第7話 あの日、あの時
女性
ここは、どこにでもある、普通の交差点。
そう、どこにでもあるごくごく普通の・・・
でも、私にとっては、とても大切な場所。
大切で、忘れたくても、忘れられないキライな場所。
ここで、あの人は・・・
あれから、どのくらいたったのだろう。
何度、朝陽が昇り、夕陽が沈んだのだろう。
すっかり枯れて、流す涙がなくなったから、今日この場所に、また戻ってきた。
言い訳でしかないけれど、外に出るきっかけを自分の中に求めたのかもしれない。
あなたとの思い出は散り散りなってしまったけれど、微かな記憶だけが私の中に残っている。
あの時、何をどうすればよかったのだろう。
私に出来ることは、本当になにもなかったのだろうか。
あれから、自分でもよくわからなくなるくらいの時間がたったけど、後悔だけが残り、ずっと涙が止まらなかった。
周りのみんなはいつもの生活に戻っていったけれど、私はそんなすぐに切り替える事は出来なかった。
違うとは言われるけど、やっぱりあの人があぁなってしまったのは私のせいだ。
涙が枯れたのに、またここへ来て、そして、無駄に体から水分が失われていく。
乾いた頬を、その無駄な水分が重力に負けて下へ下へと落ちていく。
冷えて乾いた風に、私の頬も乾いていたから、その生ぬるい無駄な水分の温度を感じ、通り過ぎていくのが分かった。
ここでこうして、ただただ立ち尽くしている私に何があるのだろう。
私はどうすればいいのだろう。
もうあなたは、ここにいない。
他の誰でもない、あなたはもう、ここにいない。
あれから久しぶりに外を歩いたけど、今日は特に冷える気がする。
そう感じるのも、私だけだろうか。
体温が内側から失われていき、指先まで冷え切っていく気がする。
あなたと最後に交わした言葉は、ろくでもない喧嘩だった。
なんで、もう少し優しく出来なかったのだろう。
なんで、もう少しあなたの事が理解出来なかったのだろう。
なんで・・・
また、どうしようもないくらい、体の水分が無駄に失われていく。
微かな体温と一緒に。
小さくうずくまっていると、後ろから声が聞こえた。
聞き覚えのある声。
懐かしい声。
もしかして、あのことは夢だったのだろうか。
本当は、私の勘違いだったのではないだろうか。
そう信じて、私は小さな勇気で振り向いた。
でも、そこにあたなはいなかった。
あったのは、きれいな夕陽だった。
さっきまで、明るい陽射しが街を照らしていた気がしたのに。
私は、何時間ここにいたのだろう。
きれいな夕日。
空を、久しぶりに見た気がする。
とても、とても久しぶりに。
前を、上を、見た気がする。
きっと、あなたが言っている。
前を向いて歩きなさい、と。
前に進んでい行けば、全部忘れていけるのだろうか。
いやだけど、忘れたくないけど、思い出にして、前に進もうとちょっとだけ思った。
小さな勇気で前に。
1歩ずつでも、少しずつでも。
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