第1話『魔法使いの剣』(4/5)
外に出て、賊の声がする方へ歩いた。 ぺたぺたと歩くと、足裏に小石が食い込んで鈍い痛みを覚える。
そういえば、裸足である。 つま先に金細工をはめ込んだ上等の靴を履いてきたのだが、それも奪われてしまったか。 思い返すにガチャガチャ歩きにくくて窮屈な靴だった。 裸足の方がずっといいな、とシュウは思った。
表まで歩いていくと、カイナの住む小屋を囲う柵を蹴り飛ばし、八人ばかりの山賊がたむろしている。 誰もが青銅の鎧を着込み、身体のあちこちにはきらびやかな宝飾品を身につけている。
当然ながら襲ってきた時にそのような飾りはなく、全てシュウが全裸になりながらばらまいてやった宝物だ。 中には歩きにくいあの靴を履いているものもいる。
宝を手に入れたのがそんなに嬉しかったのかと思うと、微笑ましい気分にもなる。
「あいつだ!」
「へっ、まだこんなところにいやがった」
シュウの姿を認めた賊たちが、喜悦に染まっただみ声で口々に騒いだ。
誰も彼も、目の前に立つシュウに警戒心を抱いている気配はない。
シュウの首を奪り、バルト商会からさらなる宝物を得る。 美味しい仕事を残さずしゃぶりとろうという腹が見え透いている。
(真っ先に逃げ出した商家のボンボン、見くびられるのも当然というものか)
多少は暴れておいた方が良かったのかもしれない。
とはいえ親父殿から与えられた護衛を名乗る邪魔者を手っ取り早くふるい落とせたのだから、贅沢は言うまい。
小屋の前に立って考えていると、頭目と思しき大柄な賊が肩を揺らして前に歩み出てきた。
太い二の腕は中々の鍛えっぷりだが、頭髪には後退の兆候が見える。 白いものが混じり始めた無精ひげに、二つ山のアーチを描いた脂の乗った額。 重ねた齢を雄弁に語る顔立ちであった。
反面、引き連れた仲間の賊たちは総じて年若い。 シュウと同年代か、弟ぐらいの年頃の集まりと見て取れる。
こんな歳になるまで真っ当な生業に落ち着くことも出来ず、自分よりも若い食い詰め者ばかり集めて威張り散らしている。 何とも憐れで、シュウは頭目に同情を抱かずにはいられなかった。
「おう、自分から出てくるたぁ殊勝な心がけじゃあねぇか」
ああ、なんと可哀想な男だろう。 大地はこんなにも広大なのに、この山なりハゲを受け入れてくれる場所は賊という社会の最果てにしか存在しなかったのだ。
ああ、なんと憐れなことだろう。 きっとこの男にも昔は同年代の仲間がいたに違いない。 それがある者は死に、ある者は一念発起して正業に落ち着いたのだろう。
この男だけが取り残され、若者を率いて寂しさを少しでも埋めようとしている。 今頃畑仕事でもしていたら、あの若者たちくらいの子供がいてもおかしくない年頃であろうに。
可哀想だ。 本当に可哀想だ。
「死ぬ覚悟は出来たってことかよ? そのつもりなら、お前のおまけだけは助けてやってもいいぜ」
立場は上だが将来性はなし。
この場で死ぬに当たってこれに勝る人材がいないということも、実に可哀想だ。
「お前たちこそ、命乞いなら今の内だぜ」
男の勝ち誇っただみ声には取り合わず、大声で返事をする。
シュウは自分の声がよく通ることを自覚していた。 遮るものが何もなければ一里(一枝の約二〇〇〇倍。 1kmにほぼ同じ)の距離まで届かせる確信がある。 それも、上擦りも濁りもさせずにだ。
シュウが父親から受け継いだものの中で、この声と高い背丈、そして毛並みの良いしっぽに関してだけは感謝しても良い。
どれもよく目立てるからだ。
シュウは誰の眼にもシュウと分かる男にならなければならなかった。
「さっきはちょいと不覚を取っちまったが、今度はそうはいかんぜ。 ……こいつを見ろ、山賊ども!!」
