 ろくでもない噂を流す奴がいたものだ。


 しかし、これで一安心。


「そうか、何もしなかったのか! なーんにもしなかったのかぁ!」

「ひい!」

「うひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」


 手をぶん回すと、守備隊長の身体が物見台の外へ浮いた。


 ウワァァァァァァァァ……!


 落ちていく守備隊長の叫び声が、段々低くなっていく。 木板を張り合わせた屋根が突き破れる音が、無性に小気味よく響いた。

 まったく、ひやひやさせやがるぜ。


 風の民との間に衝突が起こっていないのなら、穏便に済ませることは可能なはずだ。 それどころかこの場で風の民との協定に筋道をつけることも不可能ではない。

 一時は焦ったが、むしろ好機が来た。 ならば、無駄なく得をかすめ取る。


「聞こえてっかぁ!? 風の民の戦士たちよォーッ!!」


 声を強く張り上げる。 ゲルの中に詰めた連中にも届かせるつもりで叫んだ。 喉の強さには絶対の自負がある。 草原の激しい風にも、きっと負けないだろう。


「お前たちが会いたがっていたオミ家のシュウ様がここへ来たぜぇっ!! 俺と話がしてぇってんなら、相手になってやらぁぁぁぁーっ!!」


 声の波が空気を叩きつけ、震動させる。 真下の兵士には耳を塞いだ者もいる。

 届いただろうか? 考えるまでもない。


 遠く見えるゲルからいくつかの点が動くのを確かめ、物見台から飛び降りた。

 尾をしならせて空中にて姿勢を整え、きっちりと前転で着地。

 土踏みの調子は、悪くない。


「さあて、風の民とご対面だ!」


 風の民は勇猛であると共に気難しい連中だが、舌で戦うなら勝てない相手ではない。 いつか風の民と交渉する為、最低限の知識は頭に入っている。

 もしかすると、今までで一番気楽な戦いになるかもしれない。


 本気でそう思っていたが、耳のふちの疼きが収まることは、何故かなかった。


 風の民の馬群が、目前に迫る。

 先頭を走る黒い馬に、女が乗っている。


      ◆


 シュウは全軍を一列に並べ、監視塔の少し先に立たせた。

 斜め後ろには田畑が見え、前方には見渡す限り草原が広がっている。 人間と風の民の領域の、ここがちょうど境目の辺りだ。


 向かってきた馬群はシュウの前方、一〇〇枝(約50m)ほどの距離まで一気に近づき、そこで止まった。

 首を上げて高く馬を目の当たりにして、わずかに兵がざわめく。 多くの兵は馬を見るのも初めてなら、獣を乗りこなす様を見るのも初めてだ。 シュウ自身も、伝聞でしか知らなかった。

 馬上に人が在るということが、ここまでの威容をもたらすとは伝え聞いてすらいない。 目の前まで丘がやってきたようなイメージを覚える。 中でも先頭を駆けてきた黒い馬は格段に精悍で、巨大と言っても差し支えがないほどだ。


 黒馬の首筋を軽く撫でていた褐色の女が、こちらを向いた。

 たてがみのように長い銀色の髪。 黄金色をたたえた切れ長の瞳。 風の民のトレードマークである羽毛の耳は、艶のある黒。

 そして、極め付きには冗談かと思うほどの軽装が特徴的な女だった。


「なんだあの女」

「寒くねぇのかな……」


 馬と遭遇した驚き、そこに沸いた怯えを忘れようとしてか、兵士の何人かが囁き出した。 笑っているものもいる。

 そう思うのも無理はない。 女が身につけているのは胸当てと腰巻きだけで、馬の胴の隣に下がっている両足は、甲と足裏に布を巻いてはいるもののほぼ素足だ。 馬上から見える腹は鍛え込まれており、うっすらと筋肉を分ける線が見てとれる。

