第14話 ミエナイモノ

男性


僕を見つめる君の瞳には、色がなくただただ遠くを見つめている。

でも、その遠くに何が見えているのか、君はずっと笑ってる。

楽しそうに・・・

君の笑顔が、僕には見えている。

でも、僕の笑顔は君に見えているのかな?

僕は、幸せそうに笑えているのかな?

君の目が見えなくなる少し前に、僕らは出会った。

僕の描く絵が好きだと、君は言ってくれた。

その笑顔に救われて、僕は絵を描き続けている。

僕の一番好きな絵。

君の一番好きな絵。

この海がキレイに見える岬の絵が、一番好きだと言ってくれた。

でも、この絵を描いた場所に連れて行く前に、君の目はすべてが見えなくなっていた。

いつか、必ず連れて行くと約束したのに。

君の見た最後の景色が、僕の絵で良かったの?

君は、うれしそうに、瞼を閉じ、最後の光を失った。

いつだって笑っている君に、たくさんの景色を見せたくて、僕らはたくさんの場所に出かけた。

この景色を、一緒にいるのに、一緒に見ることは出来ない。

僕は、君の見る景色に色をつけられているだろうか。

僕の色は、君の見ている景色に、光を示せているだろうか。

君の聞こえている音は、どんな色が塗られているんだい?

僕も、君の見ている景色を一緒に見たい。

叶うことなら。

これからも、たくさんの景色を一緒に観に行こう。

僕の景色に、君の色を塗ってほしいから。

僕のワガママを、君の色で染めてほしいから。

僕の横で、いつも笑顔の君が、僕に光を与えてくれる。

知っているかい?

いつも、どこに行っても、僕は景色よりも、君の笑顔にみとれている事を。

知っているかい?

君の笑顔が、僕にとって一番の景色になっていることを。

どこに行っても、何をしていても、君の側が、一番キレイな景色が観られるんだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る