借りてきた得物をかざし、朗々と叫んだ。 今は黒っぽい棒にしか見えないだろう。 鞘から抜き放つことは、ぎりぎりまでやらない。
切り札は使いようで初めて切り札になる。
「これなるは神世の時代より受け継がれし伝説の魔剣! 血を浴びるほどに血を求め、死を与える度に死を欲する冥界の宝物よ!!」
蟹のように大きく足を開き、踏ん張る。
滑稽な仕草をあえて選び取り、シュウはなおも声を張った。
「神々が恐れ遠ざけしは、その名も高き妖魔剣デスカリバー!! この究極破壊魔剣が俺の手に渡った今、お前たちに勝ち目はねぇーっ!!」
賊たちは、なんとも言わなかった。
ぽかん、と口を開けて、おかしなものを見るようにシュウを眺めている。
静寂。
優しい風に、森の木々がそよいだ。
「なに言うてんの! あほなことしとらんで戻ってき!」
静けさを打ち破ったのは背後からの声だ。
いつの間にか、後方ではカイナとクリクが集まってきているらしい。
カイナには奥に隠れていろと伝えてから表に出たのだが、奴はどうも人の良すぎるところがある。 今もシュウの後ろでトンカチだかを構えているのかもしれない。
クリクの方は捨て身で主人の前に立つくらいしてもいい身分だが、主人をまるで尊敬していないところが気に入ったので良しとする。
「おもちゃの刃物やないんよ! 怪我でもしたら取り返しつかへんのやでー!」
やんちゃ坊主を叱りつけるようにカイナが叫ぶ。 その声を聞いて、呆けていた賊たちは一斉に笑い始めた。
「ギャハハハハ!!」
「おいおいお坊ちゃまぁ! お母ちゃんが心配してるぜぇ!!」
「長耳ママの言う通り、逃げた方がいいんじゃねえのぉ?」
「しっぽは丁寧に巻いておけよぉ!! 漏らしたクソがつかねぇようになー!!」
(そうだ、笑え! ここは笑うところだ!)
嘲弄の波に晒されながら、シュウは心の中でほくそ笑んだ。
カイナは実にいい仕事を果たしてくれている。 信心深い田舎の賊が、まかり間違って妖魔剣デスカリバーなんぞを信じたとしたらどえらいことだ。
奴らには俺を見くびり、侮り、それでいて魔剣を知ってもらう必要がある。
今日の為、明日の為、無様を晒して損をするということは絶対にない。
シュウが自分を育ててくれた母親に最も感謝しているのは、恥と誇りを捨てる術を授けてくれたところだ。
恥を捨てれば、偶然がシュウに生き残ることを許すかもしれない。
そして誇りを捨てれば、やがていかなる敵にも勝つことが出来る。
シュウは勝利し続ける男にならなければならなかった。
「さて、さて。 さてさてさーてぇ……」
男たちの爆笑が収まるのを待ち、シュウは再び声を出した。
いずれも滑稽な者を見る眼のままだが、シュウが泰然とした振る舞いを崩さぬままでいる不自然さに頭目の男だけは気がついているらしい。 じろりとシュウを眺める眼差しに警戒の色が混じっていた。
なるほど年の功も少しは役に立つが、もう手遅れだ。
「妖魔剣デスカリバーの恐怖は既に教えた。 それでも諸君が俺と戦うというのなら、相手をしてやってもいい」
「なんやそのダサい名前。 やめーや」
後ろから飛んできたのはカイナの野次。 いい援護だ。 若い賊がまたくすくすと笑う。
鞘ごと突きつけていた剣を真横に傾け、両手で持った。
「しかし、俺としては魔剣の犠牲になる者を減らしたい。 いくらお前たちがならず者でも、人の命はかけがえのないものだからな…… ここは一対一の果たし合いで、決着をつけようじゃないか」
「果たし合い、だと?」
頭目の男が怪訝な表情を浮かべる。 馬鹿め、お前に選択権はねぇんだよ。
「そうだ。 俺が勝てばお前たちには降参してもらう。 もっとも、ひとたび妖魔剣の威力を見れば戦う気力は残らんだろうがな」
