第13話 ミエナイモノ

女の子


私は知っているの。

目に見えるモノが、すべてではないという事。

見えないモノこそ、本当の事が観えてくる。

私は、そう信じている。

だって、私にはもう、色々なモノを見るための目がないのだから。

目の前は、いつだって真っ暗。

何も見えない。

見えないという表現が、この現実に当てはまるかどうかもよくわからない。

でも、見る事が出来なくても聴くことは出来る。

色々なコトを聴いて、想像して、それで色々なモノを観ている。

昔は、ちゃんと見えていたんだけど、病気なんだって。

この目が、段々と見えなくなって、最後に見た景色はずっと忘れない。

忘れられるわけがない。

色がついた、想像じゃなくて、現実がそこに、目の前にあったんだから。

ねぇ、勘違いしてない?

私は悲しくないよ。

目がなくなっても、私には色々なコトが聴ける耳があるんだから。

今は、何も見えないけど、その代わり色々な事が聴ける。

だから、いつだって楽しい発見が待っている。

新しい発見が・・・そう思わないと、心も何も見えなくなってしまう気がする。

でも、本当に今は楽しいんだよ。

心からそう思える。

だって、いつもだったら気付かないような事にもたくさん気付くから。

声が聴くこえてくるの。

ねぇ心配しないで。

私は、この耳でたくさんの事が観えるから。

知ってる?

あなたの優しさは、こんな音がするんだよ。

私しか知らない音。

とっても優しくて、あったい音。

この音が、私を包んでくれる。

あなたが、夢に出てくるの。

その優しい音に囲まれて。

私を、抱きしめてくれるの。

私に微笑んでくれるの。

ちゃんと観えてるよ。

いつも私を楽しませてくれるあなた。

だから、次はどこに連れて行ってくれるの?

実はね、あの景色をもう一度見たい。

一緒に行ってくれる?

そして、私に、また優しく微笑んで。

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