第8話死
日本の莫大都市東京。
莫大だからこそ日々悩みを抱え込む者がいる。
仕事に疲れる者、いじめに合う者、精神的に病む者、色々な者が溢れる中、東京の一角にビルがある。
入り口には誓約書、判子、引き取り手連絡先等の記入場所があり、エレベータ50階を上れば自らの命を捨てられる。
それを一部の人は自殺所と呼んでいた。
誰も止めようとはしない。
政府も違法ドラッグが蔓延するのを防ぐために黙認した。
自殺志願者は泣いて喜んだ。
これで逝ける安らかに。
この辛い人生にピリオドを打つ事が出来ると。
しかし、本当に死んでもいい人間が居てもいいのかなんて誰にもわからない。
ましてもや突っ込んで話させる権利もない。
それから川村は自殺所を放棄した。
放棄ではなく川村の死亡により自殺所の維持ができなくなった。
遺書にはこう記されていた。
【私、川村健は志願者をだまし新生命保険に加入させ、莫大な資金を得た。政府が了承してくれないのも招致で自殺の手助けをした。その罰はこの命で償いたい。申し訳ありませんでした。】
この件は国内ニュースで取り上げられ、関与したものは逮捕された。
自殺志願者の遺体は全て地下のゴミ処理場に遺棄してあった。
社長自らの自殺でピリオドを打った。
取り壊すには金がかかる。
しかし残しておくのはあまりに危険。
それはまた死んでいく人が居るかもしれない。
ただの憶測に過ぎないが。
そんな事をコメンテーターがしゃべっている。
「ねぇ。ここ落ち着いたら行って死ねるかなーもう人生疲れたよ」
「死にたい」
「疲れた」
そんな声が日本全体を覆う。
取り壊しても新たに建設するかもしれない。
或いは電車に飛び込み。
飛び降り。
こうした少しの時間にも悩みつかれた人が死んでいく。
そして新たな命が生まれてくる。
その命も自ら殺す時代。
取り壊されると思われた。
しかしそこは廃墟と化した。
新たな自殺志願者が訪れ、身を投げる。
清掃員もいない地上はどす黒く染まった人の欠片が積もっていた。
川村の死によってピリオドを打たれたと思われた自殺所は繰り返し新たな自殺所を作り出した。
それも政府は見てみぬふりをした。
マスコミも騒がずに次のニュースに移った。
止まらない死の連鎖。
もう止められない。
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