 付き従う騎馬兵たちも軽装ではあるが、革鎧くらいは身につけている。


 ともすれば悪ふざけと受け取ってしまいかねない風貌だが、かなりの曲者だとシュウには分かった。

 風の民にとって、鎧で身を固めて戦いに臨むことは恥。 戦士として高い位にある者ほど、身を軽くして戦場に立つという。

 兵を率いており、なおかつあの軽装とすれば、族長かそれに並ぶ大戦士であることは間違いがない。


 気を引き締めてかからねば。 シュウは被っていた鉄兜を脱いで小脇に抱え、列の一歩前へ歩み出た。

 黒い馬の女が、それに応えるように進み出る。


「シュウ・ヴォクン・オミ。 貴様か?」

「はいよ、いかにもだ」


 馬から降りようともせずに言った女に、シュウはにこやかに答えてみせた。 女の表情は、全く変わらない。 たてがみが風に揺れただけだ。


「そういうあんたは、風の民の族長かい?」

「ウルザ。 族長は、叔父上」


 ウルザと名乗った女は一つひとつ、言い切るように話した。

 他人を寄せ付けない、峻烈さのある語り口。

 しかし、近づかなければならない。 向こうが話さないのなら、こちらから。

 シュウは喉仏を軽く触ってから話し始めた。


「いきなり風の民がやってきたっていうから、何かと思って飛び出てきちまったよ。 まさか戦争だとしたら、どうしようってな。 勇猛なあんたらとは出来ればやりあいたくねぇもの。 その馬も、すげぇもんな。 周りの奴らのも大したもんだが、あんたのは特にすげぇよ。 毛並みもいいし、何よりでけぇ。 後ろに乗せてもらいたいくらいさ。 俺なんかじゃ振り落とされちまうだろうけどね。 それにその鎧も、いいね。 余程の戦をくぐってきたと見えるが、傷一つねぇ。 うちの連中なんざ、毎回血塗れのぼろっぼろよ。 見習わせたいもんだね」


 まくし立てるように語った。

 後ろで聞いていた兵がむっとするほどに褒めちぎり、賞賛の雨を見舞った。


 が。


 全く、無反応。 ウルザは何も応えようとはせず、氷のような眼つきでシュウを見下ろしている。 その真下では黒馬がシュウを睨みつけている。 主が抱いた何らかの感情を、代わりに映し出しているような気がした。


「え、ええと…… そうそう! あんた、その得物もイカしてるな。 棒を上手く使える奴は珍しいんだ。 しかもいい色の木だ! 見つけだすのには苦労したろ! 俺ん家の庭にも樫の木が立ってるが……」

「噂通りの男だな」

「立ってるんだ、が……」


 シュウは黙った。 ウルザの一言が、シュウから喉の力を奪った。


 これはシュウが会得してきた話術とは性質の違う、声による攻撃だ。

 寡黙だが雄弁。 声も張り上げず、ただ風に乗せた一言に意志を乗せる。


 黙れ。 ウルザはそう言ったのだ。

 お前の言葉を信用しない。 そうも言った。

 だから話せない。 喉に薄氷が張り付いたような気さえする。


 商人やその支配する世界で生きる者が相手ならば、シュウには何人であろうとも論破し、煽動する自信があった。

 だが、こいつには分が悪い。

 それに、噂とはなんのことだ。

 嫌な予感がする。 耳の縁に熱が籠もる。


「最後に、お前と話したがっている者がいる」

「なんだと?」


 最後? 誰が。


「来られよ、客人」


 北風が吹くと、正面を向いたままウルザが告げた。 ウルザにとっては、向かい風。 後ろに流れた声に導かれたように、小さな人間が進み出てくる。

 いや、騎乗する者たちに囲まれて、小さく見えただけだろうか。

 くたびれた高級商人の装束をまとった、老人が前に出た。


「久しいな。 シュウ・ヴォクン・オミ……」


 誰だ。 あんなみすぼらしいジジィ、見覚えがない。

 覚えはないが、ふりだけはしておくことにした。 まだ風の民との協力を諦めるつもりはないのだ。 誇り高く気難しいウルザの客分だとすれば、ひとまず慎重に相手をしなくてはならない。


