白兎

白兎 第1話

あの夏の夜の夢の事件が終わって2ヶ月後。俺達の大学では大学祭が始まった。期間は三日間。俺達のサークルは一日目に大任の大学祭のラジオ生放送が行われた。


だがその後の日程は暇だった。ただサークル活動をお客さんに説明するためだけにサークル小屋にいるだけだった


三年生は自分達の学科のイベントが忙しいとのことでこの仕事に白羽の矢が立ったのが会長(何時もいるが)、Y先輩、俺だ(X先輩は彼氏がいるからと断った)


俺がサークル小屋に行くと中から女性の声がした。俺はもしかしたら可愛い子と出逢えるのかな~と意気揚々とした。その時気付いた。今年造られたサークルの真新しい看板の横に古びた『占卜致します』と書かれた看板を。


「おはようございます」俺がサークル小屋に入る。中には二人の若い女性を占っている会長、奥にはY先輩と見知らぬ女性が話していた


「すごい・・・当たってる・・・今後はどうなるんですか?」


「そうだねぇ・・・良いカードばかり出ているから近々素敵な男性に出逢えるよ」会長は目の前にある結果をいう「当たるも八卦外れるも八卦だけどね」


お客さんの女性達はありがとうございました、と二百円を会長の前にある箱に入れて帰った




「・・・なんで女性は異性との出逢いを知りたいのかね・・・」会長はカード・・・タロットを片付けながら言う「おはよう」



会長は占いにタロットを使う。日本的な占い(式占等)より自分との相性がいいらしい



「やっと終わったかチビ」Y先輩と話していた女性が会長に言う・・・会長より小さい女性だ


Y先輩は簡単に女性・・・Aさんを紹介した。別の大学の人でY先輩の長年の友人らしい。ボーイッシュな感じだ


「午前中は茶道部でお茶入れて、戻ってきたら占いか・・・忙しいな」Aさんは会長の服を見て言う。会長は今は和服(男物)を着ている


茶道部を教えている人(外部の一般)が住職の知り合いで午前中ピンチヒッターを頼まれたらしい


「君は相変わらずだね・・・仲良くしてるかい?」


「あー、先月彼氏と別れた・・・」Aさんが話すと会長はそれは残念と答える「いや本当に最低な奴でさ。大人の良い男を演じてて部屋に招待したら豹変すんの・・・


力任せで押し倒されたら怒った先生登場!!あの時のあいつの顔みものだぜ。こう血の気が引いて真っ青。あうあうしか言わないの。大の大人が幽霊ごときでさ喚くなって。まっ最後にぶん殴ってサヨナラ~だけど


あっ今は優しい人と付き合ってるよ。部屋に招待しても何もしないしさ、先生も怒んないの・・・こりゃ先生公認かな!!」


「先生は生真面目の古い方だからね」会長は頷く


俺は訳が分からないな、と感じているとY先輩が説明してくれた。Y先輩が会長と初めてあったときに心霊現象に困ってたのがAさんで、先生とはAさんの部屋に出る書生風の青年の幽霊とのこと。

和解したというあれかと思い出した・・・・・・幽霊をしかも怒った幽霊を見て冷静な大人がいるのか・・・・・・住職と会長は別にして・・・しかも幽霊受け入れすぎでしょ・・・



