第4話 カクえもんのアウター講座…と閑話休題

「アウターとひと口にいっても色々あるから、かなりざっくりした説明になるよ。それから、敢えて説明を省いている種類のものもある。ブルゾンとか、ジャンパーとか、そういったものなんだけど。

 最低限、地の文を書くときに困らない知識……というのがこの解説のコンセプトだから、気になる人は色々と調べてみてね」


1.コート

「コートには色々な種類がある。本文中に描写する際に気を付けたいのは、『季節』と『デザイン』。ここでは女性キャラに着せることだけを念頭に、代表的なものを解説するよ。


 まず『トレンチコート』は襟とベルトの付いた、かっちりとした印象を与えるデザインで、主に春・秋に着用する。社会人や大人びた高校生、大学生なんかに着せると、それっぽくなるんじゃないかな。

 次に『ダッフルコート』は冬に着る厚手のコートで、輪になった紐にトグルを通して前を閉じるデザインのものだ。そう、あの動物の牙みたいな形のパーツはトグルという名称なんだよ。キャラに着せてみると、可愛くて、どこか子どもっぽい印象を演出できる。少し野暮ったい感じも出るかな。

 同じく冬に着る『Pコート』は厚手で、前を閉めた時に2列のボタンが配置されているデザインのものだよ。オーソドックスなデザインだから、誰にでも、どんなイメージでも着せられる。かなりプレーンなデザインだね。個人的には、ブレザーの女子高生に着せるのがしっくりくるからいいよね。

 あとは、形というより季節なんだけど、『スプリングコート』という名称を用いると、可愛くて清楚な雰囲気のキャラに+αの印象が加わるよ。これに関しては、色も柄も形もいらない。単語の持つ力だね。

 『モッズコート』という、暗めの緑(カーキ色)のコートもある。どこか無骨で、必ずフードと大きなポケットが付いているデザインだよ。現実では可愛い女の子がよく着てるけど、小説の中だったら不愛想だったりアウトローっぽかったりする女の子に着せる方がいいかも? ちょっと取り扱いの難しいアイテムだね。


 デザインがぴんとこない場合はただ『コート』と描写すればいいし、『ロング』『ショート』と丈の長さだけ指定する方法もある。冬の外出シーンなんかはこれ1枚の描写で済むことが多いから、色々活用できると思うよ」


2.ジャケット

「ジャケットは、主に春・秋に活躍するアイテムだよ。コートと同じく、これも形や素材が色々とあるんだけど……。

 小説の中で女の子に着せるだけであれば、『~色のジャケット』or『デニム(他、素材)のジャケット』だけ押さえておけば大丈夫。

 色だけを指定する場合、オーソドックスな形のものを想起させる単語になるよ。制服のブレザーも同じ形だけれど、私服を『ブレザー』と表すと、少し形の違うものに変わってしまうから注意してね。

 デニムジャケットは多くの場合、地の文で見ると少しスポーティー、快活なイメージを想起させるものになるよ。

 デニムやレザーのジャケットは、現実のファッション業界では可愛いワンピースを少し硬い印象に締める役割があるんだけど、二次元と三次元では受ける印象がかなりデフォルメされるので、その用途には使いづらいかな。

 話は学園ラブコメから逸れるけれど、軍服の上着なんかはひとまとめに『ジャケット』と呼称して問題ないと思うよ」


3.ダウンジャケット、ダウンコート

「ナイロンのツヤツヤした生地の中に、もっふもふの羽毛がたくさん入っているアウターだよ。

 女性キャラに着せるなら、冬でも足を見せる活発なキャラにジャケットを着せてみたり、社会人のお姉様にロングのダウンコートを着せて防寒ばっちりにしてみたり。

 どうしても着膨れが避けられないため、与える印象が可愛くならない……という落とし穴を抱えがちなアウターだから、描写の際には注意してね」


4.パーカー

「トップスに分類しようか悩んだけど、こちらで解説するね。

 フードの付いた、ジッパーで前開きできるスウェット生地の衣服だよ。色や丈、レースの有無でスポーティーから清楚系まですべてを網羅できる、万能アイテムだ。

 ジッパーの付いていないものもパーカーと呼ばれる。こちらはアウターよりもトップスに分類されるかな。

 また、フードが付いていないものは『スウェット』と呼ばれる。地の文で描写するときは、私服というよりも部屋着の印象が強くなるんじゃないかな」


5.カーディガン

「ボタンの付いた前開きのニットで、私服から制服、ルームウェアまでありとあらゆる場所で出番のある衣服だよ。

 薄手or厚手、レースの有無、配色でどんな場面にも活用できるから、パーカーと並んで万能選手だね。

 可愛いカーディガンを着せたい! となったら『レースのあしらわれた薄手のカーディガン』なんて描写をすればいいんじゃないかな。レースの付いた箇所を明確に記さず、『あしらう』といった単語を使うと、デザインを読み手の想像に委ねられるから便利だよ。

 これは、どの衣服にも使える技法だから、覚えておいて損はないんじゃない?

 ちなみに、女子高生がよく着用しているのは『ウール』のカーディガン。生地としては厚手の部類に入るものだね」


* * *


「閑話休題、アウターをひととおり説明したところで、服装の描写から受ける印象について少しだけ個人的な意見を記しておくね。

 それは、清楚な可愛い印象の女の子は、全体的に薄手な衣服を着せる(着膨れしない)こと。

 春ならブラウス、カーディガン、スカートの3点を基準に、細かい気温に応じてスプリングコートを足してみたり、冬であればニットとスカートの2点にショートコートを着せる……など。全体的なアイテム数を減らしつつ、きちんと季節に合わせた装いをしているのがポイントだよ。


 また、活発な女の子であれば、ショートパンツを履いて足を見せることで、ぐっとそれらしい服装になるよ。

 夏はTシャツやキャミソールなど、全体的に健康的な露出のある服装。冬はショートパンツの下に黒いタイツを履かせて、上をニット、アウターはダウンジャケットでコンパクトにまとめるか、ダッフルで少し子どもっぽく見せるか。

 そんな風に、読み手に与える印象に沿うようなアイテムを選択していきたいね。


 しかし、ここまで書いてきて思ったけれど、冬のトップスはもうどんなキャラでもニットでいいんじゃないかな……」

(▼カクえもん は 遠い目 に なった!!)


「それから、外伝的な扱いとして、ルームウェアについても解説しておくね。

 まあ、ただの部屋着なんだけれど、ここにこだわるとキャラクターの細部のディティールがぐっと締まるかも。

 今は一言で部屋着といっても、ただのスウェットやパジャマの他に、フリルやレースが付いた、パステルカラーのふんわり、もこもこしているルームウェアもあるから、キャラクターがどちらを着ているかによって『自宅にいるときのこだわり』が演出できる。

 ぐーたらした子なら伸びたスウェットやパジャマ、中学生の頃のジャージなんてものもあるだろうし、とにかくお洒落にこだわりたい子はお洒落なルームウェアを着ているだろうから、ね」

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