第8話 マッギンレイ大佐 *


 ライアン・マッギンレーは、アメリカの若手写真家。

 まったく大佐などとは関係ないのです。

 でもなぜか、マッギンレイと口にすると、勇ましい気分が勝手に盛り上がり、マーチとか鳴っちゃって、「マッギンレイ大佐!」 と敬礼したくなっちゃうのです。

 つまり、まったくの勝手な個人的思考。


 東京新宿のオペラシティ・アートギャラリーに、彼の写真展を見に行ってきました。

 さて、大佐(もはや仇名ということで)の作品ですが、それは、それは、裸体のオンパレードでして、果てしなく壁に貼られた裸、裸、はだか。


 友だちになったら、みんな脱がせちゃうのかな。

 近寄ってくる人は、みんな服着てないのかな。

 世界には、いろいろなはだかがあるのね。

 どれもイヤらしさはない、若干マネキンのような素肌。


 これだけの人を撮るには、相当なエネルギーがいるはず。

 一人一人から受け取るものが半端ないね。


 私はこんな時も、やっぱりモノクロ写真が好きで、そんな一角をゆっくり一歩ずつ眺めたのでした。フレームに自分が映り込まないように気を配りながら。

 男の人の長い髪が艶々と流れている写真がすきでした。いちばん、黒の質感が美しくて、心の花を咲かせたのです。


 世界の秘境と裸の写真は、どうやって 撮ったのかなぁ。謎だらけ。

 合成か、否か。氷の上で裸は命懸けです。


 ここでは、触れなければ写真を写真に撮ってもいいそうで、カメラに幾つかお気に入り写真を収めました。

 こうしてピントリング回すの久しぶりだなぁ。


 でもね、一番印象に残っちゃったのが……。

 おっきめのタブレットで撮影していた女の子の待ち受け画面に、「安心して下さい」の、とにかく明るい安村君が、でっかく映っていたこと。

 この女の子は、やはり裸フェチで、こちらにいらしたのだろうか。


 一回見たら、そればかりが気になっちゃって、笑いをこらえるのが大変で、結局そこでのいちばんの裸=安村で終わってしまったよ。

 なんてことだ! 他がすっぽり記憶から上書き保存で抜けちゃいそう。



 真面目な話。ライアンはなかなかの優男です。


 代表作のRed Blueberryは、真っ赤な花の中に女の人が取り残されていて、空を見上げている、印象的な写真。


 空には迎えのヘリが舞っているのか、それとも置き去りにして去っていくのを絶望で見ているのか、視線の先ばかりが気になってしまう大きな作品でした。



* RYAN MCGINLEY 「BODY LOUD!」 2016 7.10 まで

  Tokyo Opera City Art Gallery にて



 さて、大佐のおかげで、この後、とても素晴らしい作品に出逢えました。

 その話は 次回につづく。






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