「本当にチビには感謝ね」会長はこれでも君より長く生きてるんだよ、と愚痴る


「会長・・・表の看板なんですか」俺は聞く


「何時もは実行委員に占いするって許可をもらってたけどね。今年はある程度権力を持っているから使わせてもらった。占い料は何時も通りの『お心料』だが」


会長はあまり占い等でお金を取らない。感謝の心で充分らしい


「先輩はイベントの隅でいつもやってましたね」Y先輩は思い出しながら言う「屋根があるのは初めてですよね」



そんな世間話をしばらくしていた









その時だ




「・・・なんだ・・・」会長が動きを止める




そして会長は突然外に出る。サークル小屋の全員がどうした?何かありましたか?と口々ににする




サークル小屋の前には二人の子供がいた・・・小学一二年の女の子と幼稚園ぐらいの男の子だ


「どうしたの迷っちゃった?」会長がしゃがみながら優しく話しかける・・・怖がらないようにする為か声が高い


女の子は頷く


「お名前は?いくつ?」


女の子はちひろ、七歳と話す。男の子は弟でたくや、四歳らしい


「たくや君、大丈夫?」会長は聞く。遠目から見てもたくや君は辛そうだ


会長がたくや君の胸に耳を当てる


「ちひろちゃん、ママやパパがたくや君の胸に耳をあてたりする?」


ちひろちゃんは頷く「よく、たー君が苦しいっていうとママがするよ。昨日もたー君が苦しいって言ったらしたよ・・・そしてお医者さんに行ったの」




Y先輩が大丈夫ですか先輩、と近付いたときだ


「いかん発作を起こしかけてる!!Y、A、小屋の中に毛布があるからたくや君を寝かして安静にさせなさい。C(俺)は実行委員本部に走って行け!!」


俺はえっと戸惑うと学内アナウンスを聞いてれば解るから走れと怒られる









本部に向かって走っているとアナウンスが流れた

「お客様にお知らせです。白いシャツ、青いジーンズを履いた四歳のたくや君の保護者の方、たくや君が喘息の発作が起きかかっています。至急実行委員本部または○○サークル、お近くの実行委員まで御連絡ください。繰り返します・・・」



どうやら保護者を案内や説明をさせるためのようだ・・・直接サークル小屋や近くの実行委員に話したら俺は無駄骨に・・・疲れる・・・




と思ったら保護者が本部にいた


どうやら捜していたらしい。当たり前か。俺は事情を話しサークル小屋に案内した。薬は持っているとのことだ・・・どうやら小児喘息をたくや君は患っているらしい




俺が東奔西走をしていたころの会長。





会長がたくや君を抱きかかえサークル小屋に入った



「お姉ちゃん、うーたんいたよ」とたくや君は何度も呟いたらしい




そして会長は抱きかかえたときあることに気付いたらしい・・・「獣の臭い」と「微かな禍々しい気配」・・・先程の感覚はこれか・・・






会長がサークル小屋のドアを閉ようとした時・・・

それはいた





静かに座った一匹




白い兎・・・白兎だった





この白兎が元凶・・・・・・いや違う・・・





ただ解るの事は一つ













「魂か・・・」会長はドアを閉めた




***



たくや君は無事だった・・・本当に発作が起きようとする寸前だったらしい


「ありがとうございました」ちひろちゃんとたくや君のお母さん(Fさん)が俺とY先輩に頭を下げる


どうやら俺とY先輩が助けたと思ったらしい・・・確かに和服を来た童顔女顔の会長と髪が真っ赤のパンク風のAさんは部外者に見える


「いえいえ、俺は会長に従っただけです」俺は会長を差す


Fさんは改めて会長に礼をする


「どうしてはぐれたの?」Fさんがちひろちゃんに怒った口調で聞く。会長はまあまあ、お母さん無事でしたし、となだめる。


ちひろちゃんがいうには人の流れに巻き込まれFさんとはぐれた。そして人気が少ないところに出るとたくや君は心細くなり泣き出したらしい 。が突然泣き止み「うーたんがいる!!」と走り出しここに着いたみたいだ