反論が飛ぶ前にすかさず付け加えるのも勘所。 冷静に考える余裕は残さない。
「お前たち、そんな勝負受けて何の得があるって思ったろ? 分かる分かる、一斉にかかれば魔剣を握った俺にも勝てるかもしれんからな。 だが、そう思うのは浅はかだ。 落ち着いて考えてもみろ。 仮にみんなで俺を殺したとして、お前たちは雇い主から何をもらえるというんだ? ぴっかぴかの金銀財宝か? だが、全員で俺を殺せば財宝は山分けがいいとこだ」
仮に首尾良く事が運んだとしてもバルト商会は青銅器を回収する為に賊を殺すのがオチだろうが、それをあえて指摘する必要はない。
「ひとりで俺を殺した勇者には、それだけの褒美が与えられる」
一拍を空けてから低音で言い放つと、若い賊の幾人かがざわめいた。
頭目の男が慌てて口を挟みに来る。 無駄な抵抗だ。
「騒ぐんじゃねえ! 依頼は奴を殺すことだけだ!」
「お前たちを雇ったのはバルト商会だろ? 奴らも商人の端くれ…… 依頼以上の働きぶりを見せたとあっちゃ、その功労者には約束以上の報酬で応えるのが性というもんだぜ。 そこはこの俺も商人なもんで、信用してくれていい話さ」
若い賊の一人が左手に握っていた槍を持ち替えた。 伝播したように周りの賊も自分の得物を握り直し、闘気を高ぶらせている。 どよめきは益々大きくなり、今にも名乗りを上げるものが出そうなほどだ。
効き目は上々。 この様子ではあの頭目もそれほど上手くとりまとめていたのではないらしい。 普段から働きぶりに応じて戦利品を分配するということを入念にやっていれば、もう少し抑えが効いていただろう。
「騒ぐな! いい加減にしねぇと叩き殺すぞ、馬鹿どもが!!」
「おいおい、おっさん! 手柄に逸る若いのに冷や水をかけるもんじゃねえな! 強い奴や偉い奴を打ち負かし、名誉と財宝を手にする! 戦士なら誰でもそう望むもんだぜ! 何しろ!」
スゥゥゥッ
深く深く、息を吸い込む。 とくと味わえ。
何しろ金がありゃあ腹いっぱいメシが食えるし、名誉がありゃあ女にモテる! 土地だって買えるぜ、でっけぇ畑で麦か米でも育ててみろ! 余った金で酒屋から樽を買ってくりゃあ自分で酒を造って好きな時に飲み放題! しかも名誉がある男に寄ってくるのは遊びの女ばかりじゃねえ。 いい女は嫁になって一生一緒にいてくれるし、子供だってぽこぽこ産んでくれる。 手柄のある大戦士のガキなら、そいつもきっと手柄を立てていい女を娶るぜ! そしたらどうよ、かわいい孫が産まれる! 大戦士の孫ってこたぁもちろんそいつらも手柄を立てる! ほれ見ろほれ見ろ、どんどんお前の畑にいい女と赤ちゃんが増えてくぞ! 土地だってどんどん広がって、東方から買い付けた種で葡萄を育てたり、羊をたくさん飼ったりやりたい放題よ! 葡萄で作った酒ってのもまたまた美味いんだぜぇ! 羊の毛を刈るとふかふか暖かくて冬の寒さもちっとも辛かねぇ! うっわぁこりゃあすげぇ! 一つ大手柄を立てるだけで広い土地に大家族、押しも押されぬ偉大な族長に成り上がれちまうってわけ! 最期は羊の毛で作った寝床の周りにお前の嫁とお前のせがれとお前のせがれの嫁とお前の孫とお前が飼ってる羊と犬と山羊と牛がいっぺんに集まってきたぁ!! お父さんありがとうおじいちゃんありがとうあなたと一緒で幸せでしたよメーメーワンワンベェェベベベベモーモモーモーモー!! みんなお前が大好きだったんだなぁ!! はい、死んだ! 死んだよ! お前今逝った! 天国のおふくろはどんな顔して待ってるんだろ? そんなの言うまでもねぇよな! にっこりにこにこ、あの日もらった財宝よりぴっかぴかの笑顔なんだ!!
