EX どらごんたいじ 承

『ほぉ……先日のドラゴン使いの他にもどこかで見た顔がいるな』


 山頂にて。王城よりも大きなドラゴンの姿のままに、エンシェントドラゴンは人の言葉で大気を震わす。



「カズマカズマ。こんなに爆裂魔法を撃ったら気持ちよさそうな生き物は初めてです。あれに好きなだけ爆裂魔法を撃ってもいいんですよね?」

「ダストの話じゃ爆裂魔法くらいしかまともなダメージ入らないらしいしいいんじゃないか。最近の宴会芸の女神様は絶好調らしいから魔力切れは起きないだろ」

「これ以上魔力タンク扱いされると流石に温厚な私もキレるんですけど。あと私は宴会芸の女神じゃなくて水の女神だって何度言ったら分かるのかしら。カズマさんやっぱり転生の時に頭パーになったんじゃ……」

「わりとそれはお前のほうなんじゃないかと疑ってるんだが……。ところで、そこのお嬢様は何をハァハァ言ってるんだ? あ、やっぱいい。聞いた俺が馬鹿だった」

「見ろカズマ、あの大きな爪と牙を。あんな爪と牙に襲われれば流石の私も引き裂かれるだろう……どうしようカズマ! 興奮してきた!」

「引き裂かれたら致命傷だろうがこのド変態クルセイダーが! いいからお前は黙ってろ!」



 ……緊張感ねぇなぁ。まぁ、カズマパーティーだから仕方ねぇか。



「久しいな。あいも変わらず図体と態度のでかいトカゲよ」

『バニルか。図体はともかく態度のでかさだけは貴様に言われる筋合いはない。……仮の姿で我の前に現れるとはよほど死にたいと見える。仮の姿とはいえ残機を全て消されれば本体の方にも影響は免れぬというのに』

「フハハハハハハハ! トカゲごときにくれてやる命など残機といえど一つもないわ! そうか、トンチンカンなこと言って我輩を笑い殺す気か。危うくトカゲの術中に嵌まるところであったわ!」



 ……もう少し仲良くしてくれねぇかな。ドラゴン好き兼旦那の友人として複雑なんだけど。



『……まぁいい。それでシェイカー家のドラゴン使いよ。今日は我にどんな用で来たのだ。そなたは前回もう我に会うことはないと言っていたと思うが』

「実際会うつもりはなかったんだけどなぁ……」


 ドラゴンは好きだし生きる伝説とも言えるエンシェントドラゴンは尊敬もしてる。ただ、わりと本気でトラウマ作られてるからできれば会いたくないというのが本音だ。


「エンシェントドラゴン、頼みがある。俺に純血のドラゴンが使う、竜化のスキルを教えてほしい」


 それでも、ジハードのためだから仕方ない。


『ふん……我の申し出を受け、我と契約していればすぐに教えてやれたものを』

「俺の相棒はミネアとジハードで手一杯だからよ。こいつらそれぞれが俺には過ぎた相棒だってのに」

『たしかにその下位種はいずれドラゴンの帝王になる可能性もあるが、所詮は下位種。そなたがいなければ暴走するだけの存在であろう』



「ねぇねぇカズマさん。あのドラゴン聞き捨てならないこと言ったんですけど。ドラゴンの帝王になるのはうちのゼル帝なんですけど。というかジハードはゼル帝の子分なんですけど」

「はいはい、後でちゃんと聞いてやるから黙っときましょうねー」



「それを言ったら俺だって同じだ。……こいつらがいなけりゃ俺だってただのチンピラなんだよ。だから──」



「──エクスプロージョン!」

「ちょっ……めぐみん! なんかダストさんが無駄にいいこと言いそうな雰囲気だったのに!」

「すみません、待ちきれませんでした。というわけでカズマ。魔力が切れたのでアクアから魔力を移してもらえますか」

「はいはい。ダスト、悪いがうちの問題児たちがそろそろ限界みたいだから早めに頼む」




「…………えっと、なんかいろいろすんません」


 爆裂魔法食らってもぴんぴんしてる様子のエンシェントドラゴンに俺は謝る。というかカズマ、お前も一緒に謝れ。そいつらの保護者はお前だろうが。


『よい。口上をいくら重ねても結論は一つだ』


 エンシェントドラゴンは王城よりも大きな身体を起き上がらせ、そして告げる。



『我の知識と力を求めるものよ。欲しくば我に認められるだけの知恵と力を示すが良い。…………具体的に言うと我の生命力を3割削ればいいぞ』



 ……なんでこう、この世界ですごい力を持った奴らはお茶目というか、大事な場面で締まらないんだろうなぁ。

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