「お姉ちゃん、大丈夫?」一人の女性が入ってきた。大学祭のTシャツを着ている・・・大学の関係者か




この女性、Fさんの妹で大学三年生。放送を聞いてもしやと思いサークル小屋に来たらしい。






「・・・・・・感じない・・・・・・」俺は蚊の鳴くような小さく呟く会長の声を聞く。





たくや君も落ち着いたのでFさん達は帰ることになった。Fさんがサークル小屋を出る





「すみません」会長が突然Fさんを呼び止めた


Fさんは、はい?と振り向く


「変なことを聞くな、と思われるかも知れませんが・・・」会長は何もない場所を見る「たくや君が言っているうーたん・・・・・・白い兎・・・のことですか?」



「え?えぇ・・・」


「寂しいんですねぇたくや君」会長はたくや君を見る


「こんな小僧でも何かお役に立つと思いますよ・・・信じられないことでも・・・」


「・・・・・・あの・・・・・・」


「いや失礼。ちひろちゃん、たくや君、バイバイ」会長は笑ってしゃがむ

ちひろちゃんとたくや君はバイバイお姉ちゃん、と手を振る


会長は固まり、Aさんは腹を抱えて笑う


俺は気付いた。帰りざまに何度か振り向くFさん。その視線は会長に向けられている・・・





「相変わらずスゴいな!!えっお姉ちゃん」しゃがんでいる会長を蹴る「Yの亜鉛だっけ?亜鉛不足にも気づいたしな」


Y先輩がAさんを止める

会長は静かに立ち上がり「小腹が空いたな・・・君達焼きそばでも食べるかい?」



Aさんは滅茶苦茶に喜ぶ。まあ俺もY先輩も嬉しかったけど



会長は占いの看板を下げ、サークル小屋に入り占い料金の入った箱からお金を掴む


「Y、留守番を頼む。Cは荷物持ちだ・・・ついてきなさい」




大学内を歩く。たこ焼き、焼きそば、ホットドックそして飲み物を大量に買った


会長は何か考え事をしている


サークル小屋に戻ると会長は一服するから先に食べなさいと言った




俺達は会長に言葉に甘えて食べた・・・いや殆どがAさんが食べた。凄いたべっぷりだ


会長はなかなか戻ってこない、いかんこのままでは無くなってしまうと思い会長を呼びにいく




会長は珍しく胡座で座っている・・・何かを抱いている感じにも見える




「会長無くなっちゃいますよ」会長は解ったと立ち上がる





「・・・来なければそれまでの縁・・・解ってくれ・・・」会長は呟く。俺が何です?と聞くと独り言だと返す





唯一残っていたたこ焼きを会長は食べ始める


「チビさ、Yに怖い目に会わせてないだろうな」Aさんが会長を睨む。夏の夜の夢事件を思い出した・・・「Yは大切なやつだからな・・・そんなことしたらYが許しても殴るからな」


目がこえー、殴る目じゃない・・・殺る目だよ…ありゃ


Yが先輩はそんなことしないよ、と笑う。先輩、あの事件は会長のせいで巻き込まれましたよね・・・まぁ言えないか、大切な人が血まみれ確実だもん・・・


「先輩は自分に悪いものが憑いてると絶対に私に近づかないよ。というか近づけさせないもの」


「ふーん・・・・・・チビ。何かしたな」


幽霊と一つ屋根下ですごすくらいだから鈍感かなと思ってました。訂正です・・・女の感は怖い


会長は何も話さない。ただほっぺいっぱいたこ焼きを入れもきゅもきゅ食べている


Y先輩が必死に話す「Aちゃん、先輩はそんな事しないよ。・・・そう言えば去年の今頃でしたよね」


会長は手で口元を隠し「・・・あれか・・・そうだね」と話す


俺はその話しをY先輩から聞く。Aさんも興味津々だ


Y先輩は話すが自分の体験ではないためか詳しくは知らないようだ


話しを纏めるとこうだ。昨年バイクを購入した会長はエンジン慣らしを兼ねて遠出した。その時に変わった社を見つける。そこで動物の怨霊を連れてきたらしい。その時Y先輩に一切接触させなかった。祓おうと思うが悪さはしないし様子をみて結局は元に戻した、と言う話



話が終わった時だ





ボトッ



床にひとつのたこ焼きが落ちていた


Aさんがもったいないなとぼやく


たこ焼きを落としたのは会長だった


「先輩?」Y先輩は会長に近づいた


俺も会長を見た。会長はどうやらたこ焼きを口に入れようとした時に落としたようだ。口を丸くあけ震えていた


Y先輩が大丈夫ですかと揺らす







「・・・・・・莫迦な・・・・・・あの気配・・・・・・・・・こどうなのか・・・・・・そんな莫迦なこと・・・・・・」





会長は意味の解らない事を呟く。だがY先輩に大きな声で呼ばれたときに我に戻った


「すまない・・・ちょっと外に出てくる」会長は静かに外に出た


Y先輩は会長が心配なのかついていった



あとからY先輩から聞いたことだが会長は煙草を吸っているとき誰もいないの誰かに話すように独り言を話していたらしい「私に導いたのはこのためか・・・」「私でも無理かもしれないよ」と。




