第5話 人間転生戦争期1

 いよいよランキングが開始された。その少し前に製造番号による検索が実装されていたので、知り合いがどれだけ参加しているかはすでに把握してあった。

 だが――、


「盛り上がっていないな」


 ランキングには顔見知りの製造番号ばかりである。これは実に盛り上がっていない。彼らの一部は、真に盛況であれば日の目を見るはずのない連中だ。

 そんな彼らがなぜランキング上位にいるのかといえば――。


「少し偵察に行くか……」


 爆死野郎は久しぶりに家を出た。

 セカンロイドには土地を持っているものもいる。爆死野郎はその一人だった。外に出れば土地を間借りしている人々に声をかけられる。

 それらをあしらって、自分の持っている工場を三つほど抜け、他人の私有地にこそこそ侵入した。

 

「お、さっそくか……」


 そこは過去に何度もの転生を行っている男が持っている土地である。彼は自らの土地を明確にすべく、防音壁で仕切りを作っている。もっとも、関係者のふりをすればあっさり侵入できてしまう、雑なセキュリティだが。


 そのセキュリティの甘さにはもちろん理由がある。防音壁はただ、不都合な会話を極力外に漏らさないためだけの代物だからだ。


「あ、あー……聞こえますか?」


 男はマイクを持って所有地の人々に話しかけている。


「みなさん、今回のカクヨウコン、僕に投票してくださいねー!」


 そう、この男は身内票だけで上位に食い込んでいるのだ。

 まあ、こんなものはまだいいほうだろう、放っておいても大きな問題にはならない。爆死野郎はそう判断して次の場所へと向かう。

 

 次にたどり着いたのは共有スペースだ。

 ここは誰の土地でもない。


「いいか、そもそもランキング上位でなければ話すら聞いてもらえない。だからみんな、評価を与え合おう!」


 そこで行われているのは相互と呼ばれる集団の会話である。候補者同士で評価しあうことで、少しでもランキングを上げようとする集団だ。

 しかし、彼らがバカ正直に評価を上げあっていると思ってはいけない。

 誰もが内心でこう思っているに違いない。


 ――仕様を利用して、無効票を投げてやる。


 転生候補者を評価するためには自己PRを最低でも九割見なければならない。もし一切見ずに評価をすれば、それは無効票となる。

 その性質を利用しようというのである。


「ま、そんなもんだよな」


 爆死野郎はほっとした。

 顔見知りたちが行っている手法が通じるのならば、彼は転生候補者として大きくリードしたも同然だった。

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