第6話 人間転生戦争期2

 ダミーロイドというものがある。

 簡単にいうと自らの分身とでもいうべき存在だ。一時的に意識を預けることで行動が可能になる、セカンロイドが危険な行為を行う際に利用されるものである。

 これが厄介なもので、専門の知識がなければ誰のダミーロイドかが外部からでは分からない。


 それを利用し、ランキングを独走している存在が数名いることには気づいていた。ダミーロイドから自らに投票している連中がいるのだ。

 爆死野郎は彼らを鼻で笑った。


「阿呆め。ダミーロイドをただ使っているだけではすぐにばれるぞ」


 管理者側から見れば一発で分かることだ。ダミーロイドは工場で作られるのだから、製造番号から工場の持ち主を特定するだけでいい。

 しかし、現実は驚くべきグダグダぶりであった。


「なん……だと……!?」


 民衆による人気投票が終わる二日前、彼らはまだランキングに生き残っていた。


 ――バカな、こんなことがあり得るわけが!


 爆死野郎は外に出た。遠くから怒号が響いている。もうじき人気投票が終わる、ナルゥ神のところでもそうだったが、この時期になると民衆の一部が投票警察となり暴れまわるのだ。


 ――彼らが暴れているということは、不正らしき痕跡があるということだ。


 外部から見てもあからさまな不正に対し、何もできないなどあり得るのか?

 爆死野郎は疑問を抱きながら投票警察たちを探し、彼らに交じってひっそりと会話に耳を傾けた。


「○○は完全に黒だ!」

「××はダミーロイドによって不当な評価を得ている! 神よ! 聞こえないのですか!」

「■■は性格が悪いから候補者から消えればいいのに!」


 一部は関係ないのではないか、と思いながらも処罰を求める声の多さに安どした。


「爆死野郎は絶対にやってるね! 懲りずに!」


 自分の名前を挙げられドキリとする。だが、少しして考え直した。ここで動揺してどうする。堂々としていればいいのだ。下手にあたりを見渡すから都合の悪いことがばれてしまう。

 

 爆死野郎は平然を装ってその場を後にしようとし――、


「待て!」


 その肩を掴まれた。


「おまえは爆死野郎だな!」

「何、爆死野郎だと!?」

「てめえ、また懲りずに不正しておきながらよくも顔だせたな!」


 投票警察が周囲を囲む。ナルゥ神主催のコンテストで不正を働いたことを暴かれた過去のせいで顔が割れていたらしい。


「お、俺は心を入れ替えたのだ! もうそのようなつまらん不正はしない! 面白きことはよきことなり、それが今の信条だ!」


 爆死野郎は釈明してみるが。投票警察は聞く耳を持たずに罵倒とともにこぶしを振り上げた。そのままあっさりと殴られる。口の中が切れて血の味が広がった。


「二度と顔を出すんじゃねえぞ、不正野郎!」


 唾とともに吐き捨てられ、肥大化した彼の自尊心が声を上げた。


「はっ、所詮は人気投票でまったく得票できぬザコどもよ! そこでせいぜい正義の鉄槌を振りかざした気分で嘆いているがいい! カドゥ神は貴様らの声などには耳を貸すまい! この現状がすべての証明だ!」


 投票警察が怒りを浮かべて距離を詰めてくる。

 爆死野郎は背を向けて逃げながら叫んだ。


「正義は常に、勝者にあり!」

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