「ああ…… あんたか。 ずいぶん老けたな」

「貴様ら兄弟のせいでな」

「そのことなら、悪いことをしたと思ってる」


 くく、と男が含み笑いを漏らした。 血走った眼で、シュウを睨みつける。 迫力はない。 ただの老いぼれの眼だ。 しかし、どこか狂気に近いものがある。


「貴様らしい言い草だ! わしから全てを奪っておいて、よくそんな口が叩ける!」


 ぴんと来た。

 全てを奪ったつもりはないが、念入りに奪い尽くした相手なら、いる。

 とどめを刺したのは上の兄だが、最初に奪ったのはシュウだ。

 その男は確か、行方を眩ませているはずだった。


「その減らず口でわしの名を言ってみろ! 言えるものならなーッ!!」

「バルト商会当主! クシンタン・バン・バルトーッ!」


 大声で答えると老人の肩が震えた。

 こんなにみすぼらしくなっているとは思っても見なかったが、やはりクシンタンに間違いはなかったらしい。

 あちこちで暴れ回ったので候補は何人かいたが、オミ家の兄弟に恨みを持っていてなおかつシュウに逆恨みしそうな男と言えば、こいつしかいないのだ。


 肩を落としたクシンタンに、シュウは追撃をかけに行く。 ウルザには通用しない話術も、同じ商人筋の人間が相手ならば十二分に通る。 だとすれば、ウルザとの交渉の糸口にもなるはずだ。


「全てを奪っただと? よくもそんな口が聞けたもんだ。 元はといえば、お前が戦士を雇って俺を殺そうとしたのが全ての始まりだったんじゃないのか?」

「……そうだ」


 あっけなく、クシンタンが自らの非を認めた。 おかしい。 成り行きが違う。

 クシンタンが風の民をこちらにけしかけて失地回復を図っている。

 シュウはそう読んでいた。 なのにこれは、話がおかしい。


 また調子を崩された。

 耳の熱が、まだ引かない。


「全てはわしの大それた野心が招いたこと。 貴様ら兄弟の報復に打ち勝てなんだのは、わしらバルト商会の弱さ故……」

「あ、ああ…… そう、だな……?」

「敗れた者がどうなるか。 王という言葉に魅惑される前に、わしはもっと考えるべきだった」


 クシンタンが皺だらけの手を懐に突っ込んで、何かを取り出した。

 黒光りする、刃物。 黒曜石の短刀。 武器にはならない。

 だが、聞いたことがある。

 古い商人には、盗賊に囚われた時の為に小刀を持ち歩く者がいるのだと。


 積み荷を守れぬ商人は、潔く死ね。

 古き良き時代の気骨ある商人の美学。 カビ臭い話だ。


「我が命を捧げ…… ここに送還の儀を執り行うッ!!」


 クシンタンが、顎の真下で天に向かい立てた短刀を突き上げる。

 左右の顎の間、骨のない部分に入り込んだ刃先が、老人の命を貫いた。


「ぐぶっ……!!」


 クシンタンの口と鼻の穴から、紅いものがあふれ出した。

 血走った眼がシュウを捉え続けている。

 眼をそらしたい衝動にかられたが、シュウはこらえた。 怯えたと取られたくないという理由もあったが、心の中のもっと別のところが逃げることを許さなかった。


「頼み、ましたぞ、ウルザッ、殿ッ……!」

「承知した」

「ごふっ……!」


 霧のように血を吐いて、クシンタンが事切れた。 仰向けに倒れて動かなくなった老人には一瞥もくれず、風の民が構える。


「送還の儀は果たされた」


 送還の儀。 シュウは頭の奥をかき回すように考えた。

 風の民の、送還の儀なる風習。 一体何を意味している。 奴らは何の為にここまで来た。 思い出せ。 目的を知るんだ。 考えろ。 打開策があるはずだ。


「クシンタン・バン・バルト。 見事な男だ。 土の民にしておくのが惜しいほどに、立派な首捧げだ」


 無理だ! 時間がない!