その時俺とAさん。




「チビ、どうしたんだ?」俺はさあ、と首を振る


「君さ、あの二人どう思う?」


「ある意味お似合いですよ」


「あいつ見かけはあれだけど先生に似ているもんな」


「Aさんは幽霊・・・先生と暮らしていて大丈夫なんですか」


「うん。あっでも部屋が汚くなると怒って金縛りをかけるよ」


・・・大丈夫なのか?・・・




会長が戻ってくると占いの看板をまた付けた


「会長大丈夫ですか?」顔色は普通だがなにかを考えている感じだ


「ああ、大丈夫だ」会長は座りタロットを取り出す。正しい順に並び替えはじめる


「チビ、私も占ってよ」Aさんの意見にいいですよと答える



会長の使うタロットはアールヌーヴォ風のカードだ。会長曰わくライダー版ではなくマルセイユ版らしい。会長は順に直す。まずは小アルカナ、次に大アルカナ





会長がタロットを一枚手に取り見た





それは黒い背景にやせ細った白髪の男が血の涙を流しながら笑いこちらを睨む不気味なカード・・・・・・番号はXV














「悪魔は人間かもな」会長は悲しそうに呟いた



***


大学祭は無事に終わり平穏な日が続いた


俺はサークル小屋で昼飯を食べている。他に会長やY先輩、三年生達数人いた


「会長、卒研大丈夫ですか?」俺はいつもサークル小屋にいる会長が心配でならなかなった。


「もう終わっているよ。8月には論文は出来てる。まぁ教授から十分の一以下に減らせと言われているが」


「えっ・・・そういえば何を研究したんです」


「宗教建築」俺は寺院なら会長の得意分野だからなと思ったら「教会、主に西方教会」と答える


「なんでキリスト教なんです?」


「キリスト教はあらゆる学問に関係しているからね。それにセイラム魔女裁判とかに興味があったしな」


そんな俺には関係のない話をしていた時だ




「すいません会長さんはいますか」女性が訪ねてきた。女性・・・あのFさんの妹さんだった


会長は立ち上がり私ですが、と応対する。


「先日は有難う御座いました。実は姉から手紙を渡して欲しいと言われ」妹さんは茶封筒を渡す


会長は封筒を開封し手紙を読む。周りに三年生が集まり覗こうとすると「私信を見るのは感心しないな」と睨みつけ追い払う


「手紙は拝見しましたが・・・あなたは何かご存知で?」会長は手紙をたたむ。実は・・・、と妹さんが話しかけると「ここは人が多いので場所を変えますか」


そういうと会長と妹さんはサークル小屋を出た。俺もY先輩も気になりついて行こうとしたが止められる。


「どうしたのかな?」Y先輩は心配そうな顔をする


「なんだったら夜に聞けばいいじゃないですか」




俺達はあの事件以降週末に不動明王寺にいくようになった。目的は酒を呑むためだ。事件のあと俺はしばらく霊に憑かれやすくなり会長から「清めて貰え」と言われた。会長は祓うことは出来ても根本に問題があれば意味がない、と住職に清めて貰うことを提案したのだ。


そして俺は住職に清めて貰いに不動明王寺に足を運ぶ。その時、住職はあの豪快な笑いをしながらいった


「モッテモテじゃな。若い女にサラリーマン、猫もいるのう。いや…選り取り見取りじゃ、がはは」


いや・・・そんなのにモテたくない


そして、お清めが終わると住職はあるお願いをした


「C君、頼みがあるんじゃが・・・一緒に酒に付き合ってくれんか。坊も一緒じゃ。弟子を誘っても断れてな・・・独り手酒は寂しくてのう。週に一度でいい」


俺はその願いを聞き入れた。またY先輩も誘った。日頃の会長への鬱憤を貯めているだろうと思ったし、会長との距離が縮まればと気を効かしたからだ。それからみんなで週に一度呑むために不動明王寺に行くようになった。そして今日は呑む日だ。





