幕開き

第一幕

『ヒロ、なんの為に芝居してるの?』

_え?

『お客さんのため?違うよ、結局に芝居やってるんだよ、ヒロは』

違う、そういうつもりじゃ…僕は。


『ヒロと芝居やってても楽しくないんだよね』


____『もういい、消えてよ』



冷んやりとしたリノリウムの床。

加湿器の音、それ以外は聞こえない。

 寝ちゃってたんだ僕。

蛍光灯の白い明りが眩しい。

 夢、見てた。なんであんな。


「ヒロ、いる?」

 …咲?

「あ、いた。寝てるの?」

 咲の声、あれ学校にいたんだっけか?

「おーい、起きて」

 何してたんだっけ…。

「ヒロってば、風邪ひいちゃうよ、起きなよ」

 なんでだろう、頭が重い。声も出ない。

「起きなって、おーい」

 やっぱり咲だ。


「起きろ!!」

「ぐえ!!!」

いきなり僕の腹部に衝撃が走った、同時にくの字に体が跳ねた。


「な、なにするんだよ!」

 あれ、学校じゃない。

「あ、起きた」

「痛いじゃないか」

 …でも知ってる場所だ。

「だって半目開けて生きてるのかどうか分からなかったから」

「だからって…」

 ここは…、稽古場。

「それで、決めてくれた?」

 え…?

「え…?」

「…やってくれる?」

 そうだ、ここは中学校だ。

 咲に連れてこられて…。そうだ、思い出した。


「中学校演劇部の外部顧問、やってくれる?」

 

 ___僕は。

   「僕は。」









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