 シュウは後ろへ飛び退き、右手を振り上げた。

 全軍が戦闘の開始を悟り、横列を崩す。

 槍の戦い方は仕込んできている。 風の民との戦い方も想定には含まれている。

 不本意ではあるが、避けられない戦いなら勝つしかない。


「シュウ・ヴォクン・オミ」


 ウルザが樫の棒を天に掲げた。 背後で見守っていた騎馬兵が、一糸乱れぬ動きでウルザの周囲にまとまる。


「立派に戦え」


 貴様を、必ず、倒す。 裏側の言葉が、シュウの胸を抉る。


 怯えていられない。 やれるはずだ。

 勝てない戦からは逃げると決めてきた俺が、退いていない。 自分の勘を信じろ。


 ウルザが棒を構える。 黒い馬が、意志を汲み取ったように走り出す。

 麾下きかの騎兵たちも、駆け始める。


「うろたえるな! 全軍打ち合わせ通りにやれ! 双子山そうしざんの陣!」


 未知の敵に緊張する兵を叱咤し、シュウは号令をかける。


 ハコンとグレンが前方に立ち、兵たちはその後に続いて密集する。 二人を軸にした部隊を前方に離して配置し、中央はシュウ自らが受け止める。 天から見下ろせば、谷を挟んで二つの山がそびえる形になる。 故に双子山の陣だ。


 総大将自らを囮に使い、中央突破する敵を受け止める。 足止めを食らった敵軍は、山のいただきを為す最精鋭が側面から包み込むように倒す。

 突進力に秀でた風の民を打ち破る為に想定した陣形のひとつだ。


「さあ、かかってこい、俺が受け止めてやる!」


 魔剣を抜き放ち、叫ぶ。 眼前に見える騎兵の姿が瞬く間に大きくなる。


 馬上のウルザが棒を左右へ一度ずつ振った。 軽い振りは、奴らなりの合図だろう。 応じた騎兵隊の一部が分離して、双子山の頂点との対決に進路を取る。

 こちらの意図を即座に見抜いたところは今までの敵よりも上手だが、予想の内だ。 この程度の陣形に即応できない相手なら、最初から協力する必要もない。


 陣形までは読めても、こちらの本当の強みは読めていない。

 馬の恐怖をぶつけてくるなら、鉄の恐怖で迎え撃つ!


「震えろ、風の民! シュウ・ヴォクン・オミに魔剣在りッ!!」


 シュウが叫ぶと、ウルザの唇が動いた。


 ――?


 声が、聞こえてこない。 口が動いたのは、見間違いではないはずだ。

 黒馬の眼が、不意に獰猛な光を帯びた。 死んだクシンタンの顔が重なって見える。


「っ!?」


 正面からの突風。 ウルザの姿が消える。 違う。 何かに視界を遮られた。

 何かが、シュウの真正面に出現した。


 馬の顔。 黒い馬。 視界を埋め尽くしている。 近づいている。

 ぎらついた眼が、シュウの眼と接するほどに。


 ――ごずん!!


 目の前が白くなり、黒くなった。

 空が見える。 空が、ゆっくりと動いている。

 空の上に、竿立ちになった馬の脚がある。 馬の上に、女がいる。

 見下ろしている。 ウルザが、俺を見下ろしている。


「魔剣?」


 ウルザの声が響いた。 風に乗って、遅れて耳まで届いた。

 何が起こったのか、シュウはようやく理解した。


 ウルザの馬が近づいてきて、シュウの鼻先に頭突きを食らわせた。 それだけだ。 おかしなことは、何もしていない。


 ただし、その突進は音よりもはやかった。


 吹き飛ばされたシュウは後ろ頭を地面に打った。

 ゆっくりと流れていた景色が、夢が醒めたように元通りの速さで動き始める。

 裏返しに見える景色が、真っ赤に濡れている。 槍を持った兵たちが、赤色になって天井に張り付いている。 黒い馬から黒い風のようなものが飛んでいき、次々に兵士が天井に張り付いていく。