「こんな素敵な未来を得られるまたとない機会を台無しにしようってのか!? そいつは人の上に立つ者として、いただけねぇよなぁーッ!!」
息継ぎなし。 まくし立てて思い切り叫び切ると、また静かな時間がやってきた。
今度の静寂は、少し形が違う。 息を荒げないようこっそりと呼吸を整えながら見回すと、若者たちの欲望に完全に火が着いているのがありありと分かった。
ある者は美味い酒に眼を輝かせた。
またある者はまだ見ぬ女にときめいた。
自分の畑を持ち、家畜を育てるという大望を抱いた者もいる。
賊のままでは死んだ母親に出会えないと悟った者もいる。
事情は様々ながら望んで賊に身をやつしたものなどおらず、誰もが心の奥底で人並みの幸せを欲している。 それが賊という人種の悲しい現実である。
諦めていたか、そもそも考えもしなかった好機が目の前にある。
一度気がつきさえすれば、憐れな少年たちはもはや夢の虜だ。
「馬鹿が! 何を惑わされてやがる!! あんなボンボンのたわ言、真に受けるんじゃねえ!!」
ただ一人、夢の期限が切れている男が孤立した。 前に出かけた賊の一人を張り飛ばして喝を入れてみるが、若者たちのぎらついた眼は曇らない。 高まった欲望は既に頭目を見放しかけている。
最後の一押しを入れるなら、今だ。
「ま、あんたが怖いってんなら、それは仕方がねぇ。 誰かもっと若くて元気がいいのと変わってもらえばぁ?」
頭目の頬が引きつり、目つきが変わった。
楽に殺せるはずの相手に口先での独壇場を許し、部下の心離れを引き起こしかけ、その挙げ句に増上慢を重ねられる。
ある程度の慎重さがこの男を頭目として生きながらえさせてきたのだろうが、所詮は社会のはみ出し者に過ぎない。
強く揺さぶられれば、通り一遍の賊らしい顔になるという寸法だ。
男が胸を張り、シュウを睨みつける。 全身に満ちた殺意で、身体が一回り膨れ上がったように感じた。
「テメェ、殺す」
据わった眼でぶつけてくるのは、格別に単純な言葉。
冷静さを失っているいい証拠だ。
「やっと受けてくれる気になったか。 なら、真っ向勝負といこうじゃないの」
言葉で応じる代わりに頭目は地面を踏みしめた。
大きな青銅の斧を握り込むと、苛立ちをぶつけるように強く振る。
ぶお、と空をえぐる音と共に、殺意の乗った風がシュウの顔を打ち付ける。 しっぽの付け根がキュ、と引き締まったが、それを顔の表面には決して顕さない。
シュウはゆっくりと鞘から剣を抜き、両手で構えた。
耳の
緊張を覚えている時、シュウの耳は充血して赤くなる。
耳を覆う皮の飾りは、その興奮と怯懦を内側に隠してくれた。
大丈夫だ、何も恐れることはない。 シュウは自分にそう言い聞かせる。
頭目の身体はシュウよりもなお大きく、肉の隆起は岩山のように険しい。 そして年老いた賊であるということは、頭目が高い実戦経験を得ていることを意味している。
一方のシュウは剣術の手ほどきを受けてこそいるが、稽古嫌いでそこそこどまりの内に投げ出した。 その上実戦は今日が初めてで、人を殺した経験などまだない。
それでも、勝てる。 しかも誰もが言葉を失う形で勝利する。
勝つ為に張り巡らせた策は全てが機能している。
であれば、勝負を分けるのはこの身の勇気ひとつだ!
「ぬおぉりゃああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
殺意の塊と化した頭目が土を蹴り、躍りかかった。
握り締めた巨大斧を、頭目は兜の真上に構える。
薪を割るが如し、一刀両断の構え!
読み通りだ! 怒りを引き出され、驕りに囚われた人間は必ず最も威力の出る型で敵を殺そうとする。 それも得物が大斧とあらば、腕力と武器の重みが相生する縦斬りで挑むのは必然。
どう攻めてくるのか分かっていれば、少々の実力の差など恐れるに及ばない。 呼吸を合わせて身を横に引き、振り下ろされる刃をかわせば奴には勝てる。
だが、狙いはそれだけじゃない。
「ぬうぅぅんっ!!」
頭目がシュウの手前で跳ねる。 自身が飛び降りる勢いまでも乗せた、最大の一撃が来る。
「シュウ殿ぉぉーーーーッ!!」
クリクの叫び。 後ろからだ。 今更主人の名前を覚えたのか。 マヌケめ、お前がビビってどうする。
真横に向けた剣を、頭上に構える。 降り注ぐ殺意に対して、ただそこに置く。 避ける必要などない。 構えて、踏ん張る。
たったそれだけで、十分だ!
「な、何ぃっ!?」
頭目のだみ声が、動揺に濡れた。
振り下ろしたはずの斧が、シュウに届くことなく地面を空振ったせいだ。
避けられたのではない。 奴は一歩も動くことなく、無謀にも受け止めようとした。 そのはずだ。
そんな困惑がシュウには手に取るように分かり、生じたわずかな隙が無限にも等しく感じられる。
「だから、言っただろ?」
頭目の真後ろを、切り離された斧の刃先が落ちていく。
軽くなった自分の得物にようやく気がついた男の顔に、恐怖が混じる。
青銅の斧が切り落とされる。 あるかもしれないこと。
青銅の斧の、刃の部分が、切り落とされる。 あるはずのないこと。
シュウは、笑った。
「こいつは魔剣だって、な!」
縦斬りを受け止めた防御の構えから、弧を描くように剣を振る。
斜め上からの薙ぎ斬り。 狙いを定める。 鎧の隙間ではない。
青銅で硬く覆った、肩鎧への直撃。
完膚なきまでに勝つということは、敵が持つ最大の強みを力でねじ伏せるということだ!
ずだんっ!!
「い゛っ」
肩鎧、肉、骨、胴鎧、肉、骨。 波打つ白銀色の刃が、通り抜けた。
抵抗感はない。 死という結果だけを残し、切っ先が人体を貫通する。
「あ、あがっ、あひっ!?」
口元を血のあぶくで汚した頭目が、ぶるぶると震える腕を上げた。 参った、と言いたいのかもしれない。 無視した。
手首を返す。 また、風が走る。
すぱんっ。
「あ、悪い……」
すぱんすぱん、すぱんっ。
「これ、斬れすぎちまうわ」
手を飛ばし、脚を落とし、最後に首を撥ねて、中空で頭を縦に割る。
魔剣は羽根のように軽く舞い、残酷な解体を遂行した。
一太刀目を受けて、男が崩れ落ちるまで。
ほんの僅かな時の内に、青銅を着込んだ男が血と肉の塊に変わり果てた。
シュウ自身さえここまで想定してはいないという程の、死。
俺は本当に魔剣を握っていたのかもしれない。
そう疑いかける程の破壊が、晴天の下に三度目の静寂を生み出した。
――沈黙は、恐怖によっても生じる。
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