もう少して昼休みが終わる頃に会長が戻ってきた。


「今日はもう来ない。鍵を頼むぞ」会長は三年生にサークル小屋の鍵を渡し荷物を持って出た。


「先輩、どうしたんですか?」Y先輩が聞く


「君には関係ない」会長はそう言って去っていった






「・・・・・・何で何時もあんな言い方するんだろ・・・・・・」




うわ・・・今日の呑み会は荒れるぞ・・・


俺は午後の授業に向かった・・・いや逃げた








その日の夜




俺とY先輩は不動明王寺に来た。手には惣菜などの肴を持っている。いつも住職の奥さんが肴を作ってくれたが酒もタダ、料理もタダは悪い・・・ということで肴は用意しようとY先輩と決めたのだ


酒宴の会場はあの本堂の裏の小屋だ


「先輩もう来てる」小屋に近づくと会長の声が聞こえる。


「御前・・・何卒・・・」「いや坊・・・できない」そんなやり取りが大きく聞こえた


「どうしたんだろ?」


「会長と住職・・・言い争っていますね」俺達は急いだ




「「今晩は」」小屋に入る


小屋に入った瞬間に異様な光景があった。小屋の中は変わっていない・・・ただ住職に土下座をしている会長がいた


「ちっ、邪魔が」会長は体を起こす「今日は酒宴は無しだ帰れ」


「坊、勝手に決めるな・・・儂が主催じゃ」住職は手で招く。しかし、御前と会長は反論した「折角肴を持ってきてくれたんじゃ・・・そう邪険にするな」


Y先輩を横目でみる・・・関係ない、邪魔、帰れと言われた顔は穏やかだが心中は・・・


俺達は座った。住職が呑めと酒を渡す


「坊・・・お前は真面目過ぎる・・・もっと楽に考えねえか」住職に会長にも酒を渡す「坊の気持ちも解らなくはないが・・・足下すくわれるぞ」


会長は黙る


「何があったんです」Y先輩が聞く。


会長が再び君には関係がないと言いかかるが住職に頭を叩かれる


「言霊を使う者が言霊を軽んじるな・・・」住職は俺達に茶封筒を渡す。あのFさんの妹さんが持ってきたものだ。「この子等に話せ・・・言霊を軽んじた罰だ」


会長は反論しようとするが住職は睨みつけねじ伏せた




「はぁ・・・プライベートな問題だから他言無用だ。解ったか・・・」会長は煙草に火を付ける


「Fさんの家が祟られている・・・何に祟られているかはまだ不明だ。午後はFさんのお宅に行っていたんだが間違いなく祟られている」


俺とY先輩はFさんの手紙を読む。最初は大学祭での感謝の言葉。次に会長の言動について。簡単に言えばあなたを信じるという内容だ。次は家で起こっていること・・・屋根裏を何かが走る音、獣の臭い、三か月前に義父の死、主人の体調の異変、たくや君の症状の悪化・・・が書かれている


「会長・・・本当なんですか、これ」


「妹さんにも確認した。私の方針は初めは心霊を否定したカウンセリングから始めることだ。世の中の心霊現象は十中八九以上は精神的や体調の問題で説明出来る。主人の体調不良も実の父が死んだのだから当たり前だ・・・しかし今回は本物・・・まあ、たくや君に出逢った時に禍々しい気配を感じたしな」


「回りくどいな」俺は聞いた


「相手に信じてもらうためだ、仕方がない」


「家を見た感想はどうじゃ、坊」


「地が腐り始めており、庭の一部に穢れを感じましたが場所の特定はまだ・・・それに」


「先輩の話し方・・・原因は解っているんですね」Y先輩が聞くと会長は黙った


「・・・こどうじゃ・・・いや、正確に言えばこじゅつに近い事を知らず知らずにしたんじゃろうな」会長の変わりに住職が語る














「こじゅつとは・・・・・・禁じられた呪術じゃ」住職は酒を一気に飲み干した



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