 いや、そうじゃない。 部屋の外に天井はない。 あれは地べただ。

 みんな、倒れているのだ。 俺も、あいつらも。


 今、倒れている。 死んでいる。 殺されている。


「ハァァァァァァァーッッッッ!!」


 黒い風の主、ウルザの声。 気を込めた叫びを伴い、樫の棒。 肩の力で突く。

 兵士の頭部だけを狙い、通り道の相手を打ち抜いていく。 顔面を正確に射抜かれ、死体が次々に増えていく。 騎兵の突撃に備えて分厚く兵を並べた陣が、突き抜かれている。

 構えた槍も何も、関係ない。


「――様、シュウ様っ!!」

「お気を確かに、シュウ様ーっ!!」


 急に、地面が下になった。 誰かがシュウを抱え起こしたらしい。

 脳を揺さぶられ、考えが定まらない。 何が起こった。 今、ウルザは何をした。


 ――カーバ、チェッタ、マイセン、ヴィンスッ――


 声。 ウルザの声が聞こえる。 呪文のような気がしたが、違う。

 名前だ。 ウルザが、部下の名前を呼んでいる。


 ぼやけた視界の先で、双子山に向かっていった馬群が遠巻きにまとまっている。 戦い始めた時より数が減っている、ような気がする。


 ハコンとグレンが、山を崩してこっちに向かっている。

 騎兵たちは追ってこない。 分かる。 ふたりに押し返された後だからだ。

 やったのかよ、お前ら。 俺は、だめだったけど。


 ――見事だ、土の民。 そこまで強いとは、思ってもみなかった――


 ウルザの声が、また遠くに聞こえた。

 何を言っているんだ、こいつは。 俺の兵士をあっさりと殺しておいて。 構える間もなく蹴散らしておいて。

 しかも、俺にだけは馬の頭突きで済ませておいて。 一体、何を。


 ――クシンタン殿が勇者と言っていたのも、嘘ではなかった――

 ――我らの相手がお前たちで良かった――


 なんなんだよ、てめぇは。


 シュウが脚を動かし、後ろへ振り向いた。 まだ意識がはっきりとしない。 自分の動きが緩慢なのか機敏なのか、自分で分からない。 朦朧とした意識が、ウルザへの怒りだけで身体を動かしている。


 ――お前たちを見くびっていたことは、謝罪しよう――


 振り向いて、ぼやけた風景の中から、ウルザを見つけだす。

 ウルザの所在を突き止めて、意識が透き通った。

 背筋から脳髄まで、一息に痺れが走る。

 揺らされた脳を、形のない衝撃が強引に元に戻した。


「おい、なんだ…… それ……?」


 ウルザが立っていた。 黒い馬の背に、直立している。

 構えた棒の先から滴り落ちる血が、風に流れていく。


 冗談のような風景。 しかし、冗談ではない。

 あれほどの死を撒き散らす戦士の、常識外れな構え。

 それが何を意味しているのか、少なくともシュウには分かる。


「奥義を使う。 お前たちも、ぜひ使え」


 ウルザはまだ本気を残している!


 黒い馬が駆け出した。 棒を構えて真上に立つウルザは、微動だにしない。 地上も馬上も、ウルザにとっては等しく立つ為の場所になる。

 奴はその状態から、奥義を放つと言った。


「シュウ殿、策を!」

「おかしら!!」


 ハコンとグレン。 傍らの勇者が指示を仰いだ。

 側面からウルザ以外の騎兵が突っ込んでくる。

 全軍がシュウの言葉を待っている。 猶予はない。


「シュウ様ぁっ!!」

「逃げろ!」


 これしかない。 遅れに遅れたが、野生の勘がそう告げている。 側面の騎兵だけが相手なら槍の密集で押し返せるが、ウルザには勝てない。 ウルザだけが相手ならハコンとグレンの連携で押し勝てるかもしれないが、側面をいなすのは不可能だ。


「今、なんと」

「逃げるんだよ、勝ち目なんかねぇ! ウルザは駄目だ。 あいつは強すぎる! 全員で逃げろーっ!!」


 全軍の士気を破壊するつもりで、泣き言をぶちまけた。

 さあ、散れ。 巣を荒らされたねずみのように駆け回れ。

 そうすれば、誇り高いウルザが追い討ちすることはない。


「御意」


 ハコンが前に出た。 言っていることとやっていることが、違う。

 俺は、逃げろと言ったんだ。


「ハコンさん、やるか!」

「うむ」


 グレンまで。 何のつもりだ。 俺の言葉が、聞こえてないのか?


「あの女は俺とハコンさんがなんとかする。 てめぇらはおかしらを頼んだ」

「横から来る者どもは勝てぬ相手ではない。 臆せず馬を突けば追い払える」

「俺の命令を聞かねぇつもりかぁぁぁっ!!」


 叫ぶとハコンがこっちを見た。 見た、だけだ。


「幸運を祈ります、我が主よ」


 背中だけでそう言い残した。

 大剣を担いだハコンと、拳闘の構えのグレンに率いられ、少数の兵がウルザの前へ駆けていく。


 直感した。 あれは消えていく背中だ。 このままでは、死ぬ。


 誤算があったのだと、シュウは悟った。

 計画を胸に抱いたその日から、人の心を制する術を心得たつもりだった。

 他人を怒らせ、怯えさせ、喜ばせ、おだてる。

 全て実践し、上手く扱ってきたはずだった。


 だが、他人を信じさせることはしてきても、ことなど今までの人生で一度もなかった。

 信じた相手の為に捨て身になる味方など、シュウの想定にはない。


「馬鹿野郎ぉぉーっ!!」


 脇から二人組の兵士がシュウを掴んだ。

 身動きが取れないまま、ハコンたちが遠ざかる。


 みすみす失うのか、自ら仕立てた勇者を。

 友と呼べたかもしれない、仲間のことを。


「ふたり一緒に勇者が来るか」


 ウルザの声音が違う。 好奇に弾んだ声色。

 冷厳にシュウを断じたあのウルザではない。

 強敵を求め、死闘を好む純粋な戦士が、その全力を見せようとしている。


「相手にとって不足なし! 行くぞ、ギーメルッ!!」


 ギーメルと呼ばれた黒馬が、身のこなしで応えた。

 前脚を曲げ、首を下げる。

 前傾姿勢になった馬の上で助走したウルザが踏み切る。


 ヒヒィィィィィンッ!!


 と共に、首が上がった。

 ウルザの全体重を支えた首が、天に向かってかち上がる!


 跳躍。 ではない!


「ぐぎゃあぁっ!?」


 ハコンの真後ろにいた兵が、血を吐いて事切れた。

 ウルザの振り下ろした棒が、肩口にめり込んでいる。


「何ぃっ!?」


 ハコンをして、叫ばざるを得ない。

 跳躍の頂点に達したウルザが、瞬く間に部隊の真ん中を襲ったのだ。

 何が起こったのか、恐らく間近で見ていた者たちにも想像がつかない。


 打ち据えた反動を駆使し、倒れゆく兵士の肩を踏んでウルザが後方へ跳ぶ。

 狙われているのは、手近な相手。


「ハコンさんッ!!」

「むうっ!?」


 真後ろの、それも上空からの攻撃。 ハコンは咄嗟に柄の根本を握った大剣で受け止める。 だが、面積の広い剣の腹を使うのがやっとだ。 刃を立てていれば、棒ごと斬り裂けていたかもしれない。


「ほう!」

「ぐっ…… ううっ!」


 真上から力で押し込まれ、ハコンの踵が草原の土にめり込む。


「よく防いだ。 実を言うと、私は馬に乗って戦うのは不得手でな」

「何をっ……!」


 ハコンが握り直した剛剣に力を込め、巻き返しを図る。

 ウルザは鍔迫りには持ち込まず、剣の腹を蹴り出してまた上空へ跳ぶ。


「股を締めると、我が愛馬は不機嫌になるのだ」


 跳んだ先にいた兵士の首が、三つ同時に消えた。 横薙ぎの振り。

 言葉通りだ。 馬上のウルザは全力を出していなかった。 最初のぶつかり合いでも、全ての攻撃は突き。 頭を抉られる以外の死に方をした兵士はいない。


 馬を駆る戦士は、馬の為に下半身の力を奪われる。 の力加減で馬との意思疎通を図る必要がある上、足が地面につかないので踏ん張りが効かないからだ。

 シュウが馬上の兵に勝ち得ると踏んでいた理由もそこにある。


 だが、ウルザの芸当はそんな次元の話ではない。

 空中にいる以上、踏ん張りが効かないのは同じことのはずだ。

 にも関わらず、ウルザが振ると樫の棒が斬撃の武器に変わる。


 落下の勢いを精妙に乗せ、そこに加えているのはの下から来る力だけ。


 そんな戦い方で、あんな武器で、こんな殺し方を、奴はやる。


 シュウが見出し、優れた武器と活躍の場を用意して育てた勇者たちとは根本的に性質が違う。 言うなれば誰の意図もなく現れた、殺し合いの天才。

 本物の勇者と呼べるものがあるとすれば、それはウルザの他を置いていない。


 まがいものの勇者、ハコンとグレン。 ふたりに出来る、最善の策は――


「負けるものかっ……!」

「意地があんだよ、こっちにもなぁっ!!」


 違う!

 逃げて、傷を癒して、作戦を立てることだ!


「槍を立てろォっ!!」


 ハコンの号令で兵たちが一斉に槍を上空へ向けた。

 ウルザの奥義の正体は未だに見えない。 はっきりしているのは、跳躍し、消えたように襲うということ。 猛禽が狩りをするように上空から急降下し、棒ので仕留める技だ。 ならば正体が見えなくとも、着地点を封じる。 ハコンの考えは正しい。


「そろそろ、来ると思っていた」


 落ちてくるウルザが、余裕たっぷりに笑ってみせる。

 構えた槍の数々に、揺らぎはない。


 突然、横風が吹いた。 どよめきが起きる。

 落ちてきていたはずのウルザが消えている。


「馬鹿な!」


 真横。 風に乗ったウルザが軌道を変え、槍の山の外に降りてきている。 それを受け止めるように、ギーメルが駆けていた。 あるじの落下に合わせ、頭を正面に向けて突進する。


「セェアァッ!!」


 ギーメルの頭を踏み台に、ウルザそのものが風の疾さで切り込んだ。 正面で受けた兵士。 槍を構え直す暇はない。 斬撃。 血飛沫が舞う。 また一人減った。

 まだだ。 槍山の懐深くに入り込み、次の獲物を狙っている。


「てめぇぇぇぇっ!!」


 手近にいた兵士を狙ったウルザを食い止めようと、グレンが突っ込んだ。

 刃を逆手に握った、斬る拳。 全力の正拳は誰もが眼を見張るほどに速い。


「む」


 ウルザが虚を突かれた兵の肩に手を突く。 腕力だけを使って、前転しながら跳ねる。 突き込んだグレンの拳が空を切る。 味方が近すぎて、振り切れていない。


「いい眼だ、少年!」

「ウゥルザァァァァッ!!」

「だが私の方が強い!」


 宙返りしたウルザの踵が、グレンの延髄を叩いた。

 グレンが白目を剥き、前のめりに倒れる。

 その首筋を踏み台にして、ウルザはもう空の上に戻っていた。


「ぐ、グレンがやられた!!」

「うろたえるな! もう一度だ! 奴とて落ちてこないわけにはいかん!!」


 ハコンが再び槍を上空へ構えさせる。 あんな風は二度も吹かない。

 惑わされず、必然の対処を貫く。 ハコンはハコンらしく戦おうとしている。


 だが、風は吹く。 つむじ風。 螺旋を描くように翔び、消える。

 槍山の端に位置する兵の背後に、ウルザが出現した。


「もう技が尽きたのか? そんなはずはあるまい」


 ウルザが翔ぶ。 跳ぶのではなく、翔んでいる。


 奥義の性質は跳躍ではない。 飛翔だったのだ。

 身のこなしで草原を荒ぶ風に身体を預け、襲撃と飛翔を交互に繰り返す。


 それがウルザの奥義。

 翼の耳を持つ、風の民だけに許された秘技だ。


 次々に兵が討ち取られ、その度にウルザが空へ消える。

 撃墜を試みようと槍を突きだしても、目前でウルザを助けるようにある時は追い風が吹き、ある時は向かい風が押し流していく。

 鳥になったウルザを捉えることが、誰にも出来ない。


 ウルザの極端な軽装備の、本当の意味をシュウは悟った。

 それは戦士の誇りなどではない。

 達人の域に達した風の民にとって、武装は軽ければ軽いほど有利に働く。

 伊達や狂気ではなく、勝利だけを見据えた軽装だったのだ。


「うっ、うあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 半狂乱に陥った兵士が無茶苦茶に槍を振り回す。 横風が吹いた。 まただ。 風を操るかのように、ウルザが身を躍らせて空を舞う。


「よせぇぇぇぇーっ!」


 シュウは叫んだ。 兵士に抱えられ、もう凄惨な戦いの場は遠くなっている。

 なのに、見える。 ウルザの奥義、その正体がシュウには分かった。


 ウルザは風を操っているわけではない。 風の“起こり”を予知し、翔び上がる時点で次に吹く風を有効に使える場所を選んでいる。

 風の民が持つ翼の耳があれば、決して不可能な芸当ではない。

 風読みという彼らにとって初歩的な技術の応用が、その正体だ。


 奥義の秘密が分かった今なら、勝てるかもしれない。

 俺には声がある。 ここからでも届く大きな声がある。


 なのに、それをハコンに知らせるに足る一言が、出てこない。


「させるものかぁぁぁぁぁぁーっ!!」


 ハコンが吠えた。 大剣の大振り。

 風に流れるウルザを叩き落とそうと、風向きの先に置くように大剣を振り上げる。


 巨大な鉄塊の剣が浮き上がると、そこに風の“起こり”が生じる。


「風を起こすなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 叫んだ。 もう手遅れだ。

 ひとたび風を予感すれば、それを見逃すウルザではない。


 身をよじり、大剣が巻き上げる旋風を活かして滞空する。

 すぐ真横をかすめていく大剣に、棒を添えて当たった。


 硬直。 天高く剣を伸ばしたハコンが、動けない。

 剣の側面を止まり木にしたウルザが、見下ろしている。


「ここまで合わせてきたのは、お前が初めてだ」

「ば、化け物がッ……!」

「さらば」


 チュイイイイイイイイッ!!


 大剣に棒を当てたまま、ウルザが滑り降りる。

 樫の棒から火花が飛び散り、先端が黒く焦げる。


 ドズンッ!!


 ハコンの眼窩に、死の杭が落ちた。


「ぐ、がぁっ……!?」


 食い込んだ棒はハコンを突き抜いていない。

 ハコンの執念か、さしものウルザも勢いを殺されたか。

 いずれにしても、ハコンの眼窩を潰し頭の中ほどで止まった棒を、ウルザは――


「ふんっ!!」


 強く蹴り込んで、頭をこそいで抜き取った。


 鮮明に見えた。

 ハコンの右脳がぶちまけられる瞬間が、間近で見たように頭に焼き付いた。


 死んだ。 ハコンが。 俺の選んだ勇者が、死んだ。

 死体の肩を蹴ったウルザが舞い降りる先に、次の死はない。


 先回りしていたギーレムが、着地するウルザを迎え入れる。

 馬上の人に戻ったウルザが、こちらを見た。

 金色の眼が、シュウを射抜いている。


 逃げられない。 逃げられる疾さではない。

 勇者を失った今、逃げる資格もない。


 不意に脇が重くなった。

 ずっと自分を引きずっていた兵士たちから、力が抜けている。


 顔を抉られ、死んでいた。


「終わりだな」


 もう真横に現れたウルザが、冷徹に言い放った。

 ハコンたちとの戦いに昂揚していた声が嘘のように冷たい。


 お前のせいで、みんな死んだ。 そう言われた気がした。


「ああ…… 全部終わりだ…… 俺の、負けだ……!」

「そうか」

「もういい、煮るなり焼くなり好きにしろ! だが、これ以上殺すな!」


 ウルザは答えず、ただ眼を伏せた。


「送還の儀は、送還の儀だ。 お前は最初の捧げものでしかない」

「どういう、ことだ」


 風の民の風習は、かなりのところを知っていると思っていた。

 だが送還の儀というものについては、聞いたことがない。


「土の民は、神々の大地を不当にも私有している」


 その過ちを土の民が自ら認め、命を捧げることによって大地の所有権を神々に返し、全てをありのままの状態へと戻すこと。

 それが送還の儀だと、ウルザが語った。


「ありのままの状態に、戻すだと……?」

「そうだ」


 ナグハ新市場を破壊し、そこに住まう人間たちを皆殺しにする。

 田畑も潰し、大地の全てを神世の時代と同じにする。

 ウルザの短い言葉に込められた意味を、シュウは読みとってしまった。


 自らの死よりも凄惨な敗北の形。

 クシンタン・バン・バルトの、命を秤に乗せた最大の取引。

 ハコンの死。

 ひとつとして、シュウが想定してきたものはなかった。



 ――王への道が、崩れていく。

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